九州を代表する近代洋画からミロ、ダリ、ウォーホルをはじめとする現代美術作品まで16,000点のコレクション。文化芸術を通したアジアの文化拠点をめざして 福岡市美術館

アートな場所

こんにちは。福岡県北九州市を離れて福岡市に入ってきました。福岡県、地方に位置する街にしては珍しく、政令指定都市を2つもっています。昔から工業は北九州市、商業は博多(福岡市)と言われてきましたがどんな美術館があるのでしょう。それでは早速。

このブログで紹介する美術館

福岡市美術館

・開館:1979年 ※2019年にリニューアルオープン
・美術館外観(以下画像は美術館HP、市観光協会HPより転載)

・場所
福岡市美術館 – Google マップ

九州を代表する近代洋画からミロ、ダリ、ウォーホルをはじめとする現代美術作品まで16,000点のコレクション。文化芸術を通したアジアの文化拠点をめざして

・1979年の開館以来、重要文化財を含む茶道具、仏教美術のほか、九州出身の近代洋画家、ミロ、ダリ、ウォーホルをはじめとする20世紀の作家の作品、さらには現代美術作品まで、世界的な名品を含む約16,000点の幅広いコレクションを収集・保存。

本館は、都心部に近接し水と緑に恵まれた大濠公園の中にあり、福岡城跡、鴻臚館跡を有する舞鶴公園とともに、市民の憩いの場として、歴史、文化、観光の発信拠点として、多くの市民に親しまれています。福岡市は今後「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」をめざしてまちづくりを進められているそうで、福岡市美術館も、文化芸術を通して福岡の魅力を国内外に発信する役割を担っています。

福岡市美術館のミッションステートメント

使命

・人が美術を通して交流し、未来を創造する場となる。

趣旨~美術館HPより

・福岡市は古来、交流によって発展し、アジアのゲートウェイとして成長を遂げてきました。そうした歴史を背景に、福岡市美術館は1979年に開館し、時代的にも地域的にも幅広いコレクションを、市民とともに築いてきました。このように多彩なコレクションを持つ美術館は、日本においては唯一といってよいでしょう。開館40周年にあたる2019年には、多様性を受け入れながら交流を生み出す、より開かれた美術館となるために、大規模なリニューアルを果たしました。福岡市美術館は、これまでの歩みをふまえ、美術館としての基本的な活動である、美術資料の収集・保存・調査研究・展示公開・教育普及を継続的に行うことを前提に、この使命を掲げ、次のステージへと進みます。 (←との事です。

方針

①創造性に満ちた体験と新しい視点との出会いを実現する。
②多様な人々が交流し、美術と共に快適に過ごせるようにする。
③美術館の資源を人々と共有し、未来に伝ええる。

活動内容

①紀元前の考古資料から現代美術までの幅広いコレクションを活かし、新たな視野を開く展覧会、教育プログラムを開催する。
②表現活動を支えて美術界の活性化に寄与するとともに、創作活動の成果の発表の場を提供する。
③幅広い文化活動を行うことで、人々が美術と接する新たな機会をつくる。
④すべての人々が、安全にかつ安心して過ごせる環境を整える。
⑤美術に関する資料・情報・経験を蓄積し、これらを公開・発信し、活用できるようにする。
⑥常に活動をふりかえり、未来に向けて、人々と共に成長し続ける。

学芸員等専門スタッフ

・少し驚いたのが福岡市美術館、各学芸員等専門スタッフの専門・研究分野、担当した展覧会/事業などを掲載されています。
https://www.fukuoka-art-museum.jp/staff/

→こうやって各スタッフの実績をきちんとPRしている館はこれまでなかったように見受けられます。さすがこういうところにアジアの文化拠点をめざしている意志を感じますね。有言実行…某サッカー選手のコメントではないですが、言ったからには結果が求められる…そうやって自分たち自身にも発破を掛けているのかもしれませんね。

美術館創設の沿革

・美術館創設の沿革もきれいにまとめられていました。
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1972(昭和47)年 、福岡市長 阿部源蔵が年頭の記者会見で美術館建設について意向表明。
1973(昭和48)年 、宗教法人総本山薬王密寺東光院より、仏教美術資料85点が福岡市教育委員会に寄贈される。(のち当館に移管)
1974(昭和49)年 、第1回美術資料収集審査会を開催。コレクション第1号として、ラファエル・コラン《海辺にて(収集当初は「海辺の舞踊」と表記)》購入。
1976(昭和51)年 、美術館建設地を大濠公園に決定。市民のための「プレ・ミュージアム」として福岡市アートギャラリーを中央区渡辺通、秀巧社ビルに開設。翌月には、福岡市美術館ボランティアも誕生。レオナール・フジタ《仰臥裸婦》購入。前川國男建築設計事務所に基本設計を委託。翌年2月基本設計完了。
1978(昭和53)年 、美術館建設工事着工。黒田家より旧福岡藩主黒田家ゆかりの440点(古美術237件425点、近現代美術15点)が寄贈(一部寄託、後に一部購入)。ジョアン・ミロ《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》購入。
1979(昭和54)年 、福岡市美術館開館。開館記念特別企画展として、アジア美術展第1部「近代アジアの美術―インド・中国・日本―」開催。翌秋には開館1周年記念特別展としてアジア美術展第2部「アジア現代美術展」開催。「福岡アジア美術トリエンナーレ」の原型。
1980(昭和55)年 、財団法人松永記念館の解散に伴い、野々村仁清《色絵吉野山図茶壺》(重要文化財)ほか371点、(うち古美術338件369点)が福岡市に寄贈。
1981(昭和56)年 、九州在住または九州出身の若い作家2-3名をとりあげる常設企画展「明日への造形-九州」シリーズ開始(1987年まで)。
1985(昭和60)年 、常設展示を解説する「解説ボランティア」(現・ギャラリーガイドボランティア)を導入。
1988(昭和63)年 、常設企画展「アジア現代作家シリーズ」開始(1997年まで)。アンディ・ウォーホル《エルヴィス》購入。
1990(平成2)年、「夏休みこども美術館」開始。以後、毎年夏に開催。福岡市博物館開館。国宝《金印》、《大身槍 名物「日本号」》を含む黒田資料の一部および歴史的資料を同館へ移管。
1992(平成4)年、所蔵品以外に枠を広げた古美術常設企画展を開始。観覧者数1,000万人突破。
1995(平成7)年、アジア美術館設置を見越して、アジア近現代美術に代わる福岡市美術館の目玉作品としてサルバドール・ダリ《ポルト・リガトの聖母》購入。
1996(平成8)年、九州古陶磁の代表的作品、柿右衛門様式《色絵花鳥文大蓋物》購入。
1997(平成9)年、美術館教育普及を専門とする学芸員を採用。
1999(平成11)年 、福岡アジア美術館開館。672点のアジア近現代美術コレクションを同館へ移管。
2000(平成12)年 、常設企画展「21世紀の作家―福岡」シリーズ開始。福岡市を中心とした地域の現代美術シーンの活性化に貢献する美術家を対象とした個展形式の展覧会。これまで10人の美術家を紹介。
2001(平成13)年 、江戸時代の絵師、岩佐又兵衛最初期の歌仙絵《三十六歌仙絵》購入。
2008(平成20)年 、観覧者数2,000万人突破。
2012(平成24)年 、美術作品の保存・管理を専門とする学芸員を採用。
2016(平成28)年 、大規模改修工事のため約2年半の休館に入る。
2019(平成31)年 、福岡市美術館リニューアルオープン。
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コレクションについて

・福岡市美術館の特徴は、20世紀以降の近現代美術から江戸時代以前の古美術とが共存をはかっている多様さ・多彩さとの事。作品が生まれた時間的空間的幅も、紀元前5000年頃から紀元後2000年代、日本からアジア、ヨーロッパ、アメリカなど実に広く、作品の形状も絵画、彫刻、映像から屏風、陶磁器、染織と多岐にわたっています。

収集活動は、下記の方針に則り1979年の開館に先立つ1974年から開始。以後、購入や、個人、篤志家からの寄贈により、一層の充実を見せ、総数は16,000点を超えています。

収集方針

近代の西日本出身者や関係の深い作家の絵画・彫刻・工芸作品、及び各種の関係美術資料

・地方美術館の責務としての収集分野と認識し、西日本(九州・沖縄・山口地域)の作品群を収集。これは近代日本の洋画家に、九州出身者が多かったということもその理由のひとつになっています(黒田清輝、吉田博、青木繁、坂本繁二郎など)。ラファエル・コラン《海辺にて》が、購入による収集第1号となっているのは、コランが黒田清輝らに影響を与えたから、という位置づけです。これら近代洋画に加え、福岡の戦後美術史を回顧するうえで重要なグループ「朱貌社(しゅぼうしゃ)」、前衛美術グループ「九州派」の作品も収集されています。

近現代美術の流れを展望できる内外のすぐれた作品

・収集を開始した1970年代当時は、現代美術を収集対象としている美術館は限られており、その意味で、収集において独自性を出すために方針に加えられました。サルバドール・ダリ、ジョアン・ミロ、マルク・シャガール、アンディ・ウォーホル、そしてレオナール・フジタなどモダン・クラシックな画家たちの作品に加え、「具体美術協会」所属作家や、辰野登恵子、大竹伸朗、やなぎみわなどの国内現代作家、アニッシュ・カプーア、アンゼルム・キーファーなど海外現代作家の作品なども含みます。また、日本初の回顧展を開催した縁で、多くの作品が寄贈された幻想画家の作品群も特徴の1つです。

藤野一友

※情報サイト「美術展ナビ」より転載(https://artexhibition.jp/topics/news/20221011-AEJ1036098/

西日本に関係の深い近世以前の作品

・旧福岡藩主黒田家の什宝(黒田資料)、松永安左エ門旧蔵の茶道具(松永コレクション)、東光院仏教美術資料などが開館前後に寄贈または寄託、古美術コレクションの代表格となっています。黒田資料、松永コレクション、東光院仏教美術資料には重要文化財が多数。1990年に福岡市博物館が開館したとき、黒田資料の内、国宝《金印》をはじめとする歴史的価値の高い資料が大量移管されましたが、それ以降は九州陶磁、仙厓作品、琉球美術を主な対象として収集。

寄贈された一括コレクションに深い関わりのある作品

・1990年の福岡市博物館開館以降に追加された方針です。同館への大量の資料移管によって減少した古美術コレクションを補い充実させるため、「大名美術」(絵画、漆工芸など、黒田資料との関わり)、「茶道具」と「琳派」(松永コレクションとの関わり)を対象として収集を強化。その後、収集方針5(下記)によって寄贈を受けたさまざまな一括寄贈コレクションに関連して、広くアジアの美術工芸品も収集の対象となりました。

アジア美術(東洋美術)の独自性を示す、古代から近世以前までのすぐれた作品

・1999年の福岡アジア美術館開館以降に追加された方針。同館ではアジアの近現代美術を収集しているのに対し、本館では古美術分野においてアジア関連の作品を収集。クスマ・コレクション(インドネシアの染織)、本多コレクション(インドシナの陶磁)、川村コレクション(インドシナの塼仏[せんぶつ])、リー・コレクション(プラナカン女性の衣装)といった東南アジア美術のほか、森田コレクションや門田コレクション(中国陶磁)、栗田コレクション(インダス土器)など、諸家からの一括寄贈によって古美術部門における新たな柱が形成されています。

主なコレクション

<インカ・ショニバレCBE>

<サルバドール・ダリ>

<野々村仁清>

<アンディ・ウォーホル>

<薬師如来像>

<草間彌生>

<唐物茶入 銘 「博多文琳」>

<ジャン=ミシェル・バスキア>

<三岸好太郎>

<レオナール・フジタ(藤田嗣治)>

<ジョアン・ミロ>

<菊畑茂久馬>

<吉田博>

<マルク・シャガール>

<仙厓義梵>

<尾形乾山>

<クリシュナ物語図更紗壁掛(インド)>

〇福岡市美術館所蔵品検索:https://www.fukuoka-art-museum.jp/archives/

教育普及活動について

・いかがだったでしょうか。盛りだくさんの福岡市美術館、最後に教育普及の内容について触れて終わりたいと思います。

活動方針~アートといきる

①人々の心に美術の種をまき、それを育み、個々の無限の可能性を生み出します。
②社会教育・生涯学習施設として、誰にとっても安全であり、誰もが美術に触れることができる場であることを目指します。
③美術館だけでなくさまざまな機関との連携、利用者との共働を通して、新しいこと未知なることへの挑戦を続けます。

【具体的な活動】
〇来館者対象プログラム
・所蔵作品を活用したプログラムを中心に、いつでも誰でも美術を楽しめるような教育活動を継続的に行います。

〇アウトリーチ
・美術館に来ることができない人や、来たことのない人へ積極的にアプローチし、美術館の外で地域との連携を図りながら、人々が美術と接する機会や場を提供します。

〇アクセシビリティの向上
・多様な背景を持った人が集う場である美術館で、物理的のみならず心理的にもすべての人が安心して学び、過ごせるような空間づくりを目指します。

〇人材育成
・美術館の活動に、アーティスト、ボランティア、学生、教員などが関わることで相互の学びを促進し、能動的に地域の文化を担う人材を育成します。

〇調査・研究、プログラム開発
・美術館の中だけにとどまらず、さまざまな専門性を持った人々とともに調査・研究を継続的に行います。また、彼らと連携し今後の教育活動の充実を図るとともに、その発展を目指します。

→いかがだったでしょうか。最後は美術館からの引用そのままでしたが、前向きな語句が多く使われていたように感じます。そんな九州、アジアのリーダーとしての気概をもった美術館、ぜひ皆さんも体感しに行ってみてください。

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