大阪~神戸の大動脈、茶の道をまい進した田園都市創設者が集めたコレクション 大阪:逸翁美術館

大阪府

こんにちは。今日ご紹介する美術館、大阪~神戸という大動脈を結ぶ阪急電鉄、そしてそれに関する住宅地経営などの不動産事業、阪急百貨店の小売業、東宝や宝塚歌劇団、過去は阪急ブレーブスの興行業など、あらゆる事業を展開した関西の大実業家が集めたコレクションです。それでは早速。

このブログで紹介する美術館

逸翁美術館

・開館:1957年
・美術館内・外観[以下画像は美術館HP、府・市観光協会、(公財)阪急文化財団より転載]
 
・場所
逸翁美術館 – Google マップ
→大阪府池田市にあります。兵庫県川西市との県境です。

大阪~神戸の大動脈、茶の道をまい進した田園都市創設者が集めたコレクション

・阪急電鉄をはじめ多方面で活躍する実業家:小林 一三氏(1873年〜1957年)の雅号「逸翁」を冠し、昭和32年(1957年)に開館。逸翁が収集した美術工芸品5,500件を所蔵。20歳代の頃から美術品の収集を始め、その審美眼は茶の道に入ることでさらに磨かれていったそうです。コレクションは、古筆、古経、絵巻、中近世の絵画(特に蕪村・呉春・円山四条派の作)、日本・中国・朝鮮・オリエント・西洋を含む陶磁器、日本・中国の漆芸品と幅広く、翁は茶会においてこれらを披露しつつ、一般公開も計画していた矢先、実現を前に他界。本美術館は、その遺志を継いで設立されたものです。

主なコレクション

重要文化財、重要美術品

・国指定の重要文化財は15件、重要美術品は20件。(22年12月現在)

重要文化財

  

重要美術品


 
  

書跡

  

絵画

   

工芸

  

茶道具

     ←これ茶入といいますが、茶道具の中でも最高位とされており、昔はこれ1個でお城が買えたとか…

小林一三とは

・そんな茶道具をはじめ、名だたる日本美術をコレクションした小林一三氏、どんなに富を得ても一括で購入するようなことはせず、1点1点自分の目で確かめてから購入していったそうです。(驚)
そのため、恐らく現代の時代に小林氏が生きていたとしたら、全てのコレクションについて「どこがどのように気に入ったから購入した」という理由を事細かに言えるはずです。やはり関西のみならず日本経済の大実業家は数寄もののレベルも桁違いですね;

ところでそんな小林一三氏…現代にまでファンを魅了する宝塚歌劇団とこの逸翁美術館のコレクションをした人物が同一だということに不思議に思われた方も少なくないのではないでしょうか。(だってタカラジェンヌの世界観と古美術って全然違いますからね!)

…私はここに小林氏のすごさ、その価値観・思想感の懐の深さがあると考えています。いくつか小林氏について調べた中で以下の逸翁美術館 館長さんがその歴史について一部紹介している動画がありましたので、少し長いですがお時間ある方はぜひご覧ください。

この動画は主に小林一三氏が関西のみならず、東京の田園都市つくりにも多大な貢献をした姿が述べられていますが、現在の渋谷~横浜間を結ぶ東急東横沿線の都市開発を担っていた当時の田園都市開発㈱当時の上層部と初めて会って早々と社長の打診を受けるなど小林氏のカリスマな一面が垣間見れるのですが(結局阪急の経営が忙しく断るも相談役には就任)、ここで私が印象的だったのはその成功するかしないかも分からない遠く関東の田園都市構想のために「毎週金曜夜に夜汽車に乗って移動し、翌日経営会議が終わるとこれまた夜汽車に乗って関西に帰宅」していたその小林氏の義理深さや情熱でした。

他にも「渋沢栄一や矢野恒太(第一生命創業者)」などの大御所のご意見番だけで計画がとん挫しかかったときには現場感覚に優れた五島慶太氏(東急創始者)を招聘したり、東京電燈の代表に就任した際は1つ1つ発電所をまわるなど、現場感覚にも優れ、また、ホテル経営のアドバイスを求められたときには富裕層だけを狙うのではなくその富裕層に仕える中流階級向けのホテルつくりを推奨するなど、社会のニーズにも合致させるような肌感覚をもっていたことは当時の大実業家と呼ばれる人たちを比較しても小林氏にしか持ちえない特長だったのではないかと思います。

そんな小林氏であったからこそ、自らの趣味嗜好の沿った逸翁美術館コレクションのようなものばかりではなく宝塚歌劇団のような大衆芸術にまで幅広く精通することはできたのではないでしょうか。やはりその振り幅の広さは(あまり知られていませんが)小林一三氏が山梨県巨摩郡河原部村(現:韮崎市)に生まれ、すぐに母が死去、父とも生き別れながらも勉学に励み慶應義塾に入塾した生い立ちにもよるものだと個人的には感じています。

そんな小林一三こと逸翁に出会える美術館。皆さんも関西に行かれた際はぜひ足を運んでみて下さい。きっと小林氏の私たちの心をギュッと掴んで離さない懐の深さに気づくのではないかと思います。

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