現代アートを通じ人が自然に溶け込む場所 新潟:越後妻有「大地の芸術祭」

アートな場所

こんにちは。マウスです。
今日書こうとしている内容はベネッセアートサイト直島以来、少し緊張?しています。そう、この魅力を文字だけでは語れないと解っているからです。とは言え、このブログは結構アート初級者の方にも読んでいただいているようなので、なるべく丁寧にご紹介しようと思っています。(なので複数回に分けてご紹介です)

…もはや現代アートや新潟県の観光界隈において超有名な「場所」となっており、いわゆる「芸術祭」と呼ばれるものの先駆けになりました。私自身はそれくらいこの場所と取組みをリスペクトしています。ではでは早速。

このブログで紹介するアートイベント

越後妻有「大地の芸術祭」

・開催:2000年(以降、基本的に3年に1度開催)
※ちなみに越後妻有と書いて、「えちごつまり」と呼びます。新潟県十日町市で開催。
・こんなところ(以下、画像は大地の芸術祭HP及び県観光協会HPより転載)
 
→まさに「里山」って感じです。

・アクセス
越後妻有 大地の芸術祭(清津峡トンネル) – Google マップ
※このあたり一帯がアート作品で埋め尽くされますので、地図はあくまで本芸術祭の入り口の場所です。

なぜ越後妻有で「大地の芸術祭」?

・1994年、当時の新潟県知事が提唱した広地域活性化政策「ニューにいがた里創プラン」に則り、アートにより地域の魅力を引き出し、交流人口の拡大等を図る10カ年計画「越後妻有アートネックレス整備構想」がスタート。アートディレクター・北川フラムをアドバイザーとして「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が2000年に開始。
※1946年新潟県高田市(現上越市)生まれ。東京藝術大学卒業。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」「瀬戸内国際芸術祭」「北アルプス国際芸術祭」「奥能登国際芸術祭」の総合ディレクター。  長年の文化活動により、2016年紫綬褒章受章、他多数。

→「ニューにいがた里創プラン」と「越後妻有アートネックレス整備構想」が源流のようですね。少しご紹介。
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「ニューにいがた里創プラン」
・住民の日常的な生活圏域である広域市町村圏を基本的な単位として構成市町村が一体になって個性的なプロジェクト(ハード、ソフト併用)を展開することにより、広域連携と地域活性化の起爆剤を目指す、新しい地域活性化事業であり、次のような基本的理念に基づいて取り組んでいる。(10年間で事業費の約40%(最大6億円)を県が支援する政策)
○独創的な地域価値の創造
○市町村の広域的連携
○住民の主体的参画
○ソフト重視・プロセス重視
○市町村と県のパートナーシップ
現在この事業は、五泉、十日町、岩船の3広域市町村圏で進められている。
※新潟文化物語より転記:https://n-story.jp/database/detail.php?cd=215
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「越後妻有アートネックレス整備構想」
・地域の魅力を引き出し、国内だけでなく世界との活発な交流を促進するための手法として、アートを最大限に活用するという構想。

現代アートを通じ人が自然に溶け込む場所

→「人間は自然に内包される」…これがこの芸術祭の世界、全作品に通ずる1つの基本理念です。これを解りやすく2017年の市報でコメントされた当時の新潟県十日町市産業観光部長:渡辺正範さんの記事がありましたのでご紹介しておきます。(少し長いですが、この芸術祭をより楽しむために一読してみてください)

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<人間は自然に内容される>
・越後妻有は、新潟県信濃川流域の南部、十日町市と津南町のエリアを総称するもので、「妻有」は中世からの呼称です。面積は約760㎢で東京23区の1.2倍あり、そこに約6万7,000人が暮らしています。過疎高齢化の進む典型的な中山間地域で、積雪が市街地でも3mを超えることがある、世界でも有数の豪雪地です。

そんな雪の中から縄文文化が花開き、今から約5,000年前の縄文中期には、縄文の華と呼ばれる火焔型土器を生み出しました。十日町市笹山遺跡出土の土器群は、縄文土器としては唯一国宝に指定されています。稲作が始まると里山に分け入って棚田を耕し、通年で高い湿度を利用した機織りに勤しむなど、独特な文化・産業を育ててきました。それが、現在の魚沼コシヒカリ、そして着物の産地として受け継がれています。

しかし、東京一極集中が進む戦後の高度成長期やバブル期には、他の多くの地方と同様に、過疎と高齢化に拍車がかかりました。一方で、大規模な開発や環境破壊がなかったため、ありのままの里山の暮らしと日本の原点のような風景が、そのまま残っている地域でもあります。ただ、その価値を生かし切れていなかったことが、「大地の芸術祭」に挑む要因になりました。

大地の芸術祭 Echigo-Tsumari Art Triennaleは、この越後妻有の里山を舞台に3年に一度約50日間開催される世界最大級の国際現代美術の祭典で、2000(平成12)年にスタートしました。「人間は自然に内包される」を基本理念として、里山の自然・風土・文化を、現代美術を媒介にして掘り起こし、地域・世代・ジャンルを越えた人々の協働を通して魅力を高め、世界に発信する地域創生の取り組みです。主な内容は、作家と地域住民の協働による作品制作やワークショップ、パフォーマンスイベントなどで、運営には、都市の若者や外国人も多く関わっています。

1994(平成6)年、平山征夫新潟県知事(当時)の提唱で、広域市町村が連携して行う個性的な事業に対して県が支援することで、広域連携と地域活性化を目指す事業として「ニューにいがた里創プラン」がスタートしました。10年間で事業費の約40%(最大6億円)を県が支援するもので、当時6市町村で形成していた十日町地域広域市町村圏(現十日町市・津南町=越後妻有)が、この地域指定を受けました。

初めから、現代美術をテーマに据えていたわけではありません。食や雪、伝統文化などを核として検討していく過程で、これらすべての資源の付加価値化を図るツールとして「アート」が有効なのではないかという発想から、「越後妻有アートネックレス整備構想」が生まれました。

基本理念:人間は自然に内包される
目  的:情報発信、交流人口増加、地域の活性化
主要事業:
⑴越後妻有8万人のステキ発見事業
⑵花の道事業(1998 ~ 2003)
⑶ステージ整備事業(1998 ~ 2003)
⑷大地の芸術祭事業(2000 ~継続中)
⑵花の道事業(1998 ~ 2003)
⑶ステージ整備事業(1998 ~ 2003)
⑷大地の芸術祭事業(2000 ~継続中)

上記の主要事業のうち、現在まで実施されているのは⑷の大地の芸術祭事業だけですが、⑴~⑶の事業は、芸術祭を展開していくための意識醸成や起爆剤とするために実施されました。

空家や廃校、耕作放棄地も含めた棚田、空き地など、ふだん地域にとって負のイメージを持つ空間が作品展開の場となるため、これらの価値や潜在的な力を再認識する必要があったからです。マイナスの財産を、アートの力を借りてプラスの財産に変えていくためには、必要なステップでした。とはいえ、それだけで物事がうまくいくわけではありません。何しろ、20世紀末当時は「芸術=金持ちの道楽」、「現代美術=理解不能」という認識がまだまだ根強く、まして中山間地域に展開して地域づくりになるなどと考える人は、ほとんどいなかったのです。

そんな中「これこそが21世紀の地域づくりの核になる」と説き、理念の浸透と実現化のプロセスを示して議論をリードしたのが、現在も総合ディレクターを務める北川フラム氏です。北川氏は、里創プラン事業の方向が文化面に向かっているときに構想に加わり、そのまま総合コーディネーター(当時)として、芸術祭の総監督の役割を果たしています。

事業初期は、「理解できない」、「そんなことは必要ない」、「地域を破壊する」など、疑問や反対の意見が噴出しました。しかし、現代美術は社会の矛盾や自然の危うさをあぶり出すとともに、人の未来への希望も示すことができると根気よく熱心に説くことで、次第に理解を得ていきました。この「ぶれない思想と対応」があったからこそ、大地の芸術祭は動いていったと言えるでしょう。

大地の芸術祭は、構成自治体と地域内の各種団体からなる実行委員会で意思決定、運営されています。大地の芸術祭実行委員会は1998(平成10)年7月に設立され、実行委員長は十日町市長、副実行委員長は津南町長、名誉実行委員長は新潟県知事となっています。総合プロデューサーには福武總一郎氏、総合ディレクターには北川フラム氏に就いていただき、委員として商業組織、交通や旅館などの団体、地域自治組織など地元の様々な団体が参画しています。

実際の現場では、市・町の担当セクションと「NPO法人越後妻有里山協働機構」が事務局・運営本部となり、集落や各種団体、自主運営の組織等と連携して事業全体の管理・運営に当たっています。そして、これら全般にわたって活躍するのが「こへび隊」です。こへび隊は、主に首都圏の若者を中心とするサポーターで、アーティストをフォローする作品制作はもとより、作品管理、案内、ツアーガイドなど多岐にわたる活動を、地域住民との協働の中で展開しています。また、会期以外でも農作業や除雪、祭礼参加など地元に溶け込む活動を行っていることから、年間を通じて地域とのつながりが深くなっています。

こうして生まれた作品は地域の特別な存在=財産となり、自然、集落、地域の中に溶け込んでいきます。制作に住民が加わること、そして、その場所でなければ作品が成立しないことが、通常の美術展と異なるところです。これが、「作品が周りの自然や環境の魅力を引き出す」、「集落や場所の力が作品に輝きを与える」ことにつながり、鑑賞者に新鮮な感動を与えることになっていると思います。

大地の芸術祭の来訪者は、2000年の第1回展の約16万人から第6回展の約51万人へと約3倍に増えました。参加集落も28から110へと約4倍に伸びています。これは、集落全体の約半数にあたります。来訪者男女比は、女性65%に対して男性35%、年代別では、20代と30代で過半数を超えます。言い換えれば、若い女性から高い支持を受けている催しということになります。経済波及効果も、第6回展では新潟県全体で約51億円にのぼり、景気動向に寄与する規模になってきています。

そのほか、芸術祭の効果といわれるものには以下のようなことがらが挙げられます。

○交流人口の増加と地域ビジネスの創出
 わずか5軒の集落に1万人を超える人たちが訪れるようになり、地域のおかあさん達による農家レストランが人気を博す例も生まれました。
○住民同士、来訪者、諸外国との連携機会拡大
 芸術祭で知り合った住民同士も多く、駐日外国大使館との交流に地区全体で取り組んでいるところもあります。
○デザイン性の高い商品の創出とブランド化
 商品のパッケージを一新する「リデザインプロジェクト」で数々のデザイン賞を受賞することなどにより、売り上げを大きく伸ばした商品も数多く生まれました。
○他分野への波及(福祉や健康など)
 福祉作業所で生産するお菓子がお土産品コンテストで最高賞を受賞し、売り上げを大きく伸ばしたことにより、利用者が自活するための資金に結びついている例もあります。
○地域の誇り醸成と移住者の増加
 都市から地方へ居所を移し地域のサポート活動を行う「地域おこし協力隊」や市職員などへの応募動機に、「大地の芸術祭に関わりたい」というものが多くなっています。

 ここまでの記述を読むと順風満帆に見えますが、やはり課題もたくさんあります。
○安定的な財源の確保(助成や寄付協賛、自主財源)
○作品の維持管理・改修(多くの作品、多額の維持費)
○地域全体への波及(地区によって大きい温度差)
○受入体制の整備(二次交通や案内、インバウンド)

 これらはみな、一気に解決することが難しいものばかりです。地道に取り組む必要があります。

 21世紀、とりわけ東日本大震災以降、日本とそれを構成する地方、地域は、これまでの価値観とは大きく異なる視点でまちづくりを進めなければならない岐路にあると思います。「人間は自然に内包される」という大地の芸術祭の基本理念は、ここに臨んで重要だと考えます。人も文明も芸術も、自然とともに歩んでこそ生きるということを、いま実感できるからです。

 芸術の力で地域づくりを進めることは「芸術本来の道ではない」という議論もありますが、「アートが地域の力を引き出し、地域がアートを育てる」ことも、越後妻有の人たちは知っています。これまでの歩みを検証し、地域全体を里山現代美術館として内外に発信していく活動を、これからも続けていきたいと思います。(国際文化研修2017冬 vol. 94)
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…はい、お疲れさまでした。ごめんなさい、文字ばかりで疲れましたね。でも大切なところマーカーしておきましたからぜひ。私個人的に感心しているのは、このコメント出した人、北川フラムさんでも新潟県知事でもなく、十日町市という決して大きくはない街のお役所の1部長さんなんですよね(驚)…お役所仕事とは全く真逆にいるような、本芸術祭を熱く語れる人が官庁側にもいるということがこの芸術祭を一躍有名にしたポイントでもあるのかもしれませんね。

ちなみに途中書いてあったこの芸術祭を訪れたお客さんの数ですが、以下の通り集計されています。

〇大地の芸術祭の実績
回数 開催年 入込客数 参加集落 作品数
1 2000年 162,800人 28集落 146作品
2 2003年 205,100人 38集落 224作品
3 2006年 348,997人 67集落 329作品
4 2009年 375,311人 92集落 365作品
5 2012年 488,848人 102集落 367作品
6 2015年 510,690人 110集落 378作品
7 2018年 548,380人 102集落 379作品
※2018年はマウス調べ。

→確かにどんどんお客さんの数増えていますね;すごい。。
少子高齢化の世の中においてこんなに急が成長しているイベントってないのでは…。

(付録)大地の芸術祭紹介動画

・少し文字ばかりで疲れたので今日はここまで。最後に映像も載せておきます。(2018年開催時の動画ですが…3分間にうまくまとめてあるので是非カップラーメン作っている間にでも眺めてみて下さい)

※その他Youtubeなどで探せば本芸術祭の映像沢山出てきますよ

(マウス)

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