世界各国との交流から探る日本文化、考古、南蛮美術、古地図の主体としたコレクション 兵庫:神戸市立博物館

兵庫県

こんにちは。全国の美術館紹介、現在兵庫県を巡っています。
その県庁所在地である神戸市、世界的な国際港湾都市として有名です。そんな神戸においてひときわ神戸らしい南蛮コレクションを持つ美術館をご存知でしょうか。こちらも元は池長孟という商業学校の校長という教育者を務める傍ら、南蛮美術のコレクターで知られ、(この経歴を持つ美術館は他のご紹介の中でもありましたが)「第二次世界大戦前後、コレクションの散逸を免れるため」コレクションを神戸市に全て寄贈したことがきっかけで開館した美術館です。神戸においてもっとも神戸らしい美術館、早速ご紹介です。

このブログで紹介する美術館

神戸市立博物館

・開館:1982年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県・市観光協会より転載)

→重厚な建物…こちらは旧横浜正金銀行(現 三菱UFJ銀行)神戸支店ビルを転用されています。平成10年(1998年)には登録文化財へ指定。

・場所
神戸市立博物館 – Google マップ

世界各国との交流から探る日本文化、考古、南蛮美術、古地図の主体としたコレクション

・神戸市立博物館、付近一帯はかつて外国人居留地だったミナト神戸の中心エリアに立地しています。以前からあった市立南蛮美術館と考古館を統合、新しい人文系の博物館として昭和57年(1982年)に開館。

神戸が古くからの国際港都で、諸外国との文化交流の窓口の役割りを果たしてきたことをふまえ、「国際文化交流-東西文化の接触と変容」を基本テーマとし、これにそった活動を展開。

館蔵品は、国宝・桜ヶ丘銅鐸・銅戈をはじめとする考古・歴史資料、池長孟(いけなが・はじめ)氏が収集した南蛮紅毛美術および、棚橋淳二氏収集のびいどろ史料庫コレクションなどの美術資料、南波松太郎氏・秋岡武次郎氏が収集したコレクションを主体とする古地図資料の3分野から構成。神戸の歴史と文化交流の有様を示す資料の収集・保存に努めています。

主なコレクション

・いつもと前後しますが、今回は先にコレクションをご紹介します。恐らく過去最多の掲載数、コレクション数は恐らく過去最多クラスの7万点(⁈)を超えています…以下ご覧いただければ、神戸市立博物館のコレクションがいかに多岐にわたるかわかるかと思います。(なお、画像は全て美術館HPで掲載されており転載したものです)

古代の神戸


 
(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

中世の神戸




(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

近世の神戸




(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

→やはり近世の浮世絵ってずば抜けて色彩が美しかったんですね。これが包み紙に使われていたなんて驚きです。

開国・開港期


※これは…


(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

近代の神戸


(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

神戸と近代美術



(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

古地図





(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

南蛮美術


(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

江戸時代の洋学


(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

長崎ゆかりの近世絵画

      

→長崎ゆかりの近世絵画が神戸市にあるっていうのも不思議ですね。これも南蛮文化交流の所以なのかもしれません。
(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

江戸の絵画



(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

近世・近代の漆工・陶磁器・染織



(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

びいどろ・ぎやまん・ガラス



(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/collection/search_result

→ところで、こうやって振り返ってみると「古代」「中世」「近世」「近代」「現代」ってどうやって区分しているのかよく分からないですよね(私もそうでした)。これは一例ですが、九州歴史資料館というところの資料に歴史区分について大まかな表とレポートが載っていましたので参照にしてみてください。
時代区分について_九州歴史資料館

美術館のコンセプト

・以下は美術館HPからの抜粋ですが、コレクションだけでなく、こうやって理念や基本的姿勢、使命、存在意義なども細かく掲載されています。情報量すごい…。
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<美術館のコンセプト>
・現代は、それぞれの国が孤立して存在することは許されません。一国の経済、政治は、他国のそれと無関係であることはできず、文化や思想の面でも盛んに相互交流がなされるようになりました。西欧文明に対する東洋文明とか、外国思想に対する日本思想というようなことを強調することは、もはや古く、われわれは、そのような概念を超えて、国際交流を図り、世界的視野にたって一国の文化とか思想を考察しなければなりません。

ところで、わが神戸市は、国際港都という特異な性格を持つ都市であります。古くから、中国や朝鮮との関係があり、さらに近代以降は、欧米諸国や東南アジア各国との交渉が盛んで、いまにつづいています。いわば、神戸は、日本を代表する世界各国との交流の窓口であり、玄関口です。

以上の点をふまえて、当博物館は『国際文化交流、東西文化の接触と変容』を主たるテーマとしています。東西文化の接点にあって、どのような交流が行われ、接触と変容があったかという側面から追究して、日本文化および日本人を考えなおそうとするものです。

つまり、当博物館は、日本文化や日本人の本質あるいは態様を究明するという大テーマを掲げて、日本の近未来への指針を探ろうとしています。と同時に、どうすれば住みよい神戸になるか、という理念にもとづき、神戸のもつ特異性やその形成過程の追究、諸外国事情の調査研究等を行ない、それらを、神戸市民に直接役立て、さらに国際親善にも寄与したいと考えています。

基本姿勢

・原始、古代から現代に至るまでの、われわれの祖先の生活、文化の諸相をは握し、いかに国外からの影響を受け、また、影響を与えたかを調査研究し、その成果を展示します。また、わが国と諸外国との文化交流、接触と変容の中で、神戸市が接点としていかに重要な役割りを果たしたかを市民が認識するとともに、広く全国民が理解するよう、施設を開放し、以下の通りその利用に供します。

(1) 神戸市のもつ風土性や神戸ッ子気質の形成過程を追究し、市民意識の向上と、将来の豊かな住みよい神戸の未来像を探る。
(2) 市内の外国人の在住に至る歴史的経緯(居留地、異人館等)と実態をは握し、国籍は異なるが同じ神戸市民としての相互理解を図るよう努めるとともに、神戸市と関連の深い諸外国の事情をも明らかにする。
(3) 旧市立考古館の館蔵品を含む市内出土の桜ヶ丘銅鐸群や土器、石器、金属器を中心とした考古資料を扱い、原始、古代の日本文化や日本人が大陸との交渉の中で、どのような影響を受けたか、そして、独自の文化を形成したかを明らかにする。
(4) 旧市立南蛮美術館の館蔵品を中心とした美術資料を扱い、日本の美術が諸外国からどのような影響を受け、どのように吸収、展開したかを明らかにする。
(5) 文化人類、考古、美術資料の収集、調査、研究、展示等については、神戸市ならびに周辺地域の古代から現代まで、そして国内全域はいうまでもなく、関連諸外国に及ぶ範囲を対象とする。(昭和50年 神戸市立中央図書館博物館等調査委員会 博物館部会答申)

博物館の使命と存在意義

博物館の使命

・昭和50年(1975年)の「神戸市立中央図書館博物館等調査委員会博物館部会答申」をふまえ、神戸市立博物館の存在意義と使命をあらためて明らかにする作業に平成16年度(2004年)から取り組み、平成19年(2007年)に答申された「神戸市立博物館の使命」を決定。
→30年近く前にたてられたコンセプトをあらためて振り返る作業…神戸市立博物館、歴史と背景を随分と大切にする館なのですね。

博物館の存在意義

・20世紀は、国々の経済力が覇を競い国力をはかる指標になり、その衝突が大きな戦争を引き起こした時代でした。21世紀は、地球温暖化をはじめ国を超えた問題が発生し、もはや経済力だけではその解決が困難になり、科学を含めた文化力が大きな力を発揮することがのぞまれています。
文化は、それぞれの地域の人々が長い年月にわたって営々と築き上げ、次の世代に引き継がれてきた貴重な共有財産です。博物館は、それらの地域の共有財産を掘り起こし、収集・保全を図り、研究と公開を通じて人々が楽しく学ぶ機会を提供します。また、地域の人々と協同して文化を育てるとともに、地域の活性化をもたらす役割を果たすものでなければなりません。
経済力が、文化・芸術を支える時代から、文化・芸術が経済社会のあり方を変える時代に移ろうとしています。これからの博物館はまさにこの点にその存在意義が求められています。

博物館の基本的性格

・神戸は、古くから流通の大動脈であった瀬戸内海と、都(畿内)を結ぶ結節点に位置し、東アジアとの貿易や交流の窓口ともなりました。とくに幕末の開港と、外国貿易の開始に見られるように、東西文化交流の接点としての役割をはたしてきたわが国の代表的な都市です。また、旧外国人居留地をはじめとする国際色豊かな文化を持つと同時に、その後背地には古代以来の歴史に培われた文化が存在し、両者が相まって多様な神戸文化が形成されています。
神戸市立博物館は、この神戸の歴史的特性をふまえて、「国際文化交流、東西文化の接触と変容」をその基本テーマとしています。このテーマのもと、住み良い神戸の姿を探り、多文化共生の街・神戸を未来に新しく切りひらいていくために、以下の具体的な使命を果たしていきます。

(1)神戸を中心とする考古、歴史資料と、東西文化の交流に関する南蛮美術、古地図資料などの調査・研究・収集を通じて、多様な神戸文化の特徴と文化交流の態様を明らかにする。その成果を市民・利用者と共有するとともに、これを次世代に継承し、地域の発展に役立つ「知の拠点」なる。
(2)市民・利用者が、優れた国内外の文化・芸術にふれあう機会を積極的に「提供する」博物館として、また、神戸の文化にこれまでにない魅力をつけ加えるために新たな調査・研究を「提案する」博物館、その成果を「発信する」博物館としての役割を果たす。
(3)博物館を利用するすべての人々が、知りたいこと、学びたいことに積極的に対応し、多くの利用者が、集い、楽しみ、憩うことができ、また、神戸を愛し、誇りとする拠りどころを得ることができる博物館としての役割を果たす。
(4)阪神淡路大震災の教訓を生かし、文化財を災害から守る重要性、コミュニティや市民の自発的な活動の大切さ、都市復興のなかで文化の果たす役割など、震災とその復興のなかで得た知見を全国に、世界に発信する。

→いかがだったでしょうか。神戸市立博物館、これらのコンセプトや基本姿勢、使命などは全て美術館のHPに載っており、私も今回はあえてそのまま掲載したのですが、少し「コンセプト過多」な気がしなくもありませんね。歴史と背景は非常に大切ですが、市民に伝える際はもう少しそれらが際立つように要点をまとめてほしいと市民目線では思ってしまいます。(でも一方でここまで丁寧に理念を筋立てされている美術館/博物館はこれまでなかったので、それはそれで凄いことだと思います)

博物館外部評価

・平成19年度(2007年)に決定した使命にもとづき、平成21年度(2009年)活動から自己点検評価を本格実施しているそうです。また、平成29年度(2017年)分から、評価項目の大幅な整理と再編を行い、博物館使命の4大要素を新たに制定、「神戸市立博物館事業点検評価」として実施。
博物館使命の4大要素
自己点検_神戸市立博物館
(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/about/about02

→身を挺する、ではないですがここまでしっかりと自己点検や評価をされている美術館ってなかなかないですよね。これもすごいことです。

博物館だより

・博物館だよりも学芸員の手によって定期的に刊行されているようです。
博物館だより№121
博物館だより№122
(参考)https://www.kobecitymuseum.jp/about/publish/dayori

震災の記録

・最後に、本美術館HPの特色の1つとして、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災の記録を今でも大切にアーカイブされているので掲載しておきます。あの時、神戸市立博物館では何が起きたのか。その経験と記録を遺すため、震災直後の博物館の様子を、多くの写真画像で詳細に伝えるページがあるのです。(https://www.kobecitymuseum.jp/about/950117/

いかがだったでしょうか。古地図に南蛮美術、ビードロやはたまた震災の記録まで幅広く所蔵している神戸市立博物館。ここにいけば兵庫:神戸の歴史が一目でわかると思います。皆さんもぜひ足を運んでみて下さい。(最後に神戸市立博物館の散策動画を掲載されているユーチューバーの方の動画ありましたので掲載しておきます。)

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