感染防止対策に奔走、医療用衛生品を取扱う企業が集めたスーパーリアルの世界 千葉:ホキ美術館

アートな場所

こんにちは。人間ってどうしても流されやすい生き物なのですよね。実はアート界隈でも流行り廃りがあるのは事実でして、そんな中、近ごろ国内で何となく人気が高い絵画群があるような気がします。

そう、「スーパーリアル」です。

そのコンセプトをより適切な言葉で言うとしたら、「写実から離れることで絵画に主観的な表現や実際には存在しないようなを画面を創っていった20世紀初頭以来の表現主義絵画とは真逆に、極度に写実に徹することで却ってそれらを強調した絵画群」のことです。

今回はこれらをご紹介する流れの中で一番ベタな、これって絵画だと思いますか?っていうような絵を掲載してからスタートしたいと思います。
  
<左からカルロス・マリフアン《シロ》、ハイメ・バレロ《ポートレートNo.5》、アントニオ・デ・アビラ《黄色いバラII》>
※画像は「超写実展」HPより転載(https://www.sagatv.co.jp/nx/shajitsu/

…今日はそんなスーパーリアルを専門に扱う美術館です。

このブログで紹介する美術館

ホキ美術館

・開館:2010年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県観光協会HPより転載)

・場所
ホキ美術館 – Google マップ

感染防止対策に奔走、医療用衛生品を取扱う企業が集めたスーパーリアルの世界

・美術館は昭和の森公園に隣接しており、医療用不織布を取扱うホギメディカルの創業者で故:保木将夫によって収集された写実絵画作品を展示する美術館として開館。約500点の写実絵画作品を収蔵し半年ごとに入れ替えて展示。

スーパーリアルの魅力

美術館HPには以下のようにスーパーリアルの魅力について書かれてあります。大変解りやすい。
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・写実絵画の魅力とは何でしょうか。画家が見たままに、そしてその存在を描いた作品。1年に数点しか描くことができないほど、画家が時間をかけて1枚の絵と向き合い、こつこつと緻密につくりあげた作品です。その世界を目の当たりにすると、絵は、現実以上に多くのことを語っているのを感じていただけるでしょう。日本で、写実の作品を見る機会はまだ多いとはいえません。ホキ美術館が、ゆっくりと作品を鑑賞していただける「癒しの美術館」になることができればと願っております。(ホキ美術館)
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→現実以上に現実を知ることができる絵画、スーパーリアルの魅力を一言で言い表した表現だと思います。

スーパーリアルとは

文章で専門的に書くと以下の通りとなるようですが…この絵画は百聞は一見に如かず、まず見た方がよさそうですが、一応載せておきます。

<スーパーリアルとは>
・1960年代中頃からアメリカを中心に現われた、主に写真をもとにエアブラシなどでそれを徹底して写実的に描きとる絵画動向。名称はこの動向の先駆者のひとりであるマルコム・モーリーが用いたのが始まりとされ、「ハイパーリアリズム」「フォトリアリズム」の別名で呼ばれることも。無表情なモデルや何ら特色のない都市風景といった、感情を限りなく排した描写対象の選択、そして現実の写生ではなくカメラという機械が捉えた写真をあらためて機械的になぞる手法。スーパーリアリズムは現実を虚構として醒めた目で見つめるポップアートや、没個性主義を深めたミニマリズムなど同時代の動向と理念の根本を共有している。写実から離れることで絵画に観念性を求めた20世紀初頭以来の表現主義とは真逆に、極度に写実に徹することで却って観念性を強調したコンセプチュアルな側面をもつ。(artscape用語集より)

主なコレクション

・ホキ美術館には、8つのギャラリーがあり、展示は「企画展」と「常設展」に分かれ、常時約120点を展示。「企画展」は年に2回、毎年5月中旬と11月中旬に展示替えを行い開催し、主にギャラリー1で実施。「常設展」は、そのほかのギャラリーで作家ごとに作品を展示。 なかでも地下2階のギャラリー8は「私の代表作」という展示室で、選ばれた作家がホキ美術館のために3年に1度描きおろした大作を展示しているそうです。同じギャラリーごとに展示作品を変えているのが特徴で、今回HPからとってきた画像を一部ご紹介しておきます。

ギャラリー1

・企画展が入るギャラリー1。現在は「いろいろ」という展覧会を企画しているようです。本展は、原雅幸さん、五味文彦さん、小尾修さん、藤田貴也さん、廣戸絵美さんの新作を見ることができるそうです。美術館のHPに紹介動画がありましたのでこちら掲載しておきます。


 

ギャラリー2

・森本草介さん、生島浩さん、島村信之さん、三重野慶さんなど、柔らかな光のなかで人気作家の人物画を展示。
<三重野慶>

<島村信之>

<森本草介>

<生島浩>

<五味文彦>

<石黒賢一郎>

ギャラリー3

・野田弘志さんが構想を含め5~6年の歳月をかけ完成した284.2cm×696.8cmの大作、北海道西部ニセコの山岳丘陵地域の大自然とその神秘を描いた「神仙沼―保木将夫氏に捧ぐ―」を展示。本作は画家がアトリエを構える北海道の雄大かつ厳しい自然の中でみつけた生と死をここに描ききり、発表した作品だそうです。(なお、2021年6月10日に逝去されたホキ美術館創設者:保木将夫さんは存命中に完成を望みながら叶わなかったそう)この大作は、野田弘志さんが北海道・有珠山の噴火を描いた《蒼天》と並び、ホキ美術館から動かすことのできない展示作品です。

<野田弘志>
・神仙沼―保木将夫氏に捧ぐ―

・野田弘志さんその他作品
 
←これが蒼天です
<五味文彦>

<大谷英雄>

<諏訪敬>

ギャラリー4、5

・現在、新型コロナウィルス感染拡大防止対策のため閉鎖中との事、残念。

ギャラリー6

・野田弘志の2018年の「崇高なるもの」シリーズから世界的なヴァイオリニストであるイヴリー・ギトリスを描いた大作を、両脇には風景画の名品、原雅幸の「光る海」と五味文彦の「樹影が刻まれる時」が並びます。
<野田弘志—崇高なるもの>

<五味文彦—樹影が刻まれる時>

<原雅幸—光る海>

ギャラリー7

・板谷波山(1872~1963)、富本憲吉(1886~1963)、深見陶治(1947~)など、日本の陶磁器の名品を展示。
<板谷波山>

<板谷波山>

<板谷波山>

<富本 憲吉>

ギャラリー8

・ホキ美術館で最も大切な1室と言っても過言ではないかもしれません。3年をかけて描きおろされた大作を3年間展示。野田弘志、羽田裕、青木敏郎、五味文彦、原雅幸、大畑稔浩、藤原秀一、小尾修、島村信之、石黒賢一郎、諏訪敦、山梨備広、塩谷亮、藤田貴也、三重野慶に加え、新たに選ばれた山梨備広、三重野慶を展示。回を重ねるごとに出品作は大きくなっており、今では2メートル近くの大作が中心だとか。
<野田弘志>

<三重野慶>

<原雅彦>

<藤原秀一>

<藤田貴也>

ギャラリー9

・磯江毅の作品が常設で展示。
<磯江毅>

→この各ギャラリーご紹介していて面白かったのが、日本におけるスーパーリアルの作家さんたちって殆どが本名なんですよね。画家の中には結構ペンネームを使う方もいらっしゃるので、さすが、その絵の画面に全精力を注ぎこんでいるだけあるなあと変なところに感心していました。

(付録)保木将夫とは

・ホキ美術館創始者でコレクターの保木将夫さん、どんな方だったのでしょうか。そんな森本さんが写実絵画を集めるきっかけとなったのが森本草介さんが描いた1枚の作品だったとか。どんな絵だったのか…そんな原点に立ち返る展覧会が2020年に開催されました。

…この森本さんの絵を見た保木さん、写実絵画に魅了されコレクション活動を進めていくことになるのですが、初めて出会ったときはどんな気持ちだったのでしょうね。ここで軽く保木将夫さんの経歴をご紹介しておこうと思います。

[保木将夫とは]
・1931年(昭和 6年)、東京生まれ。
・1955年(昭和30年)、文具小売業の保木明正堂を創業。
・1961年(昭和36年)、心電図用記録紙を手掛ける保木記録紙販売株式会社を設立、社長に就任。
・1970年(昭和45年)、株式会社ホギと改称。
・1987年(昭和62年)、株式会社ホギメディカルと再改称。
・1991年(平成 3年)、東証第二部上場、その後会長に就任。

・2021年(令和 3年)、逝去。

→保木さん、あんまり表へ出てこられなかったためその経歴を知っている人少ないと思いますが、本業はホギメディカルという医療用の衛生商品や器具を販売している会社です。最後にこのブログらしく、コレクターの原点となった企業をご紹介して終わりたいと思います。

(付録)株式会社ホギメディカルとは

・社是は「社業を通じて医療進歩の一翼を担い、人々の健やかな生命と幸福に尽くし、もって社会の繁栄に寄与する」との事。患者・医療従事者等の安全と医療機関等における経営の合理化・省力化に貢献できる製品、およびシステムを提供しているそうですが、一般消費者が手にするようなものではないためいまいちピンときませんね。
(参考)株式会社ホギメディカル_パンフレット

・ホギメディカルのHPに製品画像がありましたので、これを見れば(医療ドラマなど見ていれば)少し想像ができるかもしれませんね。
 

→何となくですが、そんな超清浄で超高精細な製品を扱っている会社のトップだったからこそ、ホキ美術館にあるような良い意味で雑味が少なく正確無比な絵画の魅力に取り込まれたのかもしれませんね。(そんなにお酒飲めませんが、何となく日本酒の獺祭を思い出しました)

最後にニーズがありそうなので載せておきますと、ホギメディカルさん、過去から医療用不織布(要はマスク)のトップメーカーとして君臨、病院の現場では幅広く支持されているそうです。そんなホギさんが一般向けにもマスクを販売されているようなので、ご存じない方で日々の感染防止ご心配な方はぜひお試しください。(以下の画像から購入サイトにいけます。私も買ってみます)

ホギメディカルマスク(箱タイプ) 1箱(30枚入り)×6箱分

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