「金属工芸品」と「ドラえもん」のふるさと 富山:高岡市美術館、藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー

アートな場所

富山県続いては、富山市から少し移動し高岡市です。
ここは世界を席巻した2つの偉大な足跡を持っています。1つは高岡銅器として有名な(国内シェアの90%以上を占める)鋳造の町、そしてもう1つは高岡市が生んだ偉大な漫画家「藤子・F・不二雄」さんです。ちなみに小学校によくある二宮金次郎像や新年に響く除夜の鐘、その多くが実は高岡銅器でつくられています、ご存知でしたでしょうか?
そんな高岡市にある2つの顔をもつ美術館、ご紹介です。

このブログで紹介する美術館

高岡市美術館

・開館:1994年 ※但し、その源流は古く、1951年(昭和26年)に開催された高岡産業博覧会の美術館パビリオンとして、高岡古城公園内に建設されたことが始まり。これは、第二次世界大戦後北陸では初で、全国的にも同年11月に開館された鎌倉の神奈川県立近代美術館や高松市美術館とならび、第2次世界大戦後もっとも早く設立された公立美術館の一つでした。野見山暁治さんのブログ記事でも書きましたが、当時、国内の美術館は東京都美術館、京都市美術館、大原美術館など数館を数えるのみで、これが美術の歴史にとっていかに貴重であったのか想像に難くありません。

・美術館外観(以下画像は美術館HP、県観光協会HPより転載)

・場所
高岡市美術館 – Google マップ

高岡銅器とは

・美術館自体の説明に入る前に、ここで日本を代表する金属工芸品である「高岡銅器」について少し触れておきたいと思います。

高岡銅器の歴史

・高岡銅器とはおよそ400年前からつづく鋳物の町「富山県高岡市」でつくられる金工品(金属を加工してつくられる工芸品)の総称。名前に「銅器」とあるが、真鍮や青銅などの銅合金以外にもアルミ合金・錫・鉄・金・銀などの素材でも、ものづくりが行われている。高岡銅器の始まりは江戸のはじめごろ。加賀藩の2代目藩主であった前田利長が、1611年に高岡の新たな産業として金森弥右衛門、喜多彦左衛門、藤田与茂、金森与茂、金森与兵衛、金森藤左衛門、般若助右衛門ら7人の鋳物師(いもじ。鋳造を行う職人)、刀装彫金師(刀のかざりの職人)を招いて鋳物工場をひらかせました。その後も加賀藩は、鋳物師を支援します。

高岡で鋳物づくりがはじめられた当初は、農作業用の鍬(くわ)や鋤(すき)、鍋や釜など鉄製の日用品が主につくられていました。江戸中期以降になると、銅器に美術性の高い彫金(金属の表面に模様を彫る技術)を施したもの、仏具や梵鐘、灯篭や大仏のような大型のものもつくられるようになります。

明治以降には花瓶、キセル、火鉢などもつくられるように。彫金の名工が誕生したのも明治の頃。廃刀令により刀装彫金の需要がなくなると、失職した金沢の優秀な職人が高岡に集まり、それに刺激を受けた高岡の職人たちが技術を向上させます。

1872年には明治政府は地方産業の救済にと、翌年(1873年)に開催されるウィーン万博博覧会への出品物を金沢と高岡に依頼し、競争させます。その後、フランスやアメリカで開催された万博にも高岡から作品が出品され、高岡銅器の名は世界にも知られるようになっていきます。

第二次世界大戦後には日用品の需要拡大、加えて1955年ごろから始まった高度経済成長の波にのりさらに成長。1975年(昭和50年)には国の伝統的工芸品に指定されます。高岡では、複数の製作所や職人が工程を分担してつくるのが基本で、ひとつの町だけで分業制が成り立つのは珍しいということです。1990年時点では、産地には461軒もの業者があり、その販売額は全国の銅器の90%以上と言われ国内最大の規模を誇っています。
※「中川政七商店の読みもの」から抜粋:https://story.nakagawa-masashichi.jp/craft_post/121061

高岡銅器はこんな場所にも⁈

・銅器で日本一の産地である高岡の製品は日本人なら誰もが知っているあの場所や、あのシンボルにも使われているそう。ここでは一部ご紹介。
①東京・浅草寺

②二宮金次郎像

→「なぜ背面…」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの背面の細い枝ぶりを表現できるのは、溶かした金属を「型」に流し込んでつくる鋳込みにおいては相当な技術が必要だとか。今度、二宮金次郎像を見かけたら背面から眺めてみて下さい。
③成田山の新勝寺、比叡山の延暦寺、京都の三十三間堂、沖縄の平和記念堂などの梵鐘

→いかがでしょう。金工という少し地味めなアート表現ですが、これがいかに凄いのかが少しでも伝われば幸甚です。では美術館紹介に戻ります。

「金属工芸品」と「ドラえもん」のふるさと

・高岡市は、ご覧の通り、美術、工芸の分野で、多くの作家と作品を生み出してきました。高岡市美術館は、その伝統に基づき、金属工芸ならびに漆芸、絵画、彫刻など、あらゆる美術・工芸分野から郷土にゆかりの深い作家や、郷土美術・工芸に大きな影響を与えた作家の作品を系統的に収集・保存しています。とりわけ、金属工芸、金属造形については、その多様な展開がわかるよう、全国的・国際的な視野に立ち、幅広く収集。同時に、将来性のある若手作家の作品も収集するなど、特色あるコレクションを目指しているそうです。

また、石ノ森章太郎さんのブログ記事でも少し触れましたが、富山県高岡市、偉大な漫画家の生誕の地でもあります。そう、トキワ荘の住人にしてドラえもんの生みの親、「藤子・F・不二雄」さんです。

※写真は高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリーHPより

実は高岡市美術館の館内に藤子・F・不二雄ふるさとギャラリーが設置されており、混沌…いや、高岡市美術館にいけば金属工芸品とドラえもんが楽しめるという二度おいしい構造になっているのです。

主なコレクション

金属工芸品

 
 
 
 

藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー

→どこでもドアがある…


→なにげに高岡の金属加工でつくられたドラえもんって全国でここだけでは…。これは貴重かも。

…なぜか最後は混沌とした面白さがありました。金属工芸品を観に行ったついでにドラえもんが学べるというべきか、ドラえもんを観に行ったついでに金属工芸品が学べるというべきか…いずれにしろ高岡が誇る2つのアートが織りなす相乗効果を楽しめる場所であることには変わりありません。もしかしたら、藤子・F・不二雄さんも高岡で生まれ、幼少時代からその高岡の銅器職人さん達の仕事ぶりを傍で見ていたからこそ、トキワ荘での苦楽を仲間とともに過ごせたのかもしれませんね。

そんなことを考えながら今日はここまでにしたいと思います。日本の公立美術館としてもその源流は古く貴重な美術館です。そんな高岡市美術館、皆さんもぜひご来館ください。

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