こんにちは。今日ご紹介する美術館、2021年6月にリニューアルオープンしたばかりです。滋賀県大津市郊外、どんな美術館なのでしょうか。早速ご紹介します。
このブログで紹介する美術館
滋賀県立美術館
・開館:1984年 ※2021年滋賀県立近代美術館がリニューアルオープンし名称変更(「近代」がはずれたのですね)
・美術館外観、内観(以下画像は美術館HP、県観光協会より転載)
・場所
滋賀県立美術館 – Google マップ
日本画家と染織家のコレクションに加えアール・ブリュットを、応接間からリビングルームをめざして
・1984年に滋賀県立近代美術館が前身。当時開館した際、「公立美術館初の女性館長」として初代館長を務めた上原恵美氏※1が掲げた美術館のモットー「小さくともキラリと光る、日本中に発信する美術館」「知的好奇心に応える場」「あなたの応接間に」の3つを。現:館長の保坂健二朗氏※2が2021年のリニューアルに併せ時代に合わせアレンジ。目指すべき美術館の姿を「公園のなかのリビングルーム」「リビングルームのような美術館」としたそうです。あらたまった空間から、くつろぎの場所となるよう目指されています。
※1 1943年生まれ。1978年、労働省から滋賀県庁へ。02年4月から08年3月までびわ湖ホール館長。京都橘大学現代ビジネス学部教授。専攻は、文化政策・まちづくり、文化政策論。
※2 1976年生まれ。 2000年慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。 東京国立近代美術館主任研究員を経て、2021年1月から滋賀県立美術館館長。
美術館の運営方針
・収蔵点数は現在1,808件と県立の美術館としては比較的小さい規模との事。一方で、日本画家の小倉遊亀や染織家の志村ふくみのコレクションは国内随一の規模。また、マーク・ロスコやロバート・ラウシェンバーグなど、戦後アメリカ美術を代表する作家の良作を収蔵していることでも知られています。2016年からは、アール・ブリュットの作品の収集もスタート。教育普及活動でも、開館当初から実施しているワークショップやアートゲームを用いた鑑賞教育などの先進的な取り組みを続けられています。
2021年6月に再開館するにあたり、「かわる、かかわる」をコンセプトに。まず、時代や傾向を限定することになる「近代」を館名から外します。(→そういうことで名称から外れたのですね!)今日の美術館のミッションは、「人がつくった様々なものに触れることを通じて、社会や環境の多様性をより深く感じられる場をつくること」にあると考えたからだそうです。滋賀県立美術館は、そのミッションを実践していくために以下の4つ(頭文字つなげてC・A・L・L)を大切にされています。
創造(Creation)と問いかけ(Ask)
・滋賀を中心にして、障害のあるなしに関係なく、また、ジェンダーバランスにも留意しながら、創造の場を支えます。その上で、「アートって、人間にとってなんなんだろうか」という問いを考えたくなるような展示を実施するとともに、これまで以上にユニークなコレクションをつくりあげていきます。
地域(Local)と学び(Learning)
・「滋賀っておもしろい!」と皆が言いたくなるように、県内の個人や企業・団体の協力を得ながら、地域の多様な魅力をリサーチして広く発信します。また、県民を中心に、子どもから大人まで、ビギナーから学者まで、ユニバーサルの理念のもとに、一人ひとりの学びに貢献するプログラムを実施します。
…これら「創造(Creation)」「問いかけ(Ask)」「地域(Local)「学び(Learning)」の4つ(CALL)を軸にすることで、滋賀県立美術館は、これからますます変動していく社会に対しても、柔軟にかわりながらかかわり続け、「つねにフレッシュなミュージアム」を志賀から発信していくことができるとの考えに立っています。
収蔵方針
すでに形成されている以下の特色あるコレクションの拡充
①日本美術院を中心とした近代日本画
②滋賀ゆかりの美術・工芸等
③戦後アメリカと日本の現代美術
すでにあるコレクションを相対化するための以下の作品の収集
①アール・ブリュット※
②芸術文化の多様性を確認できるような作品
※アール・ブリュットについては以前ご紹介したブログ記事「はじまりの美術館」をご参照。
コレクションを良好な状態で次代に継承するための管理と修復
→結構明確に分類分けされています;
展覧会方針
滋賀県立美術館、珍しく展覧会についても方針を定められています。
(これまでご紹介してきた館では初めてかもしれません)
①特色あるコレクションの活用
②創造現場との積極的な交流
③地域ゆかりの文化財等滋賀の多様な文化の紹介
④他機関との協働による研究成果の発信等
⑤建築、舞台芸術、音楽、写真、文学等他ジャンルとの交差
→「建築、舞台芸術、音楽、写真、文学等他ジャンルとの交差」って面白いですね。
教育・コミュニケーション方針
①学校現場と連携した美術教育プログラム
②様々なニーズや世代にあわせた鑑賞・体験プログラム
③館内や地域での活動のパートナーとなるボランティア制度の充実
④地域の団体や、大学、企業等と連携して行う取り組み
⑤美術館のファンやリピーターの獲得を目指すメンバーシップ制度
→滋賀県立美術館、ホームページを覗いていただければわかると思いますが、一つひとつの活動、取組みにすべて方針立てされています。これは過去の近代美術館時代の反省からくるものなのかもしれませんね。(限りある予算の中では、手広く収集、展覧会をしようとしてもかえって輪郭がぼやけて市民・県民にとっても何のためにある美術館なのか解りづらくなるという側面はあると思います)
主なコレクション
<小倉遊亀>
<志村ふくみ>
<マーク・ロスコ>
<コンスタンティン・ブランクーシ>
<クリフォード・スティル>
<小幡正雄>
<岸竹堂>
<白髪一雄>
→なんか人生でこれめっちゃ見ている記憶が…個人的に好きだから印象に残っているのでしょうか。。
<塔本シスコ>
<野口謙蔵>
<安田靫彦>
<山元春挙>
アール・ブリュット~石野光輝、澤田真一
…いかがだったでしょうか。まさにいま収蔵品も美術館の運営も生まれ変わろうとしている真っただ中です、滋賀県立美術館。まだ足を運んだことがない人は一度行かれてみてはいかがでしょうか。小倉遊亀さんの穏やかな画面に加え、アール・ブリュットを今後コレクションの軸としていくそうなので、きっとリビングのように居心地が良い中にも良い意味で常識を覆すような作品に出合えるはずです。私もリニューアル後の滋賀県立美術館、ぜひ来館してみたいと思います。
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