棚田を住民とともに再生、自然と建物が呼応する場所 香川:豊島美術館

アートな場所

こんにちは。今日から2回にわたって豊島美術館、地中美術館をご紹介したいと思います。
…本館はこのブログを始めた当初、計3回にわたって一度歴史をご紹介しました。(前編中編後編

詳しくはそちらを参照いただければと思いますが、現在美術館初級者の方も含め全国の美術館総覧(概要)をつくっているところですので、本館も再度掲載しておきたいと思います。それでは早速。

このブログで紹介するアート施設

豊島美術館

・開館:2010年
・美術館外観(以下画像は施設HP、県・観光協会HPより転載)

・場所
豊島美術館 – Google マップ

棚田を住民とともに再生、自然と建物が呼応する場所

・アーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛により、瀬戸内海を望む豊島唐櫃(からと)の小高い丘に建設。休耕田となっていた棚田を地元住民とともに再生させ、その広大な敷地の一角に、水滴のような形をした建物。広さ約40×60m、最高高さ4.3mの空間に柱が1本もないコンクリート・シェル構造で、天井にある2箇所の開口部から、周囲の風、音、光を内部に直接取り込み、自然と建物が呼応する有機的な空間です。内部空間では、一日を通して「泉」が誕生。季節の移り変わりや時間の流れとともに、無限の表情を伝えます。

館内の様子


西沢立衛とは

・1966年(昭和41年)、神奈川県生まれの建築家。1990年(平成2年)、妹島和世(せじま-かずよ)建築設計事務所勤務。1995年(平成7年)、妹島とともに建築事務所「SANAA」を設立。1997年(平成9年)、西沢立衛建築設計事務所設立。2001年(平成13年)、横浜国立大助教授。妹島との共同建築プロジェクトで,国際情報科学芸術アカデミー・マルチメディア工房で日本建築学会賞作品賞(1998年)、金沢21世紀美術館でベネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞(2004年)・毎日芸術賞(2005年)、「建築界のノーベル賞」ともいわれるプリツカー賞(2010年)を受賞。2012年(平成24年)、豊島美術館で村野藤吾賞、建築学会賞。2014年、SANAAは仏北部ランスのルーブル美術館分館の建築でフランスの建築賞、銀の定規賞を受賞。横浜国大卒。

→西沢立衛さん、お兄さんの西沢大良さんも建築家で、その建物は「宮浦ギャラリー六区」の際にご紹介しました。また、和歌山県の熊野古道なかへち美術館(田辺市立美術館分館)の際には、西沢立衛さんの処女作であることもご紹介しましたね。(まだお読みでない方は是非)

内藤礼とは

・広島市生まれの現代アーティスト。1985年(昭和60)武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。1990年(平成2)に作品『遠さの下、光の根はたいら』(1989、佐賀町bis、東京)の写真図版と自らの書き下ろしテキストを収録した書籍『世界によってみられた夢』が刊行され広い関心を集める。1991年に佐賀町エキジビットスペース(東京)で発表した初期の代表作『地上にひとつの場所を』を97年第47回ベネチア・ビエンナーレに出品し、世界的にも注目を浴びる。1995年に『みごとに晴れて訪れるを待て』を発表(国立国際美術館)し、4年近い準備期間を経て1997年に『たくさんのものが呼び出されている』を発表(フランクフルト・カルメル会修道院)。また光の気配を表現したドローイングに『ナーメンロス/リヒト』(1995)がある。1995年に財団法人日本芸術文化財団の日本現代芸術奨励賞(インスタレーションの部)、2003年に財団法人アサヒビール芸術文化財団アサヒビール芸術賞を受賞。

 デビュー以来一貫して鑑賞者がオーガンジーで囲われ、針金、木、糸、ガラス、ビーズなどを繊細に細工したオブジェがシンメトリックに設置された空間に用意された「座」に腰を下ろし、一人静かに作品を体験するコンセプトをつらぬいている。それは寡作ながら消費されることのない独自の精神的世界を出現させていると評価されて。

 内藤の作品の中核はどれもが視覚的に外界から保護され、光量が操作された空間内部に展開する。そのきわめて華奢(きゃしゃ)な造形世界は、作品の保護と静謐な環境での対峙を観客に保証する目的で、一人での鑑賞が条件づけられる。闇に守られた繊細なオブジェ群をとらえようとする鑑賞者が、光と闇が入れ替わり、弱さと強さが入れ替わる微細な変化の瞬間に過敏になることで、肉体的存在から精神的存在へとおのずと導かれることを狙った作風となっている。

…前にもお伝えしたかもしれませんが、私個人的には、これまでに足を運んだ美術館の中でも、豊島美術館が一番印象的、もっというと一番魅力的に感じた美術館です。「肉体的存在から精神的存在へとおのずと導かれる、消費されることのない世界」という感覚がまさにぴったりな場所(美術館)だと思います。離島でなかなか足を運びにくい場所にはありますが、皆さんもぜひ一度は体感して欲しいなと思っています。

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