こんにちは。福岡県北九州市、3館目は政令指定都市:北九州市が運営する市立の美術館です。こちら昭和49年(1974)西日本における公立美術館の先駆けとして設立されました。私も何度か足を運んだことがありますが、小倉、戸畑、八幡の三区にまたがる丘の上にあり、臨海工業地帯と市街を見下ろすことができる大変に見晴らしのよい立地です。どんな美術館なのか、早速ご紹介しましょう。
このブログで紹介する美術館
北九州市立美術館
・開館:1974年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、市観光協会HPより転載)
<本館>
→大分出身の建築家:磯崎新氏の設計です。
<別館>
→商業施設「リバーウォーク」という複合商業施設の中にあります。
西日本における公立美術館の先駆け、地域とともに成長し心の豊かさを創出する空間
・昭和49年(1974年)、小倉、戸畑、八幡の三区にまたがる丘の上、臨海工業地帯と市街を見下ろす緑豊かな敷地総面積は10万平方メートルの土地に、西日本における公立美術館の先駆けとして設立。百万市民を抱える北九州市にふさわしい美術館として、豊富な収蔵品を常時展示すると同時に優れた企画展を開催することにより、市民に美術鑑賞の場を提供し、創作活動に対して支援するということを基本方針としてスタート。開館と同時に、全国で初のボランティア制度を導入、来館者に対する作品解説や教育普及活動を推進しました。ボランティアは一般から募集し、数年の養成期間を経た約80人が交代で毎日活躍。展示室は企画展示室、常設展示室と分かれ、特に常設展示室はコーナーを5つに分けて展示・公開。
昭和62年(1987年)に地元作家の発表の場を設ける意図で別館(アネックス)を増築。1階の市民ギャラリーを発表の場として提供。3階には常設的に少しでも多くの種類の版画や素描などの小作品を紹介したいということから、専用の展示スペースを設けテーマを決めて常時、小展覧会を開催。
基本理念と柱
・市民の生活に潤いと心の豊かさを創出し、地域とともに成長していく美術館
①作品世界を多様に、存分に味わう
②地域とともに成長する
③文化資源を伝承する
基本方針
基本方針①
・世界的美術作品を含む収蔵品の蓄積を踏まえ、質の高い優れた美術作品の収集を心がけながら、地方美術館として特色あるコレクションの形成を目指す。 収集にあたっては時代背景、作家・作品の関係にも留意。
①現代の多様性を示す優れた作品
②地域の美術史を構築する上で欠かせない作品
③近現代美術史の展開をたどる既存コレクションの充実・補完
基本方針②
・地域とともに成長していく美術館、「リビング・ミュージアム」実現のため。
①現代を生きる~美術を通して時代と文化を考える美術館
②地域とともに生きる~暮らしと共存する美術館
③作家・作品と生きる~研究・アーカイヴ機関としての美術館
取組内容
継続的な作品の収集と保護
①開館以来の収集方針や所蔵内容の傾向を踏襲した継続的な収集活動
②作品の保護と修復にも努めながら、公開の機会と期間、方法の検討及び効果的な活用方法の模索
③収蔵庫、展示室を含む館内の環境管理
魅力的な展覧会の実施
①多様な美術を紹介する展覧会の企画(大規模巡回展や多様な美術の企画)
②地域の美術史を構築する上で欠かせない作家、活動を掘り起こす展覧会の企画(地域ゆかりの作家や地域美術の紹介)
③既存コレクションを活用した展覧会の企画(所蔵作品、資料を活用し発信)
研究機能の強化
①各分野の専門的な研究の推進
②他館や他機関と連携した研究や事業の実施及び成果の共有
③研究成果の公開
④所蔵品、蔵書のデータベースの整備
効果的な教育普及活動の推進
①ボランティアや学校機関、社会施設などと連動した市民交流
②市内小学生を対象とする「ミュージアム・ツアー」の実践
③たんけんパスポートの利用促進
④長期的なアート体験プロジェクトやトークイベントの実践
⑤ボランティア制度の見直し
市民活用における利便性の向上
①アネックス棟再整備の検討
②二つの市民ギャラリーの利用促進
③「美術館友の会」の加入促進と活動内容の充実
積極的な情報発信
①各事業における適切な広報
②各事業の入場者数や年齢層などに関する分析と対策
③他館や文化施設との広報連携
④美術館活動全体の情報発信
⑤館内外の表示や広報活動における外国語表記
快適なアメニティ空間の整備
①快適なアメニティ空間の演出(サイン計画、ミュージアムショップなど)
②市民の憩いの場としての演出(磯崎建築、美術の森公園)
③館内外の表示や広報活動における外国語表記(再掲)
④危機管理マニュアルの策定と更新
美術館協議会について
・美術館協議会は、博物館法第21条に基づいて設置された機関で、教育関係者や学識経験者等により構成。協議会は、美術館の運営に関し、館長の諮問に応じるとともに、館長に対して意見を述べる機関で北九州市立美術館もこれに準じて開催しています。最新(令和3年度)の議事録が掲載されていましたので載せておきます。
〇令和3年 北九州市立美術館協議会議事録
→この中には、美術館のバックヤードの見せ方(4ページ目)やコロナ禍でお金(予算)がつかない、作品を購入することができない公立美術館の前向きなあり方が議論されており非常に参考になりました(6、7ページ目)。そこでは大規模な予算に頼る展覧会だけでなく、より地域に目を向け、美術史的な軸だけでなく地元の作品・作家の掘り起こしということの重要性について触れられていました。
…本美術館も残念ながらコレクションの画像がありませんでしたが、印象派をはじめとする西洋近代美術や、戦後アメリカの抽象美術、浮世絵や日本の近現代美術に強みをもっているとの事。北九州市、かつでは四大工業都市の1つとして栄えましたが、いまはこのように文化都市、環境都市としての側面をもつようになってきています。皆さんも北九州市に足を運ばれた際はぜひ市内の美術館に足を運んでみて下さい。
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