こんにちは。長野県、これまで2日連続で文化勲章者をご紹介してきた一方で青木繁のようなタイトルホルダーではない作家であっても現代において大変高い評価を得ている画家も(いや、どちらかというとそんなアーティストの方が多いのかも…)存在することをお伝えしました。
今日ご紹介する作家はまさに、文化勲章までは受章せずとも、昭和期に童話的で温かみのある画風で多くの人々を感動させてきた画家です。そして何よりご本人の遺志で建てたこの美術館自体が地域に密着し地域の人たちと様々な活動をされているという点においてはもはや受賞という形はそこまで重要ではないのではないかと思ってきます。そんな魅力的な作品群を展示する個人の作家のために建てられた美術館、早速ご紹介です。
このブログで紹介する美術館
脇田美術館
・開館:1991年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県・市、観光協会HPより転載)
・場所
脇田美術館 – Google マップ
<h3作家本人が長年愛用したアトリエ山荘を囲んで建設、自然や人生への透徹した視線と色彩の音色
・文化功労者で、10代でドイツ・ベルリンに学び、帰国後、新制作派協会立ち上げに参加、東京芸術大学の教授を務めた脇田和【わきたかず】(1908~2005)の油彩・素描・版画など、初期から晩年までの作品を所蔵。自然光のそそぐ開放的な展示室で、常時100点ほどの作品を展示。作品には、絵本、挿絵のほか、スーパーマーケットの袋を利用したコラージュ作品など、独特の手法の作品もあり、2階の大小の展示室をつなぐ回廊・空間には画家が収集したオブジェも置かれ、画家の感性も楽しめます。館の入口の敷地内にある、らせん状の鉄製のモニュメント『HELIX』は、脇田和の子息で、画家で彫刻家の脇田愛二郎の作品。音楽を共に愛した二人の芸術家。夏には時折、館内にて様々なミュージアム・コンサートやガーデンパーティが開催されています。
また、美術館内には脇田が生活していたアトリエ山荘があります。昭和45(1970)年に建築された木造・コンクリート構造の住居で、脇田和の友人である建築家吉村順二が設計した建物。日本のモダニズム建築を代表するこの山荘は、現在でも画家が使用していた時のままの状態で保存されており、毎年秋に一般公開するほか、建築家を招いたシンポジウムや勉強会などが行われています。
(美術館のHPには以下のような詩的な表現が載っていました)
「のびやかに広がる心の詩があり、自然や人生への透徹した視線が感じられる脇田和の絵画宇宙は、しばしば澄んだ音色を響かせる室内楽にたとえられます。緑の木立のなか、典雅な“色彩の音楽”がいきづく『脇田美術館』~(中略)軽井沢の地にさわやかな文化イメージを根づかせています。」
脇田和とは
・1908年、東京生まれの洋画家。1923年(大正12)ドイツに渡り、1930年(昭和5)ベルリン国立美術学校を卒業して帰国。光風会展、帝展に出品。1935年国家主導の帝展改組に反対して設立された第二部会展に出品、特選と昭和洋画奨励賞を受けるが、翌年同志と帝展を完全に離れて新制作派協会を結成。以後生涯にわたり、同会の中心として出品を続けた。1955年(昭和30)日本国際美術展で最優秀賞、翌年第7回毎日美術賞と第1回グッゲンハイム賞国際美術展国内賞を受ける。ベネチアやサン・パウロのビエンナーレ展ほか海外展に出品、外遊。東京芸術大学教授として後進を指導。また版画やコラージュの分野でも活躍。1986年4~8月、脇田和展が神奈川と群馬の県立近代美術館で開催。また1991年(平成3)には長野県軽井沢町に脇田美術館が開館。同年勲四等旭日小綬章受章。身近で親しいモチーフがよく馴化された脇田絵画は、比類なく豊潤な交響詩的パラダイスを思わせる。1998年文化功労者となる。
→マウス的には国家主導の帝展改組に反対して設立された第二部会展をメインに活動されていたその信念(?)に脱帽です。
主なコレクション
・美術館HPには収蔵作品の紹介はなかったのですが、過去のコレクション展の際の画像が残っていましたのでそちらをご紹介します。(脇田氏、「絵には、完成も終わりもない。あるのは仕事の累積である。」と語ったそうです。ご本人の考えをよく表したエピソードですね)
マウス的にも脇田絵画は独創性に富んでおり非常に好みです。
おだんごぱん
・最後に、この洋画家:脇田和氏が手掛けたロングセラーの絵本をご紹介して終わりたいと思います。(もしかして脇田和の名前や作品は知らなくてもこの絵本は知っているという方は多いのではないかと思います)
おだんごぱん (日本傑作絵本シリーズ)
実は脇田氏は若い頃から童話や子供たちのために絵本や挿絵を沢山描いていたそうです。中でも絵本「おだんごぱん」は、1966年の発行以来、世代を越えて未だに読み継がれている絵本のベストセラーです。実は本美術館にはそんな絵本の主人公にちなんだ、その名も「おだんごぱん」というパンが美術館ショップで売られています。イギリスパンの生地で焼かれた丸形のパンに、絵本そっくりの顔が焼印で入れられているそうなので、来館の際はぜひ試食してみて下さい。
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