ひとりひとり、それぞれ、さきざき、おたがいーアートを開き共に創る 石川:金沢21世紀美術館

アートな場所

こんにちは。今日は、もはやこれを読んでくれているアートファンの方は知らない人はいないであろう金沢の兼六園と並ぶ筆頭、観光名所にもなっている美術館です。

学芸員や館長が目立つというのは良い面も悪い面もあるかとは思いますが(マウスはあくまで中立スタンス)、本館はもしかすると自館収蔵のアーティストやそしてそれを取り巻くアート界を館長(長谷川祐子さん)が先頭に立ち日本で一番引っ張っていっている存在かもしれませんね。

本文に入る前にたぶんアート界隈では知らない人はいないであろう館長の長谷川祐子さんの略歴を振り返ってみました。

<長谷川祐子:金沢21世紀美術館 館長>
兼:東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科 教授、キュレーター/美術批評家。
京都大学法学部卒業。東京藝術大学美術研究科修士課程修了。水戸芸術館学芸員、ホイットニー美術館客員キュレーター、世田谷美術館学芸員、金沢21世紀美術館学芸課長及び芸術監督、東京都現代美術館学芸課長及び参事を経て、2021年4月から現職。犬島「家プロジェクト」アーティスティック・ディレクター。文化庁長官表彰(2020年)、フランス芸術文化勲章(2015年)、ブラジル文化勲章(2017年)を受賞。これまでイスタンブール(2001年)、上海 (2002 年)、サンパウロ (2010 年)、シャルジャ(2013年)、モスクワ(2017年)、タイ(2021年)などでのビエンナーレや、フランスで日本文化を紹介する「ジャパノラマ:日本の現代アートの新しいヴィジョン」、「ジャポニスム 2018:深みへ―日本の美意識を求めて―」展を含む数々の国際展を企画。国内では東京都現代美術館にて、ダムタイプ、オラファー・エリアソン、ライゾマティクスなどの個展を手がけた他、坂本龍一、野村萬斎、佐藤卓らと「東京アートミーティング」シリーズを共同企画した。主な著書に、『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』、『「なぜ?」から始める現代アート』、『破壊しに、と彼女たちは言う:柔らかに境界を横断する女性アーティストたち』など。

→毎回、長谷川さんのご経歴見るたびにアウトプット(しかも明確なキャリア)が増えていっているような気がするのですが、ここまでバリキャリな女性キュレーター(今や館長&教授)はいないのではないでしょうか。まだお若いですしもうこのまま突き抜けるところまで突き抜けてほしいですね・・・と書こうと思って調べら60歳を超えられたんですね(!?)

そんなイメージなかったので、、信じられません。
60歳を超えた方が(何度も言うと怒られそうw)がこんなにもハイセンスなバリバリの現代アートの企画展をキュレーションできるなんて人間年齢は関係ないってことですね、ほんまそう思います。(いや、逆で現代アートに携わっていると人って歳とらないのか…。)
あり得ないの画(たぶん最近撮影)※美術館HPより転載

では前置き長くなりましたが、早速ご紹介しましょう。

このブログで紹介する美術館

金沢21世紀美術館

・開館:2004年 ※もうすぐ開館20周年というのにも驚きです
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県・市観光協会HPより転載)

※建築…妹島和世+西沢立衛 / SANAAさんの出世作です。

・場所
金沢21世紀美術館 – Google マップ
→兼六園の隣。隣接する石川県立美術館と金沢市立中村記念美術館と併せてアートファンはこの4点セットが金沢観光の軸ですね。

ひとりひとり、いろいろ、さきざき、おたがいーアートを開き共に創る

・館長の長谷川祐子さんの言葉をお借りし、金沢21世紀美術館がどんな美術館になっていきたいかをポイントを挙げてご紹介したいと思います。※注:()内はマウスが勝手にオノマトペ付けただけです。

Democracy:アートの民主化(ひとりひとり)

現代アートを「民主化する」こと。現代アートを皆さんの手の届くものにして、そこから感じたことを話し合ったり、自分の内側で熟考し何らかの行動につなげたり、また新しい知を生み出したり。時代への感性を研ぎ澄ましてもらうことを目的とする美術館。

Polyphony / Diversity:多声唱和 /多様性(それぞれ)

・金沢市民はもちろん、国内や海外からの来訪者を含め、多様な人々に開かれた美術館であること。集う多様な人々を受け入れ、一人ひとりの個性や背景となる文化が尊重されながら一つのハーモニーとなっていく。ポリフォニー(多声唱和)の声が聞こえる美術館。

Development:未来への志向(さきざき)

・現代アートは未来に向けて新しい視点を示したり、方法を試みたり、未知のものを生み出したりしていく表現活動。絶えず未来の可能性に対して開かれ、常にチャレンジする美術館。

Interaction/ Inter-dependence:相互作用と相互共生(おたがい)

・深い文化の歴史があり、市民が芸術に対して高い関心とリテラシーを持つ金沢のまちへ向けて開かれ、相互作用(インターラクション)が起きている美術館。
→円形で全方位に公平に開かれた透明性の高いSANAAさんの建築は「まち(都市)は美術館であり、美術館はまち(都市)である」という言葉は、互いに寄り添い、ともに成長していく一つの有機体のような生きた形を指しているとも述べられています。

美術館のコンセプト

・「新しい文化の創造」と「新たなまちの賑わいの創出」を目的に開設されたそうです。HPでは4つのコンセプトが書かれてあります。

世界の「現在(いま)」とともに生きる

・世界の同時代の美術表現に市民とともに立ち会う。私たちのこの時代は、時間や空間を超え、従来のジャンルを横断する、様々な表現が現れてきています。これらの芸術活動にじかに触れ、体感することで、地域から、未来の創造への橋渡しをします。

まちに活き、市民とつくる、参画交流する

・教育、創造、エンターテインメント、コミュニケーションの場など、新たな「まちの広場」としての役割が期待されています。市民や産業界など様々な組織と連携を図り、全く新しい美術館活動を展開します。

地域の伝統を未来につなげ、世界に開く

・藩政期から伝わる、工芸をはじめとする地域の固有文化が、多様化する21世紀にどのような可能性を持つのか、インターカルチュアルな視点に立って問いかける実験の場となります。

子どもたちとともに、成長する

・未来の文化を創り出す子どもたちに開かれた教室として、見て、触れて、体験できる最適の環境を提供します。子どもの成長とともに美術館も進化し、時代を超えて成長します。

→長谷川さんの上で述べられた大きな美術館の姿(目的)に対して、このコンセプトがそれを達成する手段(目標)ということでしょうか。いずれにしろ双方ともが相互に関連し合って金沢21世紀美術館な成り立っていくのでしょうね。

美術館建築のコンセプト

・ちなみに本館は美術館建築も「妹島和世+西沢立衛 / SANAA」さんの代表作ということでコンセプトが存在します。少しご紹介。


※画像は美術館HP及びAGC Glass Plaza(https://www.asahiglassplaza.net/gp-pro/column/designfiles/case1/gaiyo.htm)から転載

まちに開かれた公園のような美術館

・金沢市の中心部に位置し、誰もがいつでも立ち寄ることができ、様々な出会いや体験が可能となる公園のような美術館。このため建物には表と裏のないガラスのアートサークルが採用され、トップライトや光庭など明るさや開放感にも十分に配慮。夜間開館や魅力的なショップ、レストランなど利用者ニーズに対応し、気軽さ、楽しさ、使いやすさがキーワード。

多方向性=開かれた円形デザイン

・三方が道路に囲まれている美術館敷地内にどこからでも人々が訪れることができるよう、正面や裏側といった区別のない円形が採用されました。建物が街と一体になるためのデザイン

水平性=街のような広がりを生み出す、各施設の並置

・展示室やカフェレストラン、アートライブラリーなど、それぞれに個性豊かな各施設はほぼ水平方向に配置。街のような広がりを生み出すようなデザイン。

透明性=出会いと開放感の演出

・外壁や建物内の壁面の多くにガラスを採用し、「透明であること、明るいこと、開放的であること」を重視。同時に、内部と外部など互いに異なる空間にいる者同士が互いの様子や気配を感じ取ることができる、出会いの感覚も演出。

→こう考えると、金沢21世紀美術館ってコンセプトだらけですね(汗)…でもこれをまとめあげられている中の人たちは皆さん相当なスキルをお持ちなのでしょう。

美術館で始める“未来支度” ― サスティナビリティから新たなエコロジーへ

・長くなっていますが、HPにはたくさんの「想い」がちりばめられていますので、本ブログでも漏れることなくご紹介したいと考えました。以下、再度長谷川館長のもう1つ、美術館として大事にしている考え方だそうです。
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・美術館にはもう一つ大切な要素があります。それは「サスティナビリティ(持続可能性)」という言葉です。これは美術館をつくるときの一つのミッションでもありました。建築と一体となった多くのコミッションワークは、そのサスティナビリティを端的に表すものとも言えます。美術館の体の一部となって、常に皆さんをお迎えし続けているこれらの作品。レアンドロのプールやタレルの部屋で過ごされた数々の思い出が積み重なり、皆さんの記憶、人生の一部となっていきます。そして美術館を訪れてくださる多くの来館者のおかげで安定した運営と、地域の経済や文化活動へのさまざまな循環を生み出してきました。

 そして2021年。人間の営為があまりに肥大化しすぎて自然を大きく変えてしまい、後戻りができなくなってしまった「人新世」とよばれる時代を私たちは迎えています。今回のコロナ禍が示すように、新しい環境が私たちの社会や生活に大きな影響を及ぼすようになった現在、私たちは改めてサステイナブルな未来のために一層努力をしなくてはなりません。

お正月はただ1月1日が来てお正月になるのではなく、大掃除やお飾りなどお正月を迎える支度をして待つことで、はじめて輝かしい新年としてやってきます。未来を迎えるのもそれと同じです。サステイナブルな未来をつくるために私たちが支度すべきこと、それを美術館は皆さんと一緒に考え、未来への準備、“未来支度”をしていきます。

 金沢21世紀美術館は2024年に開館20周年を迎えます。これを一つの未来支度の目標のマイルストーンとします。今年度の美術館は「これまでの日常(あたりまえ)を問い直す」プログラムが展開されます。それに続き来年度からは、歴史、伝統から学び、これを現在から未来につなげるというTrans-historical(歴史横断的)な視点を重視していきます。今、新素材や技術、インターネット、AIなどの環境が、私たちの心理や感情、想像力に大きな影響を与え、新たな創造の可能性が生まれています。そして大切なのは、人間中心的な視点をずらして、動物や植物、モノなどとの関係を再考する「新しい人間学」とでも呼べる領域を作ることだと思っています。こうした現代の状況を、多様な表現方法や協働(コラボレーション)を通してお見せしたいと考えています。

 例えば、植物へのリサーチを映像で物語化する映像作家と自然科学者との協働、見えない情報を視覚化するデジタルデザイナーと情報科学者との繋がり、伝統の現代化を試みる工芸作家と素材開発の専門家との交流など、既存のジャンルを横断しこれまでの枠組みを取り外したさまざまな協働(コラボレーション)の可能性があります。
現代という時代の中にあるこうした可能性の中から生まれる新たなエコロジーの中で、芸術がどのような役割や新展開をとげていくのか? 金沢21世紀美術館が一つのプラットホームとしての“未来支度の館”となるのか? そのファシリテイターの一人として、皆さんと一緒に歩んでいきたいと願っています。(2021年4月 金沢21世紀美術館 館長:長谷川祐子)
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→はい、ぶっちゃけアート初心者の方は1度読んでも解らなかったと思います…(長谷川さんて頭良すぎるのですよね、、)まあ、そういう方は来年度から開催される金沢21世紀美術館の種々の展覧会に実際に足を運んでいただくか、常々HPを見るなりして少しずつ何が言いたいのかを自分の中に落とし込んでいってください。(すいません、投げやりで。でもそんなところも長谷川館長は狙っているような気がします)

収蔵方針

・実はここまで一切コレクションの画像を出さずに既に5000文字を超えています。こんな美術館これまでで初めてです(2回に分ければよかったw)。金沢21世紀美術館の収蔵方針、以下大きく3つに分けてコレクションされています。

1.1980年以降に制作された新しい価値観を提案する作品
2.1の価値観に大きな影響を与えた1900年以降の歴史的参照点となる作品
3.金沢ゆかりの作家による新たな創造性に富む作品

→兎に角、「新しい価値」、「歴史的」、「新たな創造」と新しさ、時代を切り開いたか否かに焦点が置かれています。コレクション画像は…載せだすとキリがないので以下から検索してくださいw(そうそうたる現代アートの作品群です)
〇金沢21世紀美術館コレクション検索:http://jmapps.ne.jp/kanazawa21/sakka_list.html

他にも「キッズスタジオ」や「アートライブラリー」、「舞台芸術を通して地域文化の活性化を目指す事業」や「美術館に様々な人が行き交い交流の育まれる『まちの広場』を市民とともにつくるプログラム」など、多様な人たちに開かれたプログラムを実施されています。詳細は以下URLから。
〇金沢21世紀美術館LEARNING:https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=70
〇金沢21世紀美術館PROJECT  :https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=68

…すごい、文字だけで美術館紹介ってできるんですね。今更ながらw
これも金沢21世紀美術館に関わるアーティストの方と長谷川館長、コレクションだけに限らず多種多様なプロジェクトを展開されている所以かもしれませんね。

本美術館のすごさ、なんか紹介ページつくっているだけで体感しました。私も何度も足を運んでいますが、来年、再来年、またその翌年も…と金沢詣でができればな…と考えています。皆さんも是非。ではまた。

レアンドロ・エルリッヒ<スイミング・プール> ※金沢市観光公式サイト「金沢旅物語」より

(結局、1つもコレクション貼らないのに耐えきれず一番ベタなものを貼ってしまうワタクシです)

 

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