旧朝香宮邸として建てられたアール・デコ様式の建物空間に緑豊かな庭園が調和 東京都庭園美術館

東京都

 こんにちは、マウスです。
 今日ご紹介の美術館、こちらも公立(都立)の美術館ですが、他の公立館とは一風変わった特徴を持っていることでも有名です。

 アール・デコ様式の建物に、都内とは思えないのんびりした時間が流れる庭園を持っており、私も都内に住んでいるときは半日くらいここでただひたすらにのんびりと過ごした記憶があります。
(都内…特に23区内は色々な美術館がありますがここほどのんびりできるところはあまり思い浮かびません)

 そんな立派な建物にのんびり庭園の美術館、早速みていきましょう。

このブログで紹介する美術館

東京都庭園美術館

・開館:1983年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、都、観光協会HPより転載)


→立派です。。

・場所:東京都庭園美術館 – Google マップ

旧朝香宮邸として建てられたアール・デコ様式の建物空間に緑豊かな庭園が調和

・昭和8(1933)年に旧朝香宮邸として建造、アール・デコ様式の建物の空間を活かし、緑豊かな庭園が調和した美術館として昭和58(1983)年に開館。平成26(2014)年に新館が完成し、平成27(2015)年には本館、正門、茶室等が国の重要文化財に指定。「歴史的建造物」「美術作品の鑑賞」「緑豊かな庭園」を同時に楽しめる美術館として、ユニークな創造発信の場となることを目指して運営されています。

旧朝香宮邸とは

・朝香宮家は久邇宮朝彦親王の第8王子鳩彦王が1906年[明治39]に創立した宮家。
 鳩彦王は、陸軍大学校勤務中の1922年[大正11]から軍事研究のためフランスに留学しますが交通事故に遭い、看病のため渡欧した允子内親王とともに、1925年[大正14]まで長期滞在することとなります。

 当時フランスは、アール・デコの全盛期で、その様式美に魅せられた朝香宮夫妻は、自邸の建設にあたり、フランス人芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計を依頼するなど、アール・デコの精華を積極的に取り入れました。

 また建築を担当した宮内省内匠寮の技師、権藤要吉氏も西洋の近代建築を熱心に研究し、朝香宮邸の設計に取り組みます。さらに実際の建築にあたっては、日本古来の高度な職人技が随所に発揮、朝香宮邸は、朝香宮夫妻の熱意と、日仏のデザイナー、技師、職人が総力を挙げて作り上げた芸術作品となっています。

 現在は美術館として使われていますが、内部の改造は僅少、アール・デコ様式を正確に留め、昭和初期の東京における文化受容の様相をうかがうことができる貴重な歴史的建造物として、国の重要文化財に指定されました。

※久邇宮朝彦親王(くにのみや あさひこしんのう、文政7年1月28日〈1824年2月27日〉-明治24年〈1891年〉10月25日 )とは…日本の皇族。第125代天皇明仁の母方の高祖父(香淳皇后(昭和天皇后)の曽祖父):伏見宮邦家親王の第4王子。香淳皇后(昭和天皇后)の祖父であり、明仁上皇の曽祖父、今上天皇の高祖父にあたる。

(参考)

→なお、館内の様子は以下のURLから参照できます。
https://www.teien-art-museum.ne.jp/museum/index04.html
 

…率直に昔の皇族の方の建物ってすごかったんだな…と思われた方もいるかと思いますが、これ前述の通り、朝香宮夫妻・日仏のデザイナー・宮廷技師・職人などの熱意が相当なものであったからこそ出来た賜物で、恐らく現代において同じくらいお金をかけたとしても同様の建物はできないのではないかというのがマウス個人的な見解です。

なお、美術館HPには「旧朝香宮邸内装にかかわった人々」として以下の重要人物5人(と1部署)が掲載されていましたので、その紹介文とともに載せておきます。

宮内省内 匠寮(たくみりょう)

・宮内省所管の建築から庭園、土木までの設計管理を司る部署で、朝香宮邸もこの内匠寮が設計と管理を行った。この時期の工務課は課長の北村耕造(1877–1937)のもと、建築係、土木係、庭園係、機械係に分かれており、技師と各係の技術者は合わせて100名を超えていた。朝香宮邸の建設では基本設計を洋行帰りの建築係技師、権藤要吉(1895–1970)が担当した。ほかにラジエーターカバーやモザイクをデザインした大賀 隆、照明や家具をデザインした水谷正雄など、優秀な技手も揃っていた。彼らは秩父宮邸(1927竣工)、李王家邸(1929竣工)、 高松宮邸(1931竣工)などを手がけた。また、朝香宮邸と同時期に建てられた東京国立博物館本館(計画案 渡辺仁1937竣工)も宮内省内匠寮が実施設計を行った。 住居と事務所部分を一体化し、「ロ」の字に構成した朝香宮邸の基本プランは内匠寮が東伏見宮邸(1925竣工)で設計したものが下地になった。

アンリ・ラパン

・画家、室内装飾家、デザイナー。フランス・パリ生まれ。国立美術学校で新古典主義の画家ジャン=レオン・ジェロームに師事し、1898年よりフランス芸術家協会のサロンに絵画を出品していた。1900年頃には家具や装飾品を出品しはじめ、次第に装飾芸術の世界でその才能を発揮するようになる。建築、室内装飾、家具、壁画、ステンドグラス、陶磁器など幅広い分野で、贅沢な素材と細やかな技巧、豊かな色彩を特徴とするラパンのスタイルが注目された。1920–34 年にかけて国立セーヴル製陶所の芸術顧問、および装飾美術家協会の副会長に就任。1925年のアール・デコ博覧会では、《フランス大使館》や《国立セーヴル製陶所》など、数々のパヴィリオンの企画やデザインを担当した。朝香宮邸では、大広間、大客室、小客室、次室、大食堂、殿下書斎および居間の全7室の内装デザインを手がけた。仕事仲間であった同時代の作家たちの作品を効果的に取り入れながら、自らも壁画を描き、「香水塔」や家具をデザインするなど、調和のとれたアール・デコの空間を創り上げた。

ルネ・ラリック

・ジュエリー・デザイナー、ガラス工芸家。シャンパーニュ地方マルヌ県アイ生まれ。素材の価値よりも作品の造形性を重視し、半貴石やガラス、角材などを積極的に用いて、植物、昆虫、裸婦などをモチーフとした象徴的なジュエリーを作り出し、アール・ヌーヴォー・ジュエリーのスタイルを確立した第一人者。その作品は1900年のパリ万国博覧会で絶賛された。1906年には香水商コティから香水瓶のデザインを依頼され、これを契機にガラス工芸に着手。芸術性が高く、なおかつ量産にも応えることのできる型押技法や型吹き技法で、カーマスコットなどの小品からモニュメンタルな建築用の大作までを手がけた。1925年のアール・デコ博覧会場の中央にガラスの噴水塔《フランスの水源》を制作。その傍らには自身のパヴィリオンを出展するなど、アール・デコのガラス工芸家としての絶対的な評価を築いた。朝香宮邸のために正面玄関ガラスレリーフ扉をデザイン。大客室と大食堂のシャンデリアとしてそれぞれ《ブカレスト》、《パイナップルとざくろ》を提供した。(→参照:箱根ラリック美術館

イヴァン=レオン=アレクサンドル・ブランショ

・彫刻家、画家。フランス・ボルドー生まれ。美術を志して大学を中退し、ボルドー美術学校で彫刻を学んだ。その後パリに移り、1893年頃よりフランス芸術家協会の会員となりサロンへの出品を始める。1930年には国立セーヴル製陶所の彫刻部門に籍を置き、33年には同所付属美術学校にて講師を務めた。朝香宮夫妻の仏滞在期に允子妃の水彩画教授をつとめたことから、宮邸の新築に関わったとされる。朝香宮邸内には、大広間の大理石レリーフ《戯れる子供たち》、大食堂壁面のレリーフが残されており、BLANCHOTのサインが確認できる。

マックス・アングラン

・画家、ガラス工芸家。フランス・ドゥ=セーヴル県ブレシュイール生まれ。両大戦間期は、当時の妻で制作のパートナーでもあったポールと共に、ガラスを素材とした室内装飾を数多く手がけ、ノルマンディー号ほか豪 華客船の内装にも名を連ねた。初期の作品では神話や自然のモチーフなど、具象的な表現が多く見られるが、第2次大戦後は次第にシンプルでモダンな表現に向かった。また、ステンドグラス制作においてもフランスを代表する存在となり、オート=ノルマンディー地域圏イヴトの聖ペテロ教会(1956年)ほか、多くの教会を手がけた。朝香宮邸では大客室及び大食堂の扉のエッチング・ガラスを手がけた。

レイモン・シュブ

・鉄工芸家。パリ生まれ。エコール・ブールと国立装飾美術学校で学ぶ。1911年から3年間エミール・ロベールのもとで修行の後、1919年、アトリエ・ボードレル・エ・ロベールのディレクターとなる。軽快な曲線と幾何学模様のバリエーションには際限がなく、その作品は両大戦間期に作られたイル=ド=フランス号をはじめとする主要な豪華客船や数多くの建築の室内空間、ファサードを飾った。1925年のアール・デコ博覧会ではラパンの《フランス大使館》、リュールマンの《コレクショヌール館》の双方に加わる。1937年、「現代生活における芸術と技術の国際博覧会」の《金属のパヴィリオン》では巨大なファサードを制作、名声を不動のものにする。朝香宮邸では大客室ガラス扉上のタンパン(半円形の飾り部分)を手がけた。

(参考)東京都庭園美術館コレクション ページ:https://www.teien-art-museum.ne.jp/collection/
※建物公開事業に活用するため、旧朝香宮邸やアール・デコ様式との関連を有する美術品や資料を収集・保管。以下のページでは、東京都庭園美術館が収集・保管している美術品・資料等を紹介しています。「Tokyo Museum Collection(東京都立博物館・美術館収蔵品検索)」では、6つの都立ミュージアムが所蔵する資料・作品の横断検索ができます。(In its quest to put the Former Residence of Prince Asaka to its best possible use, the Tokyo Metropolitan Teien Art Museum is engaged in creating and maintaining a collection of artworks and documents pertaining to Art Deco and the Residence itself. The Collection is a database listing the materials and artworks in the Museum’s collection.)

そんな流麗な建物と広大な3つのお庭(芝庭、西洋庭園、日本庭園)をもつ東京都庭園美術館、皆さんもぜひ足を運んでみて下さい。

(マウス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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