150年後の同胞が建てた美術館、江戸随一の漆喰芸術の世界 静岡:伊豆の長八美術館

静岡県

こんにちは。静岡県、美術館多いですね。文化を大切にする風土もあるのでしょうが、それだけ過去芸術方面において偉人を輩出してきた証なのでしょう。
今日ご紹介する美術館、こちらもまた感慨深く、江戸時代に活躍した左官の作品を後世に伝え遺すために建てられた美術館です。江戸時代…明治政府が1868年に樹立して150年が経ちました。150年…これを大昔というかつい先日というかは置いておいて、150年前に実在した1人のアーティストの物語です。それでは早速。

このブログで紹介する美術館

伊豆の長八美術館

・開館:1984年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、市観光協会HPより転載)

・場所
伊豆の長八美術館 – Google マップ

150年後の同胞が建てた美術館、江戸随一の漆喰芸術の世界

・幕末から明治にかけて活躍した松崎町出身の鏝絵(こてえ)の第一人者、入江長八の作品を収蔵するミュージアムです。

入江長八とは

・1815年伊豆生まれ、江戸末期から明治初期の名工。貧しい農家に生まれ、左官の弟子となり漆喰しっくいの技術を身に付けた後、江戸で狩野派の絵画を学び、漆喰細工に応用。色彩豊かな鏝絵こてえの技法を完成させ、浅草寺観音堂、成田山新勝寺など各地で作品を制作しました。

後に、彫刻家の高村光雲から「伊豆の長八は江戸の左官として前後に比類のない名人であった。浅草の展覧会で長八の魚づくしの図のついたての出品があったことを覚えている。殊に図取りといい、こて先の働きなどは巧みなもので、私はここでいかにも長八が名人であることを知った」と評価されているそうです。

今でも長八の漆喰鏝絵は西洋のフレスコに勝るとも劣らない壁画技術として、芸術界でも高く評価され、両者は共に漆喰の湿材上に図絵する技法で、フレスコは漆喰面と顔料溶液との科学的融合により堅固な画面を作り出すのに対して長八は、特殊な方法で下地を作り、色彩を自由に駆使する鏝画で、薄肉彫刻を併用する長所があるとの事。本美術館は、長八の代表作品約五十点を二棟の展示館に収蔵しています。

なぜ伊豆に長八美術館?

・では、なぜこの伊豆に江戸時代の1人の左官の美術館ができたのでしょうか。ホームページには以下の内容が掲載されていました。
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・長八美術館の生みの親、石山修武氏(建築家)は、この町との出あいを「奇跡的な出あいでした」と話す。伊豆松崎出身の入江長八という鏝と漆喰の名人職人を知り、建築家として伝統の左官技術のすばらしさを一般の人に知ってもらいたい・・・。
その心が松崎町活性化事業と共鳴し、長八美術館が誕生しました。数多くの優能な技術者が全国から集まり、伝統の左官技術を生かした建物のあらゆる場所には、その左官の芸がちりばめられており、同美術館は「江戸と二十一世紀を融合させた建物」として今では、世界的な建築物として注目されています。
長八美術館を設計した石山修武氏は、同美術館が建築界の芥川賞といわれる「吉田五十八賞」の受賞の対象となり、 第10回の受賞者となりました。このことは、建築に参加した多くの左官職人の持つ古来より受け継いだ技術と、新しい工法が実証されたものであり、職人の職人による職人のための美術館、その技術の枠を結集いた建築が広く認められたものと言えましょう。
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→つまり150年経ったとはいえ、同じ志をもつ同胞が入江長八という時代を超えた名人の素晴らしさを後世に伝えるために建てた美術館なのですね。そう考えると、その成り立ちはなかなかに珍しいかもしれません。

石山修武とは

・岡山県生まれの建築家。1966年早大建築学科卒,1968年同大学院修了。同年ダムダン設立(のちダムダン空間工作所と改称)。1988年より早大建築学科教授。建築以外の工業製品を使い、手作りで建設した別荘〈幻庵〉(愛知県、1975年)によって注目されたほか,全国の左官職人と協働して作られた〈伊豆の長八美術館〉(1984年)など近代文明への批判的な視点を持つ作品を手がける。近年の作品に〈リアス・アーク美術館〉(宮城県、1994年)がある。著書《バラック浄土》(1982年)、《〈秋葉原〉感覚で住宅を考える》(1984年)、《笑う住宅》(1986年)他。

→こちらブログでもご紹介したリアス・アーク美術館も建てられた方なのですね。

主な展示作品

・画像は一部しかありませんでしたが掲載しておきます。



→塑像もつくっていたようですね。

(付録)光る泥団子つくり

・最後に、本美術館ですが、日本古来の左官材料である壁土や漆喰(しっくい)を使い、ピカピカの泥団子制作体験を実施しているようです。その様子を動画でご紹介していました。

単に古来の伝統技術にとどまらず、それを現代に持ち込み遊びの要素にまで展開している姿勢はすごいなーと感じました。そんな、伊豆の長八美術館、皆さんもぜひ足を運んでみて下さい!

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