こんにちは。近頃は展覧会情報ばかりを発信しておりましたが、久々に美術館紹介です。
世の中は広いもので…また新しい発見をすることができる館も生まれてきているのを本館で認識しました。
これまでのコレクターが建てた美術館ではなく、県立・市立などの公立館でもなく…倉庫業を営む企業が新たな切り口・企画でアートを見せてくれるユニークな美術館です。それでは早速見ていきましょう。
このブログで紹介する美術館
WHAT MUSEUM
・2020年12月、東京・天王洲にオープン。
美術品、映像・音楽媒体メディア、ワインなどのデリケートな品の保存保管などの倉庫事業を営む寺田倉庫が、作家やコレクターから預かっているアート作品を中心に公開する芸術文化発信施設。
倉庫会社としての美術施設はどう在るべきかを模索し、たどり着いたのは「倉庫を開放、普段見られないアートを覗き見する」というコンセプト。作家の思いはもちろん、作品を収集するコレクターのこだわりを大切な作品とともに展示し、アートや建築との出会いの場を創出します。
倉庫内で静かに光を放つ文化的価値を暗示した、WHAT(WareHouse of Art Terrada)の名のもとに展示されるのは、平面や立体のアート作品をはじめ、建築模型、写真、映像、文学、インスタレーションの数々。これらの多様な芸術文化を、倉庫会社ならではの美術館のかたちとして、新たな切り口で企画・展示を行っています。
2016年より保管・展示を行ってきたWHAT MUSEUMの先駆けでもある、建築倉庫ミュージアムは、「建築倉庫」と名称を改め、同施設内で継続して建築模型の保管・建築に纏わる展覧会を開催。また、WHAT MUSEUMの建築倉庫では、建築家や設計事務所からお預かりした800点以上の建築模型を保管し、倉庫内でその一部を公開しています。また、建築模型を用いた企画展示やワークショップ、イベントを開催しています。
概要
・開館:2020年
・美術館外観(以下画像は美術館HPより転載)
・場所
WHAT MUSEUM – Google マップ
コンセプト
アートとは何だ?
アートは社会や私たちに何をもたらすのか?
アートがつくるのは作品ではない。
ふれるひとの中に芽生える“何か”をつくる。
アートが見せてくれる景色は一定ではない。
あなた自身を映し出す鏡のように、
その時々の精神や感性の成長に伴って、
変化し続けていく。
好きだったものを、嫌いになってもいい。
突然、気になりはじめたりもするかもしれない。
アートは向き合う私たちの心をむき出しにするものだ。
WHATはTERRADAに眠るコレクター所有のアートを展示する。
絵画、彫刻、インスタレーション、デジタルアート。
建築模型、文学、映像までも。
これまでの美術展示のボーダーを超えていく。
真っ暗な倉庫を飛び出して、あなたの目前に開放する。
WHATは、あなたに何をもたらすだろう。
その答えは、あなたにしか見つけられない。(WHAT MUSEUMホームページより)
…素晴らしいコンセプト、の一言ですね。
500円/月からはじめられる、世界初の建築模型保管サービス
・美術館のホームページを見ると、建築模型に特化した保管サービス事業の展開について触れられていました。この点だけ見ても相当にユニークだと分かります。
(参考:https://online.archi-depot.com/ja/about)
また、どのような作品が保管されているのかは以下のURLからも参照可能です。
どれも美しく撮られていて、見ているだけでも幸せになります。単に倉庫に保管するだけではなく、こうやって状態展示することで売買というマーケットプレイス的な役割も持たせるという発想がすごいですね;
(参考:https://online.archi-depot.com/)
最後にそんなユニークな美術館を運営する寺田倉庫について触れて終わりたいと思います。
寺田倉庫とは
・寺田倉庫㈱は、東京都臨海部の天王洲アイル(東京都品川区)に本社を置く倉庫業者。
基幹事業の保存保管事業では、ワイン、アート、映像フィルムなど、各商材に適した温湿度管理による保管と、倉庫会社の枠を超えた新規事業を展開している。
1950年10月に創業。BtoC事業としてwebと写真を活用した新たな収納サービス「minikura」を積極的に展開しており、さらに「MINIKURA」のプラットフォームを使ったアート作品のレンタル事業や、月額課金制の衣料品レンタルなどwebを使った新事業を展開するベンチャー企業との資本・業務提携にも着手している。
一方で、寺田倉庫の本拠地となる天王洲アイル地区の活性化に注力しており、新規事業を数多く展開。天王洲の倉庫街からの文化発信に注力し、本社内にイベントホール、音楽スタジオ、茶室などを開設し同品川区の施設にギャラリーを誘致。
また、ASIAN ART AWARD supported by TERRADAの開催や海外のアートイベントの招致など、天王洲アイルの地域活性化を目的とした文化・芸術の支援育成に取り組んでいる。2018年8月には、法人格では初となる、モンブラン国際文化賞を受賞。アート関連事業に注力していることや、伝統芸能のサポートなど芸術文化活動への積極的な支援などが評価された。
年表
- 1950年(昭和25年)10月 会社創立
- 1975年(昭和50年)美術品・貴重品保管事業を開始
- 1983年(昭和58年)メディア保管事業を開始
- 1991年(平成3年)関東運輸局認定トランクルーム第1号を受ける
- 1994年(平成6年)ワインセラーを開業
- 2006年(平成18年)水上ラウンジ「waterline」を開業
- 2012年(平成24年)中野善壽が代表取締役社長に就任(2019年まで)
- 2012年(平成24年)個人が低価格で利用できる収納サービス「minikura」を開始
- 2014年(平成26年)保税蔵置場の許可を取得
- 2015年(平成27年)画材ラボ「PIGMENT」をオープン
- 2015年(平成27年)楽器専用保管サービス提供開始
- 2016年(平成28年)アート事業の一環とした地区開発プロジェクト「BUCKLE KOBO」を開始
- 2016年(平成28年 美術品関連サポートサービスを提供するグループ会社TERRADA ART ASSIST株式会社を設立
- 2016年(平成28年)建築模型を保存保管しながら展示する「建築倉庫ミュージアム」をオープン
- 2016年(平成28年)アート事業の一環として天王洲に「TERRADA ART COMPLEX」をオープン
- 2017年(平成29年)建築模型工房「Architecture Model Workshop」をオープン
- 2018年(平成30年)第27回モンブラン国際文化賞の受賞を記念して一般財団法人MONTBLANC-TERRADA財団を設立
- 2019年(令和元年)寺田航平が代表取締役社長に就任
会社メッセージ
・普段は書かないのですが、会社メッセージがカッコよかったので転載しておきます。(というか会社のメッセージなのに美術館のメッセージみたいになっている…倉庫業を通してここまで文化を語ることができる企業は寺田倉庫だけかもしれません)
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「文化を、あなたと創る」
・美しさとは何か。目覚めに窓を開けると、山間から聞こえてくる鳥たちの歌。生まれては消えゆく、さざ波のゆらぎ。偏西風に寄せられ、うねり上げる雲。誰もがいくつかの答えを挙げられるだろう。だがこの問いに絶対的な解を持つ者はいない。なぜなら美しさの価値観は、すべての人に共通するものではなく、一人の感じる心の中にあるものだからだ。芸術文化の価値もまた絶対的ではない。ゆえに嗜好や理解を超える表現をどう見るか、どう感じるかを考えさせてくれるのである。
社会はいまだ、ダイバーシティ実現の手前で足踏みしている。私たちは文化創造企業として、この刻を進めたい。文化を豊かに花開かせること。それは、他の価値観を認めること。異なる考えに排他されることなく、それぞれの道を自由に歩んでいけること。これまでTERRADAが歩んできた道。保管する「モノの価値」の創造から、モノが生みだす「余白の価値」の創造へ。次の行き先は、人とつながり「共有知の価値」を創ること。築き上げてきたストレージ、IT、天王洲という場。これを意志あるパートナーと共有して未来をつくりたい。ともに学び、創り、成長する。文創を加速していく。 さあ、常識に縛られずに進もう。自分が自分でありつづけられる世の中を創ろう。
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