こんにちは。画家と美術館の関係…あまりこのブログでは触れてこなかったかもしれませんが、美術館の使命の1つには、それまで世間・社会に知られていなかった作家にスポットライトを当て、その素晴らしい世界を1人でも多くの人に周知するという役割があるような気がします。
本日ご紹介する美術館、県立でありながらその役割を真摯に考え、1万点を超えるコレクションを有しながらここ数年1人の作家を追い続けています。高島野十郎…名前だけは聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません…恐らくそれはこの美術館が果たしてきた役割が大きいからだろうと思われます。それでは早速。
このブログで紹介する美術館
福岡県立美術館
・開館:1985年 ※前身は1965年に開館した福岡県文化会館です
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県観光協会HPより転載)
・場所
福岡県立美術館 – Google マップ
東大水産学科卒、独学で絵を習得、画壇に入らず1人写実世界を追求した画家に焦点を当てる
・昭和39年(1964)年11月3日、文化の日、福岡県福岡市天神の須崎公園内に、美術館と図書館の複合施設として当館の前身である福岡県文化会館が開館。企画展では、福岡県における近代洋画、日本画、彫刻、工芸など調査研究に基づいた展覧会を開催。
その後、美術館と図書館を分離独立させ、美術館は、全面改装をへて、昭和60年(1985年)11月3日、文化の日に福岡県立美術館として再スタート。開館記念展では、「現代美術の展望 変貌するイマジネーション」を開催。文化会館時代の活動を礎としながら福岡県ゆかりの作家や美術動向について調査研究した展覧会を開催するのみならず、国内外の多種多様な美術表現を紹介する展覧会に取り組んでいます。現在コレクションは、約1万点。
※当時のチラシ(現代美術の展望 変貌するイマジネーション)
特に、近年は福岡県久留米市出身の洋画家で、東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業しながらも画家の道を選び、流行や時代の趨勢におもねることなく、自らの理想と信念にひたすら忠実であろうとストイックな生き方をした髙島野十郎(1890-1975)の作品収集・展示に力を入れています。「蝋燭」や「月」という特異な主題を独特の写実的筆致で描いた画家として、全国的にもよく知られる存在となっています。
※髙島野十郎「蝋燭」大正期、福岡県立美術館蔵
コロナ禍の取組み
・令和3年(2021)3月、コロナ禍においても、また世界中のどこにいても福岡県立美術館とつながりを持っていただけるようウェブサイト内に統合サイト「どこでもケンビ」をオープンしています。ここでは、本館のコレクションを楽しむことができる「福岡県立バーチャル美術館」と学習支援コンテンツ「edukenbi(えでゅけんび)」の2つのコンテンツを公開。
福岡県立美術館いわく、「来館者のみならず、ウェブサイトを訪れてくださるみなさまにとって、心豊かな美術体験の場となれるようこれからも活動を続けていきます。」との事。
主なコレクション
・福岡県にゆかりのある作家の作品、福岡県内の美術動向に関わる作品を中心に収集保存。近世から近現代にわたる幅広いジャンルの美術資料を約1万点所蔵、その調査研究の成果を企画展やコレクション展で紹介しています。
日本の近代洋画
・福岡県は、明治期以降の日本における絵画の近代化に貢献した数多くの洋画家を輩出してきた歴史を持っています。福岡県立美術館では、坂本繁二郎、髙島野十郎、児島善三郎、中村研一、中村琢二、古賀春江、野見山暁治など福岡にゆかりある作家の作品を主に所蔵。中でも長年調査に取り組んできた髙島野十郎については、約140点に及ぶ国内随一のコレクションです。
尾形家絵画資料
・尾形家絵画資料とは、江戸時代、黒田藩に絵師として仕えた尾形家において代々引き継がれてきた約4,700点のふん本(模写、下絵等)の事で、これらは、福岡における狩野派の伝播を物語る大変貴重な資料群として福岡県指定文化財に指定されています。
工芸
・博多織や久留米絣などの染織、上野焼や小石原焼に代表される陶芸など福岡県内の工芸を数多く所蔵。また九州内の古陶磁約400点を収集した旧久我コレクションも所蔵。近年、鹿児島寿蔵(紙塑人形)、豊福知徳(彫刻、デッサン)、野見山暁治(油彩画)、江上茂雄(クレヨン・クレパス画)の作品の大型寄贈を受け、日々新しく生み出される現代の表現にも目を向け、コレクションの充実に努めているそうです。
〇福岡県立美術館 収蔵品検索:https://jmapps.ne.jp/fma/
※残念ながら画像は掲載できませんでしたが、上記検索URLからご覧いただくことができます。
ケンビブログ
・福岡県立美術館では日々の取組みをご紹介するため「ケンビブログ」と題し、ブログを公開されていますのでそちらをご紹介しておきます。(https://fukuoka-kenbi.jp/blog/)
(付録)新福岡県立美術館について
・最後に、福岡県立美術館は2029年に移転・リニューアルを目指し現在計画中です。2022年8月よりプレサイト「新福岡県立美術館が大濠公園にできるまで」をオープン。開館に向けて、新しい美術館ができていく過程を発信・共有・記録するともに、サイトの中身もどんどん充実させていく予定との事。
〇新福岡県立美術館が大濠公園にできるまで:https://2029.fukuoka-kenbi.jp/
どんな美術館に生まれ変わっていくのでしょう。楽しみですね。皆さんも福岡県を訪ねたときにはぜひこのサイトも覗いてみて下さい!
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