三菱財閥:岩﨑彌之助・小彌太父子二代によるコレクション、籩豆静嘉(へんとうせいか)の想いを引き継ぐ 東京:静嘉堂文庫美術館

東京都

こんにちは。今日から2日にわたって三菱財閥に縁の深い美術館のご紹介です。三菱財閥は、俗に三井、住友とともに三大財閥ですが、三井、住友が三百年以上の史を持つ旧家なのに対して、三菱は明治期に政商として、巨万の利益を得てその礎を築いたという違いがあるようです。三菱財閥は元々、土佐藩出身の岩崎弥太郎が創立した三菱商会を基盤に明治政府の保護も得て海運業を独占。1893年に三菱合資会社を設立、第二次世界大戦後に連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ/SCAP) により財閥解体されるまで、造船業・鉱業・鉄道・貿易などあらゆる分野に進出しました。

今日ご紹介する美術館は、そんな初代:岩崎弥太郎の弟で2代目総帥:岩﨑彌之助とその子:小彌太の父子2代のコレクションです。どんな美術館なのか、早速見ていきましょう。

このブログで紹介する美術館

静嘉堂文庫美術館

・開館:1992年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、都、観光協会HPより転載)※丸の内

<参考:静嘉堂文庫(東京都世田谷区岡本)>※東京都世田谷区岡本にある専門図書館。日本および東洋の古典籍及び古美術品を収蔵

・場所:静嘉堂文庫&静嘉堂文庫美術館 – Google マップ

三菱財閥:岩﨑彌之助・小彌太父子二代によるコレクション、籩豆静嘉(へんとうせいか)の想いを引き継ぐ

・2022年、東京丸の内の明治生命館1階に開設した静嘉堂のコレクションを展示する美術館。
※岩﨑彌之助(1851~1908 彌太郎の弟、三菱第二代社長)と岩﨑小彌太(1879~1945 三菱第四代社長)の父子二代によって創設・拡充され、国宝7件、重要文化財84件を含む、およそ20万冊の古典籍(漢籍12万冊・和書8万冊)と6,500件の東洋古美術品を収蔵。「静嘉堂」の名称は中国の古典『詩経』の大雅、既酔編の「籩豆静嘉へんとうせいか」の句から採った彌之助の堂号で、祖先の霊前への供物が美しく整うという意味。

 一方、東京都世田谷区岡本にある専門図書館で、日本および東洋の古典籍及び古美術品を収蔵する静嘉堂文庫は、1892年(明治25)東京駿河台の岩﨑彌之助邸内に創設。その後、彌之助の恩師で歴史学者の重野安繹やすつぐ(成斎1827-1910)を文庫長に迎え、図書館としての活動が始まります。次いで小彌太が高輪邸に文庫を移設し、諸橋轍次(1883~1982)文庫長の下、活動が継続されました。1924年(大正13)、小彌太は父の17回忌に玉川霊廟(ジョサイア・コンドル設計)の側に現在の文庫(桜井小太郎設計)を建設し、1940年(昭和15)、財団法人静嘉堂を設立。図書その他の財産を寄付して文庫の永続を図りました。小彌太没後の1946年(昭和21)、その遺言によって国宝・重要文化財を中心とする美術品が孝子夫人から財団に寄贈されます。

 美術品の一般公開は、1977年(昭和52)より静嘉堂文庫に併設された展示館がはじまり。その後、1992年(平成4)、静嘉堂創設100周年を記念し静嘉堂文庫美術館を新設、創設130周年の2022年(令和4)には、岩﨑彌之助が美術館建設を願っていた東京丸の内の、重要文化財・明治生命館1階にて展示活動を開始しました。

コレクションについて

・静嘉堂のコレクションには、岩﨑彌之助、小彌太父子の姿勢を示す以下の三つの特徴があるそうです。

① 明治時代、西欧文化偏重の風潮のなかで、東洋固有の貴重な文化財の散逸を防ごうと可能な限り「一括で購入」したこと。
② 専門家の意見を仰ぎ、文化的価値の高い美術品・古典籍を集め、日本・東洋美術史を網羅するかのような正統的なコレクションになったこと。
③ 同時代の芸術家と交流し、彼らへの支援を惜しまず、古いものだけではなく当時の「現代美術」をもコレクションに加えたこと。

 これら文化的な貢献「フィランソロフィー」の精神は、今私たちが生きる時代においてもまさに求められている姿勢であると静嘉堂文庫文庫長・静嘉堂文庫美術館館長の河野元昭さんはコメントされています。

 岩﨑小彌太は、父・彌之助の三回忌に際し、東京都世田谷区岡本の地にジョサイア・コンドル設計の霊廟を建立、「籩豆静嘉(へんとうせいか)」の名に恥じぬべく、父から受け継いだコレクションを拡充し整えました。更に十七回忌に当たっては、桜井小太郎設計で建設した洋館と書庫を建設、今の静嘉堂文庫につながります。

 彌之助は静嘉堂を創設した当時から着手していた丸の内の開発の中で、近代的なビジネス街にミュージアムを作りたいという思いを抱き、コンドルに図面をひかせていました。「一丁倫敦」と呼ばれた街並みの代表的建築であるコンドル設計の三菱一号館は現在、三菱一号館美術館として復元されていますが、次に同じくコンドル設計で建てられた三菱二号館の跡に建てられたのが、静嘉堂文庫美術館として丸の内にオープンする明治生命館(設計:岡田信一郎)です。

(参考)
館長blog:http://jozetsukancho.blogspot.com/
静嘉堂文庫美術館 公式Twiitter:https://twitter.com/seikadomuseum

主なコレクション

国宝

<曜変天目(稲葉天目)> 

<伝馬遠筆 風雨山水図>

<俵屋宗達 源氏物語関屋澪標図屏風>

<因陀羅筆  楚石梵琦題詩 禅機図断簡 智常禅師図>

<趙孟頫筆 与中峰明本尺牘>

<倭漢朗詠抄 太田切>

<手掻包永太刀>

絵画・書跡

※以下は全て重要文化財
<牧谿筆 羅漢図>

<平治物語絵巻 信西巻>

<酒井抱一筆 絵手鑑>

<虚堂智愚墨跡 景酉至節偈>

陶磁

<唐物茄子茶入 付藻茄子>

<青磁牡丹唐草文深鉢(青磁浮牡丹太鼓胴水指)>

<野々村仁清作 色絵吉野山図茶壺>

<紫泥茶銚 「萬豊順記」銘>

漆芸

<尾形光琳作 住之江蒔絵硯箱>

<原羊遊斎作 雪華蒔絵印籠 雪華文鏡蓋根付>

彫刻

<木造十二神将立像 亥神>

刀剣・刀装具

<古備前高綱太刀>

<石黒是美作 花鳥図大小鐔・三所物>

文房具

<田黄龍鳳凰文薄意印材 [寿山石]>

近代美術

<橋本雅邦筆 龍虎図屏風>

<黒田清輝 裸体夫人像>

<河井寛次郎 紫紅瓜壺>

錦絵

<歌川国貞筆 今風化粧鏡(牡丹刷毛)>

<天日坊法策 市川小団次 米升>

<歌川国貞筆 卯の花月>

<歌川国貞筆 神無月はつ雪のそうか>

<歌川国貞・歌川広重筆 双筆五十三次>

<歌川広重筆 阿波鳴門之風景>

…いかがでしょうか、静嘉堂文庫美術館。さすが三菱、古今東西の名品、特に国宝・重要文化財級のコレクションを多く所有・展示していることでも貴重だと感じます。明治4年(1871年)に岩﨑弥太郎が経営を開始した九十九商会(三菱商会)、今では主要な企業だけでも以下の規模になっています。

(参考:三菱グループ)
三菱化工機
三菱ガス化学
三菱ケミカルグループ
三菱地所
三菱自動車工業
三菱重工業
三菱商事
三菱製鋼
三菱製紙
三菱倉庫
三菱総合研究所
三菱電機
三菱UFJ銀行
三菱ふそうトラック・バス
三菱マテリアル
三菱UFJ証券ホールディングス
三菱UFJ信託銀行
AGC
キリンホールディングス
ENEOSホールディングス
東京海上日動火災保険
ニコン 
日本郵船
ピーエス三菱
明治安田生命保険
三菱ケミカル
三菱オートリース
三菱鉱石輸送
三菱食品
三菱プレシジョン
三菱UFJニコス
三菱HCキャピタル
アストモスエネルギー
大日本塗料
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ
ローソン 

そんな三菱の歴史を振り返りながら、ぜひ三菱2代目、4代目総帥の集めたコレクション群を間近で見ることのできる静嘉堂文庫美術館に足を運んでみて下さい。

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