浮世絵と東洋陶磁が特徴、ミシュラン2つ星の観光施設としても機能 山口県立萩美術館・浦上記念館

山口県

こんにちは。現内山口県の美術館をご紹介しています。実は山口県、新潟県や群馬県同様に県内に2館美術館を持っています。こういう言い方すると怒られるかもしれませんが…県人口130万人、新潟県ほど県の面積も大きくない中で2館持っているのは何か理由があるかもしれません。どんな理由があるのか…そんなことを思いながらご紹介です。

このブログで紹介する美術館

山口県立萩美術館・浦上記念館

・開館:1996年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県観光協会HPより転載)

・場所
山口県立萩美術館・浦上記念館 – Google マップ

浮世絵と東洋陶磁が特徴、ミシュラン2つ星の観光施設としても機能

・山口県の北浦地域において、新しい地域文化振興の発信拠点として、浮世絵、東洋陶磁、陶芸を核とした高い専門性と機能を有する特色ある美術館。萩市出身の実業家、浦上敏朗氏(1926-2020)が収集した浮世絵、東洋陶磁などの寄贈を契機に1996年に開館しました。2010年には、400年の歴史を有する萩焼をはじめとする陶芸の振興を目的に新たに陶芸館を増築。歌川広重、葛飾北斎、歌川国芳らの浮世絵版画約5,500点のほか、中国・朝鮮などの東洋陶磁約600点、近現代の陶芸・工芸作品約800点(2021年現在)を収蔵、外国人観光客向旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」では、日本三名橋のひとつ「錦帯橋」と並び、山口県内最高ランクの二つ星の観光施設として紹介されいるそうです。浮世絵と東洋陶磁の常設展を軸に、関連のある企画展(特別展示)を年間数回開催しています。

主なコレクション

・浮世絵、東洋陶磁、陶芸を核としたコレクションです。美術館HPはユニークで各々の「鑑賞のポイント」についても解説されています。鑑賞ポイントを丁寧に解説しているのは珍しい取組みだと思います。こちらも本ブログに掲載しておきます。

浮世絵

・浦上コレクションを核に、チコチン・コレクションや寄贈品を含め、約5,500点の浮世絵版画を収蔵。世界に3点しかない葛飾北斎の美人大首絵「風流無くてなゝくせ 遠眼鏡」や「富嶽三十六景」、歌川広重の「東海道五十三次之内」をはじめ、初期の菱川師宣から、錦絵創始期の鈴木春信、黄金時代の鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽、後期浮世絵の歌川国貞、歌川国芳など、江戸時代を代表的する浮世絵師の名品を有しています。また、月岡芳年、豊原国周、楊洲周延、三代歌川広重など、幕末から明治時代に制作された作品も多数所蔵し、世界的にも有数なコレクションを形成しています。

<葛飾北斎>

<喜多川歌麿>

<東洲斎写楽>

浮世絵とは

・浮世絵は浮世(当世)の絵で、江戸時代から明治時代にかけて、当時の世相や風俗、流行のものを描いた作品。江戸時代の文化の象徴とされた歌舞伎、吉原を題材とした役者絵と美人画が主要なジャンル。他にも、相撲絵、風景画、武者絵、戯画、風刺画など、さまざまな題材が描かれています。作品は絵師が直接筆で描いた肉筆画とよばれる掛軸、屏風、画帖と、安価で最も大量に制作できる木版画を中心に、初期の墨摺絵から錦絵(多色摺木版画)へと彫摺技術の発展とともに色鮮やかで芸術性の高い作品も作られるようになります。ヨーロッパの印象派の画家たちに影響を与えたことで世界的に高く評価されており、日本文化を代表する作品群です。

浮世絵 鑑賞のポイント

(以下は美術館HPの解説文です)
・浮世絵は当時の風俗、世相、流行が描かれているため、今日では理解できない情報が多く含まれています。まずは、色鮮やかに摺られた色彩や墨線の繊細さなど、木版画の美しさを鑑賞していただけたらと思います。それから、何が描かれているのか、探していくことが、浮世絵を楽しむ方法の一つかといえます。役者絵や美人画は当時実在していた歌舞伎役者や遊女、芸者の姿が描かれており、彼らは時代の最先端をいくファッションリーダーでもありました。着物の柄や髪型、役者や美人たちの容貌も時代によって変わり、どう変化していくのかも鑑賞方法の一つでもあります。浮世絵が版行されたのは、版行すれば売れるという需要の背景があったからで、最も関心のある情報が絵の中に描かれています。

東洋陶磁

・浦上敏朗コレクションをもとに、松村實コレクションと染野コレクションなどが加わり約570点を所蔵。前近代における中国・朝鮮・日本の陶磁器が中心で、中国陶磁は新石器時代から明時代まで、朝鮮陶磁は高麗時代と朝鮮時代、日本陶磁は江戸時代のものでそれぞれ構成されています。
<藍三彩 宝相華文 三足盤>

<青花 月兎文 栗鼠耳角扁壺>

東洋陶磁とは

・東洋陶磁は原料粘土や焼成方法の違いによって、土器、陶器、磁器に分類され、時代や生産地の文化の違いを反映し、多様な展開を遂げました。彩陶や黒陶などの古代土器をはじめ、青磁や白磁、青花、五彩と多彩な発達を遂げた中国陶磁。中国の影響を強く受けながら独自の美質を発揮した高麗青磁や朝鮮白磁、日本の茶の湯文化にも取り込まれた質朴の美感をたたえる粉青沙器などの朝鮮陶器。そして、中国や朝鮮の影響を受けながらも、日本人の美意識の一貫性が感じられる日本陶磁。東アジアの歴史と文化を映し出した陶磁器の豊かな造形美が印象的です。

東洋陶磁 鑑賞のポイント

(以下は美術館HPの解説文です)
・東洋陶磁の鑑賞で一番はその美しさや雰囲気を楽しむことですが、その陶磁器の完成までには粘土から形をつくり、窯で長い時間をかけて焼成という完成までには手間のかかる工程を経ています。作品を前に製作工程を紐解くのも鑑賞の一つです。また、ある地域で素晴らしい出来の陶磁器が完成し、憧憬の的となり広く波及することもあれば、秘められた技として限られたものとなることもあります。その違いは陶磁器を取り巻く環境(社会など)に起因することが多いですが、そのように当時の社会にまで思い巡らし楽しむことも面白いでしょう。いつ、どこで、どのようにして作られたのかなど、作品がもつ多くの情報に触れることで東洋陶磁は一層面白くなります。

陶芸

・文化勲章受章者や文化功労者、重要無形文化財保持者(人間国宝)、山口県指定無形文化財保持者の作品をはじめ、山口県在住や山口県ゆかりの陶芸家たちの作品など、約720点の近現代陶芸・工芸作品・資料を収蔵。とくに近現代萩焼に関しては太平洋戦争前後から現代までの茶陶や花器、オブジェ作品の代表的な作品を充実させています。
<三輪壽雪(十一代休雪)>

<秋山 陽>

<金子 司>

陶芸とは

・粘土や岩石を加工して長石や石英などを配合した造形素材を、加熱によって高温化学反応をおこさせた焼成したもの。この陶磁器について美術的観点から評価が加えられた場合、陶芸という概念(考え方)が成立するそうです。また、産業から離れた個人作家による芸術活動としての陶磁器づくり自体も陶芸と呼ばれます。日本においては、1920年前後から芸術創作としての陶磁器づくりの思潮が広まり、民芸運動の影響や昭和初期における桃山茶陶再興の動き、太平洋戦争後の前衛陶芸運動などをへて、陶芸という呼称がしだいに定着。現在、陶芸とは、伝統工芸、創作工芸(日展系)、クラフト、オブジェを含めて、詩人や音楽家、舞踊家、画家の行為と同じように、陶芸家自身の表現を目的とする明確な芸術意識によって制作された、陶磁工芸・陶磁芸術を指します。

陶芸 鑑賞のポイント

(以下は美術館HPの解説文です)
・陶芸は、作家自身の表現を目的とする明確な芸術意識による制作です。現在は器形だけではなく、純粋な立体造形や陶像、陶壁、インスタレーション(場所や空間全体を作品として体験させる表現手法)など、現代美術とも通じる多様な表現が現れています。このような陶芸作品を、たんなる道具として解釈しようとするなどは論外ですが、「用の美」という工芸観や「時代精神」、「地域性」、「生活感情」といった観点から固定的に眺めて批評することもいまや意味を失いつつあります。陶芸は、素材と技術のもとに絶えず自らを見つめる行為によって表現される造形なのです。その過程で陶芸家が自己をいかに真摯に受けとめてきたかを感じ取るための、素直なまなざしと豊かな想像力が私たちに求められてきています。

(付録)浦上敏朗氏とは

・以上見てきたように、山口県立萩美術館・浦上記念館の創設に大きく関わった浦上敏朗氏。そのコレクションがあったからこそ山口県は2つの県立美術館を持つことができたと言っても過言ではないかもしれません。最後にわかる範囲で浦上敏朗氏の経歴を載せて終わりたいと思います。

<浦上敏朗氏 略歴>
大正15年(1926年)、萩市橋本町生まれ
昭和18年(1943年)、県立萩中学校卒業
昭和22年(1947年)、山口経済専門学校(現山口大学経済学部)卒業
昭和39年(1964年)、清久鉱業株式会社社長
昭和48年(1973年)、株式会社ジャパンアートコンサルタンツ社長
昭和54年(1979年)、山口県立美術館美術品収集審査会委員
昭和56年(1981年)、日本浮世絵商協同組合理事長、同年、日本浮世絵協会(現国際浮世絵学会)常任理事
平成3年(1991年)、東洋陶磁学会監事(現在:名誉会員)
平成8年(1996年)、山口県立萩美術館・浦上記念館名誉館長

<受賞歴等>
平成6年(1994年)、紺綬褒章、同年、萩市名誉市民
平成8年(1996年)、山口県選奨(芸術文化功労者)
平成13年(2001年)、地域文化功労者表彰(文部科学大臣表彰)
平成18年(2006年)、山口県文化特別功労賞
令和2年  (2020年)、永眠(享年94歳)

→大正、昭和、平成、令和と4時代を生き抜いた、山口県内外の文化発展に寄与された大変な方だったのですね。

いかがだったでしょうか。この山口県立萩美術館・浦上記念館、実は「観光コンシェルジュ」と称したページを開設し、山口県の観光拠点としても尽力されています。なんと、Google Mapsストリートビューにて館内・外観をご覧いただくこともできるそうです。(山口県立萩美術館・浦上記念館 観光コンシェルジュ:https://www.hum.pref.yamaguchi.lg.jp/gotohagi/index.html

そんな、県内2館のうち萩市に立地する本館、萩市観光の拠点に活用されてみてはいかがでしょうか。

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