創業100年に迫る洋画商が収集したコレクション 茨城:笠間日動美術館

アートな場所

こんにちは。このブログでもたびたび登場するアーティストとコレクターの関係や歴史。
彼ら彼女らのタッグによって次のアートの扉が開かれていっているのは間違いありません。

そんなコレクター、その中でもそれ自体を生業にする画商。絵画は水物とまでは言いませんが、景気の影響や流行り廃りのある美術界において、それだけで食べていくってだけでもとんでもなく幅広い知識や目利き力、人脈やカリスマ性、そして運などあらゆる要素が必要な難しい業種だと思います。

そんな画商の中でもとりわけ洋画を専業とし、日本において最古の画商はどこだかご存知でしょうか。創業1928年、もうじき100周年を迎える画商です。そんな画商が郷里である笠間市に創業45年(と金婚式⁉)を記念して建てた美術館が今日ご紹介する館です。では早速。

このブログで紹介する美術館

笠間日動美術館

・開館:1972年
・美術館外観(以下、画像は美術館HP及び県・市観光協会HPより転載)

・場所
笠間日動美術館 – Google マップ
→水戸から上野東京ラインですぐです。

創業100年に迫る洋画商が収集したコレクション

・笠間日動美術館は、1972年(昭和47年)に日動画廊創業者・長谷川仁によって郷里である笠間市に開館。敷地内には、 「鴨居玲※1の部屋」を併設し、ピカソや藤田嗣治をはじめとする国内外の著名画家の展覧会を開催する企画展示館、おもにフランス美術を常設するフランス館、「金山平三※2・佐竹徳記念室※3」を併設し、画家が愛用したパレットを常時200点以上展示するパレット館、日本の著名彫刻家によるブロンズ像が佇む野外彫刻庭園があります。

※1 鴨居玲とはとは…1928年、金沢市生まれ。自己の内面を鋭く抉り出し、内の燃えさかる光をカンヴァスに描く画家。金沢美術工芸専門学校(現 金沢美術工芸大学)で宮本三郎に師事、後に二紀展などに出品して制作活動を続け、パリそしてスペインでも活動。スペイン、ラ・マンチャ地方のバルデペーニャスでは、村の人々との交流を通じて多くの傑作が生みだされ、それら老人たちに己を重ねて後の作品にも大きな影響を与える。

※2 金山平三とは…1883年、神戸市に生まれ。東京美術学校で黒田清輝の指導を受け、同校の卒業後ヨーロッパに渡り、印象派絵画などの影響のもと多くの作品を手がける。中央画壇との一定の距離を保ち、昭和39(1964)年に亡くなるまで、日本の気候と風土に根ざした風景画を中心に、静物画や人物画など、数多くの作品を制作。

※兵庫県立美術館HPより転載

※3 佐竹徳とは…1897年、大阪市生まれ。1917年文展初入選、1919年第1回帝展入選。4度日展特選となり、以後永久無監査。1959年から岡山県牛窓町にアトリエを構え、風景画を描き続けた。1969年から4年間日展理事を務めた。

※瀬戸内市立美術館HPより転載

主なコレクション

〇アンティーク人形
<ブラウンアイ・オートマター / エミール・ジュモー>

〇デッサン
<ジョルジュ=ピエール・スーラ>

〇パレットコレクション
<鴨井玲>

〇フランス美術
<オーギュスト・ルノワール>

〇日本近代洋画
<岸田劉生>

〇日本現代洋画
<奥谷博>

〇屋外彫刻
<木内克>

※他、ニキ・ド・サン=ファール、フランク・ステラなど現代アメリカ美術も収蔵。

(付録)日動画廊の歴史

・笠間日動美術館の母体となっている日本最古の洋画商「日動画廊」…この歴史について少し触れて終わりたいと思います。

(参考)日動画廊の歴史 https://web-nichido.com/home-web_nichido-2/about/

→個人的に一番意外だったのが「日動」と冠がついている画廊であるにも関わらず、某保険会社とは何ら資本関係はありません。「日動」と名前が付く由来は、昭和六年(1931年)まで遡ります。当時、数寄屋橋に近い銀座の日本動産火災保険ビルが建設されました。ただし、そこの家主が保険会社に提示した条件は「1階は事務所ではなく、商店にすること」だったとか。

家主さん、今では考えられないですが、銀座地区の発展のために1階に面したテナントはそこを行き交う人々の交流が生まれる場所にしたかったようです(どなたか存じ上げませんが、随分視野の広い家主さんです)。そこで当日は数店しかなかった洋画商の中でも、その日本動産火災保険社長:粟津清亮さんと面識のあった長谷川仁さん(日動画廊創設者)へ声がかかり、画廊の名前の冠に「日動」を付けたとの事。

実はこれ、大家の社名を縮めた名前だったんですね。「日本動産火災」を「日動」って略すことが稀だった時代、随分と新進の気風を表した名前であったことは間違いないでしょう。

 

…いかがだったでしょうか。そんな絵画といえでもビジネスの第一線で励んでこられたギャラリーの創設者、その方が創業45周年とともに夫婦の金婚式記念として、しかも郷里に美術館を建てたのは何だか心温まるストーリーですね。

そんな笠間日動美術館、ぜひ一度ご来館ください。
(ちなみに、学芸員だよりも随時更新されているようですので、そちらも是非)
※笠間日動美術館 学芸員だより http://www.nichido-museum.or.jp/curator/

 

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