箱根の国立公園にとけこむように、ひとつの作品からひとりひとりの感性へ 神奈川:ポーラ美術館

神奈川県

こんにちは。箱根町、本ブログではご紹介最後の美術館です。多かったですね、箱根。箱根だけでもこれで6館目でしょうか。全国の温泉地の中でも、アートを中心観光できるのも箱根の魅力の1つになっていますね。最後は、これまで資生堂やメナードなど化粧品関連企業の私設美術館をご紹介してきましたが、今日も同様、某有名化粧品会社が運営する美術館です。それでは早速。

このブログで紹介する美術館

ポーラ美術館

・開館:2002年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県・市観光協会HPより転載)
 
・場所
ポーラ美術館 – Google マップ

箱根の国立公園にとけこむように、ひとつの作品からひとりひとりの感性へ

・2002年、神奈川県箱根町に誕生た美術館。開館以来、「箱根の自然と美術の共生」というコンセプトを掲げつづけています。箱根の自然と景観に配慮した建物は、高さを地上8mに抑え、建物の多くを地下に置き、森にとけこむように設計されました。展示室は、ひとつひとつの作品が美しく鑑賞できるように独自開発の照明を採用。約10,000点のコレクションは、ポーラ創業家2代目の故・鈴木常司が40数年にかけて収集したもの。西洋絵画、日本の洋画、日本画、版画、東洋陶磁、ガラス工芸、古今東西の化粧道具など、多岐にわたり、優れた作品、豊かな自然、そして光に満ちた建築空間の中「共生」という理念で美術館運営がされています。以下はホームページに掲載されているポーラ美術振興財団のメッセージです。
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アートの森で、響きあう。

都市の美術館にないものを。

私たちの美術館は、
箱根の国立公園にとけこむように立っています。
手つかずの自然と、人が手がけた造形。
ふたつがひとつになり、凛とした時間が流れる。
森も、もうひとつの展示室です。

つきつける、よりも、つつみこむ。
それが、私たちのコレクションの本質です。
モネ、ピカソ、フジタ・・・そして現代の作家たち。
化粧道具や工芸品、
その数は10,000点におよびます。

ひとつの作品から、ひとりひとりの感性へ。
アートが持つ力をありのままに届ける。
響きあうためのキュレーションとともに。
見る。その先に、発見をつくる。

訪れるたび、あたらしい。
変化を愛する美術館へ。

POLA MUSEUM OF ART
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ポーラ美術館のビジョン

・今、経済、社会、生活などあらゆる面でこれまでにない変化を体験し、未来を見通すことが難しい時代です。ポーラ美術館は、Vision2032という、これからの美術館はどうあるべきなのかを以下の通り模索し公表されています。

心をゆさぶる美術館

心で深く感じ取り、気づきを得ながら、より充実した人生を歩むきっかけになる場となる。
<Mission Statement>
いま、世界はかつてない転換期を迎えています。
美と出あう喜びや感動は、未知なる場所へ一歩踏み出す勇気と力になるはずです。
美術、自然、建築と人々が響き合い、新たなストーリーが紡ぎ出される。
そんな心ゆさぶられる瞬間をお届けします。

新たな価値、多様な価値の創出
「近代・印象派」から「近代・印象派 + 現代アート」への展開

1.新たな可能性や未来に繋がるコレクションの拡充
2.既成の価値を超え、観る人々を触発する展覧会の開催
3.個人の感性を豊かにするラーニング活動の充実
4.作品の魅力と価値を高める調査・研究の推進
5.アーカイブの充実と公開による文化的資産の社会還元

コミュニケーション強化
高感度で多面的な情報発信の充実

1.国内外に向けた高密度な情報発信とファンづくり
2.オンラインを活用したコミュニケーションの充実
3.地域との協業による共栄
4.未就学児および小~大学生向けの教育プログラムの推進
5.来館者データの基盤構築による施策精度向上
6.ファンとのコミュニケーション向上を目指した会員制度の充実

インフラ・体制強化
活動1.2を実現させるための基盤強化

1.組織運営の強化・目標管理と PDCA サイクルの徹底
2.レストラン、カフェ、ミュージアムショップの魅力向上
3.ホスピタリティ向上
4.設備改善及び自然環境の維持・向上

→なんか公立美術館みたいですね。かなりシステマティックにビジョンを展開されているようです。

ポーラ美術館 歴史

・1929年の創業以来、人の美・人の粧いを見つめ続けているポーラ社が、美と文化を次世代に繋ぐ文化活動のひとつとして2002年に創立。美術コレクションは、ポーラ創業家2代目 故・鈴木常司が40数年にわたり収集したものが中心。さらに、若手作家の支援、調査研究の推進、美術を通じた国際交流を行なっています。

(参考)年表

1929:ポーラ創業
1976:ポーラ文化研究所 設立
1979:ポーラ伝統文化振興財団 設立
1996:ポーラ美術振興財団 設立
2000.04:箱根仙石原にポーラ美術館着工
2002.05:ポーラ美術館 竣工、博物館法の定める博物館として登録
2002.09:ポーラ美術館 開館
2012:開館10周年、箱根の自然とより親しめるよう「森の遊歩道」を開設
2014:体験型プロジェクト「JIKKURI/じっくり」開始
2017:開館15周年、現代美術作家の活動を紹介する「アトリウム ギャラリー」を新設、若手の現代作家を紹介する「HIRAKU PROJECT」開始
2018:ビジネスのためのアートワークショップ 開始
2019:コレクションと現代美術を組み合わせた、「シンコペーション」展 開催
2021:当館初の現代作家の個展、「ロニ・ホーン」展 開催

ポーラ創業家2代目 鈴木常司とは

・1930年、化粧品の研究・製造・販売を扱うポーラを創業した鈴木忍の長男として静岡に生まれ、大学卒業後に経営学を学ぶため渡米するものの、父の急逝により7カ月で帰国。その後約40年間にわたってポーラの社長を務めた。

鈴木氏は「美の健康の事業を通して、豊かで平和な社会の反映と文化の向上に寄与する」という企業理念を掲げ、1996年、財団法人(現在は公益財団法人)ポーラ美術振興財団を設立、理事長に就任。自身のコレクションを展示・公開する美術館の建設を進めていましたが、開館を待たずして2000年に亡くなります。

鈴木氏が収集を始めた初期は、日本の近代洋画やフランスの現代絵画を購入していましたが、1980年代後半に静岡でコレクションを一部公開する機会を得て美術館建設の構想を持ち始めた頃から、その後印象派や20世紀の西洋絵画、大型の絵画の収集も開始。特定のアドバイザーを持たなかった鈴木は、美術の専門書によって独学で美術史を学び、その知識を収集に活かすことで19~20世紀の西洋・日本美術の歴史を追うことのできる体系的な西洋絵画コレクションを作り上げました。

→独学で美術史を学んで、日本では珍しい有数の西洋絵画コレクションを作り上げたのはすごい熱量です。もしかしたら親の手前経営学で大学を入学しましたが、興味関心はもっと違うところにあったのかもしれませんね。

主なコレクション※画像はURL参照

・美術館ホームページでは、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ピカソ、藤田嗣治、杉山寧がご紹介されていましたが、その他にも日本の絵画・彫刻においても西洋美術とつながりのある高橋由一、小山正太郎、浅井忠、岡田三郎助、黒田清輝、藤島武、岸田劉生、村山槐多、梅原龍三郎、安井曾太郎など数々のコレクションを有しています。また日本画では、横山大観、小林古径、安田靫彦、前田青邨、髙山辰雄、山本丘人らを展示。工芸では、エミール・ガレ、ルネ・ラリックに加え、ドーム兄弟やルイス・C・ティファニー、そしてヴィクトール・アマルリック・ワルター等。これらに加え、東洋陶磁や化粧道具も展示されています。
https://www.polamuseum.or.jp/collection/category/

ルノワール 《レースの帽子の少女》

岡田三郎助 《あやめの衣》

エミール・ガレ 《ケシ文花器》

(付録)株式会社ポーラとは

・最後に本美術館の運営母体である株式会社ポーラについて軽く触れておきます。
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・株式会社ポーラ(英: POLA Inc.)は、東京都品川区西五反田のポーラ五反田ビルに本社を置き、化粧品の製造販売を行う企業。グループ全体の売上高は国内化粧品メーカー第4位。

1929年(昭和4年)に静岡市で創業する。1940年にポーラ化成工業株式会社(ポーラかせいこうぎょう、POLA Chemical Industries, Inc.)として法人化。戦後の1946年にポーラ化成工業から化粧品販売事業を分離し、株式会社ポーラ化粧品本舗が設立。化粧品の訪問販売事業で飛躍的な躍進を遂げるとともに、女性の肌を追究したオーダーメード化粧品シリーズ「ポーラ・アペックス(発売当初はAPEX-i)」でも知られる。

2006年9月に純粋持株会社である、株式会社ポーラ・オルビスホールディングスを設立。翌2007年1月より、同社グループは持株会社制に移行した。その後同年7月、株式会社ポーラ化粧品本舗は、株式会社ポーラに社名を変更。

近年は訪問販売だけでなく、百貨店の化粧品売り場やファッションビルに「ポーラコーナー」を設けたり、エステティックサロンを併設した小型店舗「POLA THE BEAUTY(ポーラ・ザ・ビューティ)」を展開するなど、店頭販売にも力を入れている。

〇株式会社ポーラHP:https://www.pola.co.jp/company/

いかがでしょう。「箱根の自然と美術の共生」というコンセプ通り、人の美・人の粧いをを追求し続けてきた企業の想いがここにいけば伝わる気がします。皆さんもぜひ、箱根に行かれた際はこのポーラ美術館もぜひ足を運んでみて下さい。

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