美術館運営の光と影 愛知:ボストン美術館の姉妹館の趨勢について

愛知県

こんにちは。今日ご紹介…というか取り上げるのはかつて名古屋にあったボストン美術館の姉妹館です。これがどのような経緯を経て開館され、閉館までに至ったのか、あくまで記録として本ブログでは残しておきます。

某テレビ番組では「失敗から学ぶ」企画が視聴者から好評を得ていましたが、今回はそのようなイメージで、美術館運営がいかに舵取りが難しいか、他館含め「所蔵品を守り、後世に伝える」と簡単に言っているようで、それがいかに時代の流れに左右されるのか、これをご覧いただければ解るのではないかと思います。

(作品それ自体を単純に保存、修復していれば未来永劫それが残っていくのではなく、本美術館のように美術館そのものの運営方針に左右されもしかしたら所蔵品がその街からなくなってしまう可能性もあるということです)※今回ご紹介する美術館は、元々館自体に所蔵品は持っていませんでしたが。

それでは早速。

このブログで記録する美術館

旧名古屋ボストン美術館

・開館:1999年~2018年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県・市観光協会より転載)

・場所
名古屋ボストン美術館 – Google マップ

美術館運営の光と影 愛知:ボストン美術館の姉妹館の趨勢について

・今回はあえて何も知らない私があれやこれやと書くことはしません。おそらく、誰かこの館に色々思うところがある方々がまとめてくれたのでしょう。以下はインターネット情報サイトからの史実のみ掲載しておきます。(間違っている箇所あったらコメント欄でご指摘ください)

旧名古屋ボストン美術館、閉館までの経緯の記録

・米国のボストン美術館との姉妹館契約は20年間で、契約満了前に更新するかどうかを検討するとの内容だった。しかし、契約内容は名古屋側に展示品の選定権が無く、ボストンの所蔵品と他の美術品を一緒に展示できないなど、名古屋側に不利な内容となっており、企画立案の足かせとなった。さらに、開館後20年間でアメリカ側へ約5千万ドルを寄付することも義務付けられていた。

開館初年度の1999年(平成11年)の入館者数は70万3,000人を記録したものの、翌年度以降は年平均20万人と、当初予測していた平均33万人を下回り、慢性的な赤字が続いた。その結果、開館10年にして中部財界が拠出した設立・運営資金75億円は底を尽き、アメリカ側へ後半10年間で支払う寄付金37億円が残った。2002年(平成14年)には研究部門の学芸部を廃止。開館から10年目にして閉館との報道が流れる。

2005年(平成17年)3月23日、運営主体の名古屋国際芸術文化交流財団の理事長に就任した小笠原日出男(UFJ銀行名誉顧問、名古屋商工会議所副会頭)は、存続を前提に努力すると記者会見。地元財界や愛知県、名古屋市など関係団体に協力を求めるとともに、アメリカ側とも、寄付金の減額など契約内容の変更を求めて交渉すると述べた。

財団は、まず2009年度からの後半10年の契約について、寄付金の残金37億円を17億円へ減額することでアメリカ側と合意。次に、今後10年間の収支見込み全体では、支出予測から収入予測を差し引くと、なお55億円の不足が予想されることから、地元経済界に対し35億円の支援を、愛知県と名古屋市には、市と県が15億円ずつ拠出していた経営安定化基金30億円を取り崩し、県と市でそれぞれ10億円、合計20億円の支援を要請した。

美術館開館設立に先立つ1996年(平成8年)1月に、財団と愛知県、名古屋市の間で交わした覚書では、経営安定化基金は美術館解散の時には県と市に寄付すると決められ、取り崩しを禁じ、赤字の補填も要請しないとされていたが、2006年(平成18年)3月23日の名古屋市議会経済水道委員会で議論の末に支援が可決された。松原武久名古屋市長は「これが最後の支援と認識している」と述べた。

また、アメリカ側との交渉では、原則として米国ボストン美術館の展示に合わせていた企画展に関し、名古屋側が独自に委員会を設け内容を決定して開催できるように変更。著名な芸術家など魅力的な企画展の開催と、地元に密着した展示物の増加、子供の教育に関係した展示の拡大を図り、従来はアメリカ側の許可が必要だった展示室の利用を1部に限り名古屋側が自由に使えるような契約内容の変更も合意され、ひとまず2018年までの存続が決定した。2019年3月に20年間の契約満了を迎えるが、その後の青写真は描けていない。

2006年(平成18年)9月に学芸部を復活し5名の学芸員を配置。同年10月に馬場駿吉が館長に就任した。

しかし、2016年(平成28年)5月25日において、資金不足を理由に展示品を借り受けているボストン美術館との契約を2018年度末以降は更新しない方向で最終調整に入った。名古屋国際芸術文化交流財団の理事会で報告し、美術館施設の今後の利用についての検討を急いでいる。

2016年6月に開催された財団の評議員会にて、当館はボストン美術館との契約を更新せず、2018年度末までに閉館することが決定した。

2018年7月24日~10月8日「ハピネス~明日の幸せを求めて」が名古屋ボストン美術館最終展となる。

2018年6月11日名古屋市の収支では約34億円の赤字となる見込みを明らかにした。1999年開館し、これまでに62億円を支出してきた。2018年10月閉館後の跡地活用方法は白紙。名古屋市が金山南ビル3~5フロアを43億7000万円で取得し、運営する名古屋国際芸術文化交流財団に年1億円で貸し付けている。名古屋市は取得費のほか経営安定化基金に拠出した15億円や建物管理費など合わせた計62億円を支出。一方回収できたのは貸付料や基金の残金など約28億円。名古屋市は東海地方の開発業者など98社にアンケートしたが、美術館や博物館として利用する希望はなかった。名古屋ボストン美術館は年4億円~5億円程度の赤字が続いた。

跡地としての活用も見通せていない。建築基準法に伴い、施設に窓はなく、特殊な空調を設けるなど展示施設として造られているのが主な要因で、飲食店などとして利用するには莫大な改修費が必要となる。その改修費も数十億円が必要で、隣接するホテルの改修も行わないといけないため、大規模なものになることも要因になっている。名古屋市としては後に入るテナントは「美術館か博物館」としているが、赤字で閉館した美術館の跡地に美術館・博物館を誘致する姿勢に対して疑義が呈されている。

2020年から名古屋市が金山南ビル美術館棟として、短期利用を認める方向に転換し、2023年度まで1カ月単位で利用を募集することになり、2021年2〜5月にバンクシー展、2021年7〜8月には、恐竜をテーマとする展覧会が開かれる予定。

 

…いかがだったでしょう。ボストン美術館の姉妹館という当時話題をよんだ美術館ではありますが、国を挟んだ(特にアメリカという国の)美術館運営の難しさ、資金面の大変さが少しでも解っていただけたら幸甚です。ではまた。

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