今週のPickUp!展覧会 2024年10月①

大阪府

○常設展「目もあやなオバケ王国 岡本太郎のオバケ論」 @川崎市岡本太郎美術館 会期:10/6(日)まで

<概要>
・「オバケというのは、本当に、見つめることによってあらわれるのだ。だから、純粋に己をみつめれば誰でもが、一生のうちに大なり小なり、奇怪な分身の姿を見る。」(岡本太郎「《オバケ》このアンチ人間 下司・チンピラ幽霊は消え失せろ」『サンデー毎日』1965年8月29日)

 オバケの姿は日本人の自由な発想力が源であると考え、日本文化としてのオバケに関心を抱いていた岡本太郎。人間の身分に構わずいたずらをしかけ笑い飛ばすオバケ。これを日本人の誇り得るものの一つであると、岡本は述べています。

 岡本の作品には人間の内にある真の姿として、オバケのようなキャラクターがたびたび現れます。岡本の冷静かつ無邪気な目線から表現された世界では、ほとんど妖怪に近い姿をなした生き物が駆け回り、生を哄笑します。
本展ではオバケ同様に既存の体制に抗いながらも、愛嬌ある作品を生み出し続けた、岡本が作り出した鮮やかなオバケ王国をご覧ください。

○特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」 @国立国際美術館 会期:10/6(日)まで

<概要>
・本展覧会では、美術家・梅津庸一(1982-)の、2000年代半ばより始まる仕事を総覧します。

 油彩による裸の自画像、多彩な抽象ドローイング、映像、陶芸、版画などの作品をとおして、梅津はこれまで、日本の美術(制度)史への愛憎半ばする批評的態度を表明してきました。また、その活動は作品制作だけにとどまらず、私塾の開設や、展覧会の企画、非営利ギャラリーの運営、テキストの執筆へも展開しています。彼の多種多様な活動を貫いているのは、「この国で美術家として生きることはいかにして可能なのか」という問いです。本展覧会は、そんな梅津からの問いかけを起点に、「人がものをつくる」という行為の可能性について根本から再考することを目指します。

○大地に耳をすます 気配と手ざわり @東京都美術館 会期:10/9(水)まで

<概要>
・本展では自然に深く関わり制作をつづける現代作家5人をご紹介します。

 野生動物、山の人々の生業、移りゆく景色や植生、生命の輝きや自然の驚異を捉えた作品は、自然とともに生きるつくり手の瑞々しい歓喜に溢れています。同時に、ときに暴力的に牙をむき、したたかな生存戦略をめぐらせる自然の諸相を鮮烈に思い起こさせ、都市生活では希薄になりがちな、人の力の及ばない自然への畏怖と敬意が感じられます。未開の大自然ではなく自然と人の暮らしが重なる場から生まれた彼らの作品は、自然と人の関係性を問い直すものでもあります。

 古来人間は、自然の営みに目を凝らし、耳をすまし、長い年月をかけて共生する術を育んできました。自然に分け入り心動かされ、風土に接し生み出された作品は、人間中心の生活のなかでは聞こえにくくなっている大地の息づかいを伝えてくれます。かすかな気配も捉える作家の鋭敏な感覚をとおして触れる自然と人のあり様は、私たちの「生きる感覚」をも呼び覚ましてくれるでしょう。

出品作家(五十音順):榎本裕一、川村喜一、倉科光子、ふるさかはるか、ミロコマチコ

○Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる @金沢21世紀美術館 会期:10/14(月・祝)まで

<概要>
・人間と自然のより調和的でバランスのとれた関係を目指す上で、アートはその特性とするオープンで受容的な考え方や、既存の前提を疑う姿勢、そして今を生きる我々が、意識をどこに向けていくかを再考する重要なプラットホームとなり得ます。

 人間の自然界への積極的な関与もまた、現代的な意識の変化と「世界」の把握に影響を与えるものと考えています。展覧会「Lines—意識を流れに合わせる」では、自然の中に見出す手がかりを、どこまでも追求するアーティストらによってもたらされるもののほとんどが線に沿って進んでいるとするティム・インゴルドの考えを参照し、世界を相互に結びついた生態系のプロセスの網の目として理解、私たち人間の創造的実践をより広範な文脈の中に統合すること、また、生きるためにさまざまな亀裂を縫い続けて線に沿って歩くことを現在進行中の前向きな「なりゆき」のプロセスと捉えました。線の探究に積極的に参加する作家作品をご紹介します。

(参考―ティム・インゴルドとは)
・イギリスの社会人類学者。アバディーン大学教授。 1966年にケンブリッジ大学に入学。
 当初は菌類学者であった父親と同じく科学分野に進んだものの、次第に科学研究に懐疑的となり、大学のチューターの勧めで人類学を学んだ。ティム・インゴルドは、線という概念について興味深い視点を持っており、彼の著作のひとつ「Lines」によれば、線は世界にあらかじめ存在する「実体」ではなく、線がどのように世界という織物の中に織り込まれ、物、人、アイデアをつなぐ「プロセスであり活動そのもの」であるとの考えを示した。人間と動物、進化という概念、人間にとっての環境の意味など、従来の文化人類学の枠組みを大きく越える思索を続け、世界的に注目されている。

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