善光寺に隣接し立地、4つの基本理念を柱としたランドスケープ・ミュージアム 長野県立美術館(本館)

長野県

こんにちは。長野県、最後にご紹介する美術館は長野県の文化発信拠点として2021年にリニューアルオープンしたばかりの美術館です。

こちらは1966年に善光寺に隣接する城山公園内に発足した信濃美術館をルーツとし、当時の信濃エリアでは唯一の県立美術館として運営されていました。もしかしたら長野県に美術館が多い理由も、このように全国に先駆けて県立美術館がオープンし文化の発信拠点として機能していたことも挙げられるのかもしれませんね。今では「学び」「鑑賞」「交流」「研究」という4つの柱をかかげて、そこに集う人がお互いに学び合う人本位の美術館として、また、美術を通じて県内外を結ぶ観光・交流拠点としての役割を目指して運営されています。それでは早速みていきましょう。

このブログで紹介する美術館

長野県立美術館

・開館:2021年 ※前身は1966年からの長野県信濃美術館、2021年にリニューアルオープン
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県・市、観光協会HPより転載)

・場所
長野県立美術館 – Google マップ

善光寺に隣接し立地、4つの基本理念を柱としたランドスケープ・ミュージアム

・1966年、善光寺に隣接する城山公園内に財団法人信濃美術館として発足、1969年に県に移管されて以来、信州における唯一の県立美術館「長野県信濃美術館」として活動。1990年には東山魁夷館が開館。2021年には本館が新築され、「長野県立美術館」へと改称し、現在に至る。

本館では、「鑑賞」「学び」「交流」「研究」という4つの柱を軸に、郷土作家の作品・信州の風景画を中心とした近現代美術の収集とコレクション展や企画展の開催、美術団体などへの作品発表の場の提供、多様な学習プログラムの提供、館外における交流活動、近現代美術の研究・発信などを実施。(前身の長野県信濃美術館では、昭和41(1966)年の開館以来、郷土にゆかりのある芸術家たちの作品と、美しい信州の自然を描いた風景を中心に収集・公開。半世紀以上にわたって培われた4,600点を超えるコレクションを引き継ぎつつ、令和3(2021)年の新県立美術館開館を契機に新たに4つのコレクション・ポリシー(収集方針)を設け、更なる充実を目指している。)

主な所蔵作品は、菱田春草《羅浮仙》明治34(1901)年頃、丸山晩霞《初夏の志賀高原》明治42(1909)年、荻原碌山《女》明治43(1910)年、林倭衛《出獄の日のO氏》大正8(1919)年、村山槐多《尿する裸僧》大正4(1915)年、河野通勢 《裾花川の河柳》、吉田博 《有明山》、池上秀敏 《四季花鳥》など。

昭和41(1966)年に開館して以来、「長野県信濃美術館」の名前で半世紀余にわたって皆様に親しまれてきました。 その本館は、平成29(2017)年秋より建替工事のため休館しておりましたが、新しい建物が完成し4月10日に再開館するのを機に、「長野県立美術館」として再出発いたします。

館長コメント

・以下は美術館HPに掲載されていた館長:松本透さんのコメントです。現代美術についてハッとさせられるようなコメントが載っていましたので転載しておきます。
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・新しい本館は、これまでと同じ善光寺ご本堂東側の城山公園に立地しています。地下1階・地上2階建て、床面積約11,000㎡の建物を、ちょうど2階分(約10m)の高低差のある傾斜地に水平にビルド・インする(作りつける)かたちとなり、桜の名所として知られる東側高台の並木道がちょうど屋上広場の高さになります。建物のルーフトップに上がると、堂塔伽藍の立ちならぶ善光寺周辺のみごとな景色や美しい里山の情景が一望に見晴らすことができます。周囲の景観に溶け込みながら、これまでにない歴史的・自然的風光をお楽しみいただける点で、それはまさに新美術館の基本コンセプトのひとつである「ランドスケープ・ミュージアム」を実現するものといえるでしょう。

 県立美術館の使命は、もちろんコレクションの展示や企画展を通じて、明治・大正・昭和から今日にいたる近現代美術の歩みや広がりを、できるだけバランスよくご覧いただくことにありますが、ここで想い起こしていただきたいのは、100年前に描かれた歴史的名作であっても、制作当時はみな「現代美術」であったことです。美術作品は、どの時代にあっても(少なくとも近代美術の場合は)、ひとりの画家なり彫刻家がみずからの時代状況に果敢に立ち向かうことから生まれた果実であり、それらの声は、異なる時代に生きるわたしたちが聞き届けることによって現代に再生するのです。もちろんそれらを味わうためには、作家の生涯や時代背景に関する美術史的知見が大いに助けになるでしょう。そこに、学芸員や研究者の出番があります。

 これといささか事情が異なるのが、作者がまだ健在の現代美術の場合です。現代の芸術家とは、いうまでもなく観る側のわたしたちと同じ時代の空気を吸い、同じ疑問や課題を抱えながら苦楽を共にしている人たちです。かれらは何をテーマに、何が言いたくて、日々制作しているのか――芸術家とじかに話し合うことを通じてものの見方を広げ、そこに集まった人たちがおのおのの意見の違いから相互に学び合うような場ができたら、なんて素晴らしいことでしょう。職業や地域や年齢や性別、あるいは国籍や宗教のバリアを越えて、互いの異質性(多様性)から何かを学ぶ場として、美術館ほど適した場所はないように思われます。美術は、文学や音楽と同様に、あくまでも作者一人ひとり、そして作品を受けとめるわたしたち一人ひとりの見方、感じ方をベースにした世界だからです。さまざまな鑑賞プログラム(展覧会)や、学習プログラム、交流プログラムを通じて、わたしたちは人と人が――芸術家を中心に――出合い、語り合い、学び合う場となるような美術館をめざして力を注いでいくつもりです。

このホームページは、コレクション展示や企画展、学習プログラムや交流プログラム、各種イベントやワークショップなどのご案内をお届けするほか、当館が所蔵する美術作品や図書資料の検索などにもお使いいただけます。わたしたちはホームページを、情報提供の手段というよりは、美術館という鑑賞-学び-交流の場への第一歩、その入り口と考えていますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。(令和3年4月記 長野県立美術館長 松本透)
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長野県立美術館 4つの基本理念(柱)

鑑賞

・本館および東山魁夷館において収集・保管している作品のコレクション展のほか、企画展や県下各地での移動展を通じて、多くのみなさまが近代美術から現代美術まで、質の高いアートに出会える機会を提供する。

インクルーシブ・プロジェクト

・美術館がだれでも安心してアート出会える場所になることを目指すプロジェクトのこと。だれもが美術館を訪れ、障がいの有無を超えて、アートを体験できるようなさまざまなプログラムを年間を通して開催。初めて訪れる方へ美術館体験のきっかけをつくる『場をひらくプログラム』、視覚による作品鑑賞を中心としてきた美術館での体験を問い直す『感覚をひらくプログラム』があり、サポートする・される関係ではなく、多様な方が出会い、いろいろな感覚をつかいながら作品と出会うことで鑑賞のあり方を考え、作品の新たな魅力を発見するとともに、美術館が垣根のないコミュニケーションの場として機能する新たな可能性を模索しています。

場をひらくプログラム

・障がいのある方のための特別観賞日
→休館日に障がいのある方のためだけの特別観賞日を設定。
・ベビーカーツアー
→小さなお子さま連れの観覧者を対象に学芸員の解説による展示ツアーを開催。
・ギャラリートーク
・トークフリーデー
→小さなお子さまやご家族、友人などと作品の感想を気軽に話しながら鑑賞することができる日を設定。

感覚をひらくプログラム

・アートラボ
→視覚に限定しないさまざまな感覚をつかった作品鑑賞が可能な展示室を設置。
・感覚で楽しむ鑑賞会
→障がいの有無に関わらず、多様な拝見をもった人たちが集まり言葉を交えながら鑑賞するプログラム。
・ひらくツール
→美術館の各施設や機能について見たり触れたりして楽しむ館内設置型の触地図「ふれる小さな長野県立美術館」や、作品や技法にちなんだ素材にふれて楽しむ「ふれるアートカード」、美術館建築に使用された素材を組み合わせた「たてものキューブ」、障がいのある方とそうでない方が一緒に作品鑑賞を楽しむための点字作品ガイド「ふれるコレクション」など各種ツールを設定。

〇詳細は美術館HP「インクルーシブ・プロジェクト ひらくツール」頁を参照:https://nagano.art.museum/hirakutool

学び

・世代を越えて誰もが参加できるプログラムを提供するほか、来館者とアートを結ぶアート・コミュニケータの活動を通じて、アートを楽しく学ぶことができる環境づくりに寄与する。

こどもアートラボ

・絵の具や粘土、木材などの身近な素材を用いたワークショップを毎月開催。

おやこでトーク

・小学生以下の子どもとその保護者を対象として、展示室でおこなう対話による鑑賞プログラム。

おとなもトーク

・解説を聞くのではなく、その日に集まった人たちと自由に会話をしながら作品鑑賞を楽しむプログラム。

ジュニアミュージアムガイド

・美術館に来館した子どもたち、および学校団体に提供する館内の地図や美術館での基本的な約束を掲載した「美術館での過ごし方・楽しみ方」のガイド。

スクールプログラム(学校団体鑑賞)

・長野県内の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の児童生徒、そして先生を対象とした「学校と美術館」、「アートと子どもたち」をつなぐプログラム。

長野版アートゲーム

・作品カードによるさまざまなゲームを通じて、美術を身近に感じることができる貸出専用の鑑賞用キットです。長野県内の美術館、博物館、寺社などに所蔵されている作品から100点を掲載。

博物館実習
アート・コミュニケータ

・美術館を拠点に、アートから生まれるコミュニケーションを大切にしながら、人とアートのつなぎ手として自発的に活動していく存在です。会社員や学生、主婦や退職後の方など、世代や職業を問わず、多様なメンバーが活動。

交流

・県内各地の美術館などの文化施設、美術家のグループ、また地域の観光施設などとアートを介して連携することにより、地域の拠点施設としての役割を担う。

交流展

・県内各地域の美術館と共催し、当館収蔵作品を活用しながら、協働で企画・開催する展覧会。

移動展

・郷土にゆかりのある美術家たちの作品と、美しい信州の自然を描いた風景画を中心に収集したコレクションを県内各地の文化施設において移動展を開催。

オープンギャラリー

・現代作家による公開制作や県内で開催されている地域密着型のアートプロジェクトの紹介、館内に設置される委託制作作品のメイキング展示等、現在進行形の創作活動を随時紹介。

公開制作

・公開制作は作家が一定期間オープンギャラリーに通い、作品を制作し、完成作品の公開を行う企画。1名および1組の作家の現在進行形の創作活動を見ることができ、作家によるイベントやアーティストトークに参加することが可能。

県内アートプロジェクト紹介

・県内のいたるところで実施されている、アートフェスティバルやアートプロジェクト等を紹介。

地域連携事業

・善光寺を中心とした地元地域との交流や連携。

研究

・5,500点余のコレクションを文化資源として調査研究を深めていくとともに、アートに関する最新の調査研究の成果や美術書を中心とした蔵書等のデータベースを公開していく。

→いかがでしょう。美術館につうて4本の基本理念を立てて運営されており、他館でも実施されている取組みももちろんありますが、ここまで網羅的に実施している館は意外と少ないのではないでしょうか。

コレクションについて

コレクション方針

①長野県出身または長野県に関係の深い芸術家の優れた近現代美術作品絵画、彫刻、水彩、素描、版画、工芸、デザイン、写真、映像など。
②美しい山岳風景や精神文化に通じる作品および、「自然」や「自然と人間」を テーマとした優れた近現代美術の作品。
③日本および海外の近現代美術史上の重要作品。
④近現代美術史を理解する上で貴重な、散逸を防ぐべき作品群、および美術資料群。
⑤信濃デッサン館コレクション。
→、平成31/令和元年度の収集事業として、窪島誠一郎氏が上田市東前山に設立した「信濃デッサン館」(1979年開館。2020年より「KAITA EPITAPH 残照館」と改称し再開館。)のコレクションから、村山槐多、関根正二、野田英夫など長野県にもゆかりの深い夭折画家の希少かつ貴重性の高い作品33点を購入、357点が寄贈。長野県立美術館では、これら作品群を「信濃デッサン館コレクション」として展示しています。

主なコレクション

菱田春草《羅浮仙》

丸山晩霞《初夏の志賀高原》

荻原碌山《女》

林倭衛《出獄の日のO氏》

村山槐多《尿する裸僧》

河野通勢 《裾花川の河柳》

吉田博 《有明山》

池上秀畝 《四季花鳥》

池上秀畝 《四季花鳥》

池上秀畝 《四季花鳥》

池上秀畝 《四季花鳥》

…なお、館内には閲覧室もあり、美術図書や展覧会図録、美術雑誌等を収集保存、一般の方へ公開されています。

(参考)長野県立美術館 所蔵品検索:http://jmapps.ne.jp/snnobj/

 

→いかがだったでしょうか、長野県立美術館。私も本館を執筆しながら、自館についてコンセプトを立て、ここまで理路整然と分野や区分毎に丁寧に解説されている館はあまり見たことがなく、その熱心さが伝わってきました。(この感覚…宇都宮美術館以来かもしれません)

長野県、個人の1人の作家に焦点を当てた美術館が日本で一番多い県です。単純に長野県出身の作家が多いだけではなく、長野県の魅力(木曽・飛騨・赤石をはじめとする日本有数の美しい山・川・湖、そしてその風景)に多くの画家たちが魅了されたことに起因するのかもしれません。

なかなか1度ではまわりきれないとは思いますが、皆さんも長野県を訪れた際は、本ブログを参考にしていただき、自分のお気に入りの館をつくってみてはいかがでしょうか。

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