日本で最古の歴史をもつ美術団体が運営、2つの著名な公募展を毎年開催 東京:上野の森美術館

東京都

こんにちは。今日ご紹介する美術館、恐らく目にしたことある方が多いのではないかと思います。上野公園内の一角、西郷隆盛像の近くにある美術館といえば皆さんピンとくるでしょうか。

 上野駅から目と鼻の先にある私設美術館…ちなみに私、この美術館、あまりにも立地が良すぎるので国立か都立かそのあたりの公立美術館なんだろうとばかり思っていました。まあ、名前も公立っぽい名称ですからね。ただこちら、れっきとした私設美術館で、日本の美術団体としては最も古く、1879年に設立された公益財団法人日本美術協会が設置する美術館としてフジサンケイグループの支援のもと1972年に開館。六本木の国立新美術館などと同様、常設のコレクションを持たない企画展・特別展専用の館として運営されています。

 公募展では若手の登竜門として有名なVOCA展など著名な公募展を毎年開催していることでも有名です。
 そんな美術館、早速見ていきましょう。

このブログで紹介する美術館

上野の森美術館

・開館:1972年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、都、観光協会HPより転載)  

・場所:上野の森美術館 – Google マップ

日本で最古の歴史をもつ美術団体が運営、2つの著名な公募展を毎年開催

・日本の美術団体としては最も古い歴史をもつ公益財団法人日本美術協会(1879年設立)が設置する美術館として1972年にフジサンケイグループが開館。常設のコレクションを持たない企画展・特別展専用の美術館。

 なお、公益財団法人日本美術協会は、明治12年に設立された龍池会を前身とする美術団体で、1883年(明治16)有栖川宮熾仁親王が龍池会総裁に就任、現在は常陸宮正仁親王が総裁をつとめています。

 上野恩賜公園のなかに建つ本館は、開館以来重要文化財の公開をはじめ様々なジャンルの美術を紹介。常設展示は行っていないものの、毎年開催している美術館主催の現代美術展(VOCA展)、公募展(上野の森美術館大賞展、日本の自然を描く展)のほか、定期的に企画展を開催。2006年(平成18年)、別館が増築され1階は小企画展が開催できるスペース「上野の森美術館ギャラリー」を新設、3階は上野の森アートスクールを設置し活動の幅を広げています。

日本美術協会(龍池会)の歴史

龍池会について

・明治時代初期の美術団体。明治初年に急激な西洋化の結果、従来の美術作品は価値を落とし、作家も需要を失って窮乏していた。このような状況を危惧した佐野常民、河瀬秀治、九鬼隆一らが明治11年(1878年)3月、上野の天龍山生池院(弁天堂)に集まった。これが後の「龍池会」の始まりとされている。会頭は佐野、副会頭は河瀬が担当、古美術品の鑑賞会(「観古美術会」)や同時代の作品の品評会を主な活動とし、上野で会合を行う。

 当初は旧来の美術をそのままに保護しようという方針であったが、重要なブレーンであったフェノロサが狩野芳崖を通じて和洋折衷の新しい日本画の創出を目指すようになり、内部での対立を生む。この結果、同17年(1884年)に九鬼や岡倉覚三(天心)、今泉雄作ら文部省組が離反して新たに「鑑画会」を発足、この運動は明治20年(1887年)の東京美術学校の設立へと到る。

 明治18年(1885年)6月に『龍池会報告』を創刊し、龍池会が日本美術協会と改称する同20年(1887年)12月まで、ほぼ月毎に刊行した。 新興勢力の鑑画会の革新運動に危機感をいだいた龍池会側は宮内省との関係を深め、明治20年(1887年)に有栖川宮熾仁親王を総裁に迎えて「日本美術協会」へと改称。純粋な伝統絵画を保存しようという方針の下に伝統画派の重鎮が集まり、鑑画会系の革新派が新派と呼ばれたのに対して、龍池会側は旧派と呼ばれた。

日本美術協会について

・鑑画会の革新運動に危機感をいだいた龍池会側は宮内省との関係を深め、1887年(明治20年)に有栖川宮熾仁親王を総裁に迎えて「日本美術協会」へと改称。

 純粋な伝統絵画を保存しようという方針の下に伝統画派の重鎮が集まり、鑑画会系の革新派が新派と呼ばれたのに対して旧派と呼ばれる。1888年(明治21年)には会報である『日本美術協会報告』を創刊する他、同年に帝室技芸員の前身である「宮内省工芸員」を認定。上野公園内の宮内庁用地を借り受けて会館を建設し、美術展の開催を行った。

 皇族を総裁に戴いた求心力も手伝い、設立時の1888年には478名だった会員数は増え続け、1903年(明治36年)12月時点のピーク時には1560名に達した。その後、会員数や宮内庁の作品買上の減少なども重なり一旦は第二次世界大戦中に活動を停止するものの、戦後、ふたたび活動を再開。展示施設として上野の森美術館を開館した。

公募展

上野の森美術館大賞展

・個性豊かな可能性のある作家を顕彰助成する目的で1983年に制定した全国公募性による美術展覧会。制定以来毎年、日本画や油絵といった素材の違いや抽象、具象といった既成の尺度にとらわれることなく幅広く作品を公募。 主な受賞作として
1984年 – 鶴身幸男『三人』
1985年 – 鈴木民保『夕焼け』
1986年 – 広野照臣『家族』
1987年 – 増田清志『待望』
1988年 – 川合みち子『ROOM』
1989年 – 末永敏明『黒い太陽』
1990年 – わたなべゆう『風土』
1991年 – 佐藤孝義『幽寂』
1992年 – 戸田みどり『群像 1』
1993年 – 清水正志『生まれいずるところ 2』
などがある。

VOCA展

(以下は現代美術関連のWEBサイトArtScapeからの引用です)
・1994年から続く、「平面」作品を対象とした展覧会。正式名称は「VOCA 現代美術の展望・新しい平面の作家たち(Vision Of Contemporary Art)」。「ヴォーカ」と読ませるが、「ボカ」と簡略されることも多い。

 第一生命保険株式会社の全面的な支援を受けながら、上野の森美術館を会場に毎春開催。全国の美術館学芸員や美術記者、美術評論家などによって推薦された40歳以下の若手作家の全員に出品を依頼、出品されたなかから選考委員会がVOCA賞、VOCA奨励賞、佳作賞、大原美術館賞を授賞する。

 このうちVOCA賞およびVOCA奨励賞受賞作品は第一生命保険相互会社に買い上げられ、同本社の1階ロビーで公開されるほか、全入賞者に対して第一生命南ギャラリーでの個展の機会が提供される。1956年以来、断続的に行なわれている「シェル美術賞」と並ぶ、新人画家にとっての登竜門である。

  VOCA展のもっとも大きな特徴は、作品の良し悪しを判定する基準がモダニズム絵画論で一貫している一方で、選考された作品はじつに多様に富んでいることにある。選考委員会の顔ぶれは毎年入れ替えられているものの、比較的継続して務めているのは、高階秀爾(大原美術館館長)、酒井忠康(世田谷美術館館長)、建畠晢(京都市立芸術大学学長)、本江邦夫(多摩美術大学教授)の4氏。それぞれの立ち位置は微妙に異なっているにせよ、彼らの批評的立場は絵画の本質を絵画によって追究するモダニズム絵画論に依拠している点では一致。実際、これまでのVOCA賞受賞者を振り返ると、淡い色彩によって画面を構成した抽象画が数多く評価されている。

 一方で、そうした原理原則を守りながらも、その適用範囲を臨機応変に拡大することによって現代性を獲得しようとしているところに、この展覧会のもうひとつの面がある。写真のやなぎみわ(1999)や、日本画の山本太郎(2007)、三瀬夏之介(2009)がVOCA賞を受賞したことは、その多様性の顕著な現われにほかならない。さらに入賞者も含めてみると、大岩オスカール幸男(1995)や曽根裕(1997)、石田徹也(2001)、照屋勇賢(2002)、中ザワヒデキ(2003)、HEART BEAT DRAWING SASAKI、中山ダイスケ(ともに2004)、蜷川実花(2006)、山口晃(2007)、淺井裕介、高木こずえ(ともに2009)、清川あさみ、齋藤芽生(ともに2010)など、多士済々の顔ぶれがそろっている。

 こうした多様性を可能にする条件のひとつが「平面」というフレキシブルな概念で、これが第一に「絵画」を示していることは暗黙の了解とされているが、それは時として「写真」に適用されることもあるし、場合によっては「映像」を含めることすらある。モダニズム絵画論が現在の絵画にそぐわなくなっているにもかかわらず、それらを評価する基準としていまだに活用されている点については批判も多い。しかし、このねじれの隙間から数多くの若く有望なアーティストが輩出されてきたことは事実である。つまりVOCA展とは、実作の面でも批評的言説の面でも、美術をめぐる功罪が凝縮したトポスとして機能している。

…いかがだったでしょうか。
上野の森美術館、コレクションは有しませんが、そのユニークな展覧会でひときわ輝きをはなっていますね。
以下に本美術館の展覧会情報を掲載しておきますので、ご来館の際はぜひ参考にしてみて下さい。

〇展示スケジュール:https://www.ueno-mori.org/exhibitions/
〇(公募)上野の森美術館大賞展:https://www.ueno-mori.org/exhibitions/taisho/41/
〇(公募)上野の森美術館自然展:https://www.ueno-mori.org/exhibitions/shizen/36/
〇(公募)VOCA展:https://www.ueno-mori.org/exhibitions/voca/

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