アール・ヌーヴォーとアール・デコの時代を駆け抜けた装飾美術工芸の巨匠 神奈川:箱根ラリック美術館

神奈川県

こんにちは、マウスです。
今日ご紹介する美術館、もしかしたら一度行ったことがある人が多いかもしれませんね。日本有数の観光地:箱根に立地する美術館で、地方在住の私(しかも美術に特に興味をもつ以前でも)一度は聞いたことがあったような記憶があります。それがこの偉大な芸術家の名前なのか、本美術館の活動だったのかは定かではありませんが。いずれにしろアール・ヌーヴォーとアール・デコという2つの時代で活躍した装飾芸術の巨匠の作品を展示する美術館です。それでは早速。

このブログで紹介する美術館

箱根ラリック美術館

・開館:2005年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県・市観光協会HPより転載)

・場所
箱根ラリック美術館 – Google マップ

アール・ヌーヴォーとアール・デコの時代を駆け抜けた装飾美術工芸の巨匠

・フランスの宝飾・ガラスの巨匠ルネ・ラリックの作品を展示する美術館。ラリックはアール・ヌーヴォー、アール・デコ両時代で活躍し、20~40代の頃には美麗なアクセサリーや装飾品を中心に、50代以降はガラス作品を制作しました。

→箱根はここと次ご紹介しますが、ガラスの森美術館と相まって、ガラス芸術の国内のメッカになっていますね。

ルネ・ラリックとは

・1860年、フランス:マルヌ生まれの宝石細工師、ガラス工芸家。パリの装飾学校で学んだ後、イギリスでも学び、1885年以来パリを中心にベル・エポック※1の風潮のもと制作を行う。女優のサラ・ベルナールが彼の装身具を好んだことから名を上げる。その後、1907年フランスのコティの香水瓶※2のデザインを手がけたことがきっかけでガラス工芸に転向。アール・デコ様式※4の独特の型吹や型押ガラス器を開発、また照明器具にガラスを活用する。代表作に、「トンボと女性像をモティーフとしたブローチ」(1898年頃)など。アール・ヌーボー※3の装飾芸術の代表的作家。
(20代から40代までは、一品制作のジュエリーを、50代から亡くなるまでの後半生はガラス作品を制作しました。)

→最近思うのですが、美術用語って「わかってるでしょ」って感じでさらっと書いていますが、結構どういう意味かわからない言葉が多いですよね。ルネ・ラリックの説明だけでも注釈が4つも付きました。以下念のため記載しておきます。

※1 ベル・エポックとは…ベル・エポック(良き時代/美しき時代)とは、フランスにおける19世紀末から1914年に第一次世界大戦が勃発するまでの約25年間。ベル・エポックは、あらゆる分野で新しいものが誕生し、現代生活のベースが築かれた世紀を跨いだ大転換期となった。

※2 フランスのコティの香水瓶とは…フランスの香水商・実業家・富豪であったフランシスコ・コティがラリックに作成を依頼した香水瓶。ラリックは独自の製法を確立し芸術と産業を結びつけた。アール・デコのガラス工芸に新風を巻き起こし、それまで王侯貴族の独占物であった香水を二十世紀初頭新しい市民社会にもたらし圧倒的な支持を受けた。

コティの香水瓶

※3 アール・ヌーボーとは…19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に開花した国際的な美術運動。「新しい芸術」を意味する。花や植物などの有機的なモチーフや自由曲線の組み合わせによる従来の様式に囚われない装飾性や、鉄やガラスといった当時の新素材の利用などが特徴。分野としては建築、工芸品、グラフィックデザインなど多岐にわたった。

※4 アール・デコとは…装飾性が高いゆえ大量生産に向かないアールヌーボーに代わり、第一世界大戦後に広まったのがアールデコArt (芸術)+Déco(装飾)。名称は、パリ万博「L’Exposition international des arts decoratifset industrielsmodernes」の略から来ています。直線的で合理的なデザイン、原色の対比などが特徴。アールデコの時代は、大衆が大量生産の商品を求め始めた時代で芸術やデザインは一部の特権階級のものから、大衆のものへと移行。戦前の価値感は大きく変化し、機能的でシンプルなデザインが求められた時代でした。パリ発のアールデコは、アメリカで開花。第一次世界大戦の戦勝国アメリカは、芸術・文化の面でも世界の中心になりますが、そんな、狂騒の時代とも呼ばれたアールデコも、1929年の大恐慌のころから衰退し始め、第二次世界大戦の勃発により終了しました。

主な展示作品


    
  

→最後の列車の車内空間はラリックが1928年、68歳の時に制作したオリエント急行「コート・ダジュール」号のインテリアです。現在日本版:水戸岡鋭治さんといったところでしょうか。

いかがでしょう。言わずもがなガラス工芸好きな方は外せないスポットだと思います。作品を見て、「あ、これラリックだ」とわかる方でもそのラリックが生涯どんな生き方、作品を遺してきたのかを体系的に見ることができる美術館はここだけではないかと思います。皆さんもぜひ足を運んでみてください。

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