今週のPickUp!展覧会 2025年2月①

愛知県

○原田裕規:ホーム・ポート  @広島市現代美術館 会期:2/9(日)まで

<概要>
・原田裕規(1989-)は、2012年に「ラッセン展」や「心霊写真展」の企画でデビューし、社会の中で広く知られる視覚文化を題材とするプロジェクトからその活動をスタートしました。また近年は、広島や山口からハワイへ渡った移民について調査し、日系アメリカ人の混成文化を題材にした映像作品《シャドーイング》を発表しています。本作品内で登場人物は次のように語ります。

うんと遠くに行こうと出航しても、
まるで舵の曲がったボートみたいに同じところに戻ってしまう
その場所こそが「私自身」だ
私は決して「私自身」から逃れることはできない

 本展タイトルと同名の作品《ホーム・ポート》は、日系人も多く移り住んだ町であり、2023年夏に大火に襲われたマウイ島ラハイナが描かれたラッセンの作品がもとになっています。広島出身であり、ラハイナへの滞在歴もある原田は、「母港」を意味するこの作品の題名を展覧会のタイトルに採用しました。したがって、本展は原田にとっての里帰り展であるともいえるでしょう。

 本展では、原田が現時点の集大成とする新展開の平面作品に加えて、これまでに制作された代表的な映像/インスタレーション/パフォーマンス作品、10代の大半を過ごした「広島時代」の初期絵画などを紹介します。多様な展開を見せる彼の制作の歩みが「舵の曲がったボート」のように母港に帰還するさまを、ぜひご覧ください。

〇絵画のゆくえ 2025  @SOMPO美術館 会期:2/11(火・祝)まで

<概要>
・2013年に創設された公募コンクールFACEは、年齢・所属を問わない新進作家の登竜門として、毎回数多くの応募者を迎えています。美術評論家などによる作品本位の厳正な審査によって、真に力があり将来国際的にも通用する可能性を秘めた作品を入選とし、その入選作品のなかから各賞を授与しています。 

 本展では、FACE2022からFACE2024までの3年間に「グランプリ」「優秀賞」を受賞 した作家たち12名の近作・新作およそ80点を展示し、受賞作家たちの受賞後の展開をご紹介します。また、当館所蔵品となった3年間の「グランプリ」受賞作品もあわせて展示します。
時代の感覚をとらえたFACE受賞作家たちの数年間にわたる作品によって、絵画のゆくえを探る展示となることでしょう。

〇しないでおく、こと。-芸術と生のアナキズム  @豊田市美術館 会期:2/16(日)まで

<概要>
・芸術=創造とはそもそも、いまだ了解されない認識や知覚の領野を拡張していく営みです。ゆえに芸術とは、「芸術」として名づけられ、一つに回収されてしまうことへの抵抗をあらかじめ含んでいます。このことは、未知未踏の領野を取り込み制度化することで国⼟や資本を拡張してきた近代以降の思考自体への抵抗になぞらえることもできるでしょう。この制度化され、統治されることへの抵抗・逃⾛の姿勢=アナキズムに芸術の本来的な力を認め、その可能性を問うことは、硬直化した社会そのものを突破する契機にもなるのではないでしょうか。

 近年、芸術を含むあらゆる場で、旧来の制度や差別への連帯闘争が試みられています。それらは切実な抵抗の態度であり、私たちを鼓舞する重大な拠り所となるものの、ゆえにこそ小さな個別の差異を均してしまう危うさと隣り合わせにあるものともいえます。このギリギリの状況において、私たちの個々の表現や⽇常的な振る舞いは、いかに⼀つに回収されることなく共存し、それでも抵抗の力を持ち続けることができるのでしょうか。そのそれぞれの試みがアナキズムの実践だといえます。 

 19世紀末、近代化と背中合わせに気運の⾼まったアナキズム運動に共感した新印象主義の画家たち。第一次世界大戦と前後して、社会の中心から逃れ、スイスのモンテ・ヴェリタに集った芸術家を含む様々な思想の持ち主たち。第二次世界大戦後、急進する資本主義体制をかいくぐり日常の革命を試みたシチュアシオニスト・インターナショナルとその重要メンバーのアスガー・ヨルン。ソ連時代から現在まで、野外や自室で非公式芸術としてのアクションを展開し続けるロシアの集団行為。さらに自宅での制作と自主展覧会の運営を実践したマルガレーテ・ラスペや共同スタジオを運営するコーポ北加賀屋の面々、アーティスト集団のオル太や、生活も制作も発表もそれらの場所も、全てを自在に往来し続ける大木裕之。

 本展では 芸術と社会にどっぷりと関わりながらも軽やかに抵抗・逃走し、あえて「しないでおく」ことの可能性も含めて生き、創造する人々の実践を紹介します。

主な出品作家
・ポール・シニャック、ジョルジュ・スーラ、カミーユ・ピサロ、ラスロー・モホイ=ナジ、アスガー・ヨルン、イリヤ・カバコフ、集団行為、マルガレーテ・ラスペ、大木裕之、コーポ北加賀屋(adanda + contact Gonzo + dot architects + remo + FabLab Kitakagaya + 102木工所 + REUNION STUDIO)、オル太

〇企画展「ゴミうんち展」  @21_21 DESIGN SIGHT 会期:2/16(日)まで

<概要>
・21_21 DESIGN SIGHTでは、2024年9月27日より企画展「ゴミうんち展」を開催します。展覧会ディレクターには、佐藤卓と竹村眞一の2名を迎えます。

 世界は循環しています。さまざまな時間軸のなかで、ひとつのかたちに留まることなく、動き続け、多様に影響し合い、複雑に巡っています。その結果、いわゆる自然界においては、ゴミもうんちもただそのまま残り続けるものはほとんどありませんでした。しかし、いま人間社会では、その両者の存在は大きな問題となっていますし、文化的にもどこか見たくないものとして扱われています。ゴミ捨て場や水洗トイレは、まるでブラックボックスのように、私たちが忘れるための装置として機能してきたかもしれません。完全に消えてしまうものなんて、ないのにもかかわらず。

 本展では、身の回りから宇宙までを見渡し、さまざまな「ゴミうんち」を扱います。そして、ゴミうんちを含む世界の循環を「pooploop」と捉えます。これまで目を背けてきた存在にもう一度向き合うと、社会問題だけではないさまざまな側面が見えてきました。すぐ燃やすのでも水に流すのでもなく、じっくり観察し、単純化せずに新しい態度で向き合うと、語りきれないほどの不思議や好奇心に出合えました。ゴミうんちという新しい概念をきっかけに、人工物のデザインも同じようにできないのかと考えた本展は、世界の循環に向き合う実験の場でもあります。決して止まることのないこの世界。欠けていたパーツがピタリとはまると、きっと新たなループが巡りはじめます。

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