「恵比寿映像祭」を毎冬開催、写真・映像の黎明期からコレクション数は約4万点、「写真・映像とは何か」を追求し続ける専門館 東京都写真美術館

東京都

こんにちは。今日は写真専門の美術館です。
 これまでのブログでご紹介してきた写真関連の美術館…鳥取:植田正治写真美術館、静岡:クレマチスの丘(IZU PHOTO MUSEUM)、山形:土門拳記念館などがありました。

 IZU PHOTO MUSEUMは「19世紀以降変容してきた写真・映像」を中心に展示されていますが、他の館は写真家1人の業績や作品をご紹介する美術館が多いようです。

 そんな中、今日ご紹介の美術館は公立(都立)でありながら、(恐らく)日本で唯一の写真専門の美術館として写真・映像の黎明期から現代に至るまで約4万点近いコレクションを有しており、体系的に写真の歴史が学べるのは日本で唯一ここだけと言っても過言ではないかもしれません。

 東京は各芸術表現の分野における親玉的存在がいくつもあると前に記載しましたが、まさに写真の美術館の親玉と言ったらここだといえると思います。早速みていきましょう。

このブログで紹介する美術館

東京都写真美術館

・開館:1995年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、都、観光協会HPより転載)

・場所:東京都写真美術館 – Google マップ

「恵比寿映像祭」を毎冬開催、写真・映像の黎明期からコレクション数は約4万点、「写真・映像とは何か」を追求し続ける専門館

・1995年(平成7年)の開館以来、「写真・映像とは何か」という根本的な問いを追求し続けている日本で初めての写真と映像に関する総合的な美術館。写真・映像の多様な性格や表現を幅広く紹介し、写真・映像文化に親しんでもらえるよう工夫した取組みを展開し、これまで累計約800万人を超える来館者を記録。(2023[令和5] 年3月現在)

 東京都写真美術館が収蔵する作品は、37,312点(2023[令和5]年3月末現在)におよび、世界的にも希少な写真・映像の黎明期を伝えるものから現代作家による最新作までを体系的に網羅しているのが特徴です。こうした収蔵作品をはじめ多様な写真・映像表現を紹介する展覧会を開催し、学芸員の専門性を活かした独自の企画を年間約20本実施されています。

 さらに、映像とアートのフェスティヴァル「恵比寿映像祭」では、映像分野における創造活動の活性化をミッションに、近隣の方々とともに多彩な事業を展開、冬の風物詩として定着しました。美術館HP上では館長が「国内はもとより世界に向けて優れた写真・映像文化を創造・発信するとともに、地域に親しまれる文化施設として機能することにより、東京の文化振興に寄与していく所存」とコメントされています。

東京都写真美術館の基本的性格

①写真の総合的専門美術館として、収集、展示、保存、修復、調査、研究、普及などを含めた総合的な活動を行う。
②写真表現の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘し、新しい創造活動の展開の場とする。
③写真芸術・文化を普及するために、人々が気軽にすぐれた写真作品を鑑賞し、学ぶとともに、美術館の諸機能を積極的に享受できるような、開かれた施設とする。
④写真に関するあらゆる情報を集約するとともに写真を含む映像全般に関する調査・研究を行う施設とする。
⑤日本における写真文化のセンター的役割を果たすとともに、国際的な交流の拠点となることを目指す。
⑥ワークショップなど参加型機能をもつとともに、人々の創作活動をサポートする施設として、国内外の写真作家や人々が広く交流しうる場を備えた施設とする。
⑦歴史的な映像文化に関する展示と最先端の映像表現を体験的に享受できる「映像工夫館」を併設し、映像メディアの発達の歴史を学ぶとともに多様な表現の可能性を探る。
 ※ 「映像工夫館」では現在「地下1階展示室」として映像展をはじめ各種展覧会を開催。

→写真だけでなく、映像メディアの発達の歴史や国際的交流の拠点としての役割を目指しているところが特徴的ですね。

収集方針

[1989(平成元)年2月3日(昭和63年度)策定]
・(オリジナル・プリント)を中心に、写真文化を理解する上で必要なものを、幅広く収集する。

写真作品

①国際的な視野に立って、国内外の芸術性、文化性の高い作品を幅広く収集する。 写真の発生から現代まで、写真史のうえで重要な国内外の作家・作品を幅広く、体系的に収集する。
②歴史的に評価の定まった作品を重視するとともに、各種の展覧会等で高い評価を受けた作家・作品発掘に努め、現代から未来を展望した収集を行う。
③東京を表現、記録した国内外の写真作品を収集する。
④日本の代表的作家については重点的に収集し、その作家の創作活動の全体像を表現し得る点数を収集する。
⑤基本方針「写真作品」5. に基づき作品を収集した重点作家(17名、五十音順)
→秋山庄太郎、石元泰博、植田正治、川田喜久治、木村伊兵衛、桑原甲子雄、白川義員、土田ヒロミ、東松照明、長野重一、奈良原一高、濱谷浩、林忠彦、藤原新也、細江英公、森山大道、渡辺義雄

写真資料

①出版物(写真集、専門書、雑誌)については、写真文化に関するものを歴史的、系統的に収集する。
②ネガフィルムの類については、作家・作品研究などに必要と考えられるものを収集する。
③ポスターなど、写真展の付属資料(図録、チケット等)を収集する。
④その他、作家や作品の関連資料、周辺資料を適宜収集する。

写真機材類

①写真の原理と発掘の歴史、ソフトとハードの接点を理解させる展示に必要なものを収集する。
②体験学習などの事業活動に必要となるものを収集する。

映像資料

①映像文化史を展示するのに必要な映像資料を系統的に収集する。
②体験型の展示を行うため、映像装置などのレプリカや模型を計画的に製作する。
③日本およびアジアの映像文化史についての調査研究を進め、重要な映像資料を収集する。
④各映像ジャンルの代表的な映像資料および芸術価値の高い作品を収集する。

作品収集の目標

①長期収集計画 7万5千点以上
[内訳]
・写真作品(国内・海外50,000点以上、写真作品以外の資料25,000点以上)

②2023(令和4)年3月現在収集点数 37,312点
[内訳]
・国内写真作品24,753点 海外写真作品6,066点 映像作品資料2,595点 写真資料3,898点

写真作品収取の方針

①平成18(2006)年の写真作品収集の基本方針に則り、写真美術館コレクションをより充実させる。
②黎明期の写真のように、希少的価値のある作品を積極的に収集する。
③写真史において重要な役割を果たした歴史的作家の作品を体系的に収集する。
④1980年代以降に評価の定まった作家作品を充実させる。 日本の新進作家展で 取り上げた作家や国内外の主要な賞を受賞した作家、国内外の主要美術館における主要展覧会において取り上げられた作家など、若手作家の作品を収集する。
⑤写真美術館の展覧会(自主展、収蔵展)で取り上げた作家作品を収集する。
⑥基本方針「写真作品」5. に基づく新規重点作家の設定
 (1)日本を代表する作家であること
 (2)国内外で評価が高いこと
 (3)日本の写真の一分野を代表する作家であること
 (4)国内外の主要美術館で作品が収集され個展が開催されていること
 (5)現在おおよそ40代、50代、60代の作家を目安にする
 (6)収集にあたっては、現在の収集予算および市場価格の高騰を 鑑み、購入及び寄贈により約200点の収蔵を目指す
 (7)重点作家については、国内外の写真・美術の動向を鑑み随時見直しをする

〇写真作品収集の新指針7に基づく新規重点作家(21人、五十音順)
→荒木経惟、石内都、オノデラユキ、北井一夫、北島敬三、小山穂太郎、佐藤時啓、篠山紀信、柴田敏雄、杉本博司、鈴木清、須田一政、高梨豊、田村彰英、畠山直哉、深瀬昌久、古屋誠一、宮本隆司、森村泰昌、やなぎみわ、山崎博
〇写真作品収集の新指針7に基づく第三期重点収集作家(14人、五十音順)
→江成常夫、尾仲浩二、金村修、川内倫子、鬼海弘雄、鈴木理策、瀬戸正人、鷹野隆大、長島有里枝、ホンマタカシ、松江泰治、宮崎学、本橋成一、米田知子

…いかがでしょう。写真という我々一般の人でも手に取り目にする機会が多い媒体(メディア)であるが故に、非常に綿密な指針に基づいて写真作品を収集していることが解るとかと思います。
(参考)
平成31年度東京都写真美術館、作品資料収集方針
令和2年度東京都写真美術館、作品資料収集方針
令和3年度東京都写真美術館、作品資料収集方針

収蔵品検索

・東京都写真美術館の収蔵品は以下のURLから作家名順で検索することが可能です。
〇東京都写真美術館 収蔵品検索:https://collection.topmuseum.jp/Publish/artist

(参考:2016年~2017年に開催された20周年特別展の際のチラシ)

美術館ニュース「eyes」(アイズ)

・また、美術館からのお知らせを中心に美術館ニュース「eyes」(アイズ)を発行。ホームページでの掲載のほか、東京都歴史文化財団の美術館・博物館や文化施設、首都圏の主要美術館、ギャラリー、美術系大学・専門学校などでも配布されています。
〇「eyes」(アイズ)アーカイブ:https://topmuseum.jp/contents/pages/about_eyes.html

加えて、SNSとして公式Twitterも発信されているようです。
〇東京都写真美術館公式Twitter:https://twitter.com/topmuseum

…いかがだったでしょうか、東京都写真美術館(略称:TOP MUSEUM)。
 ここまで質・量ともに充実したコレクションは日本では唯一、世界でも希少な美術館だと感じます。ぜひ恵比寿方面に行かれた際は皆さんも足を運んでみて下さい。

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