こんにちは。いよいよ今日で(本ブログでご紹介する)静岡県の美術館はラストです。色んな美術館がありましたね。クレマチスの丘ではじまり、掛川市にはステンドグラスの素敵な美術館もありました。楽器の博物館や江戸時代の左官の美術館も…。最後を締めくくるのは、そんな美術大県静岡県が誇る公立館です。それでは早速。
このブログで紹介する美術館
静岡県立美術館
・開館:1986年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県観光協会HPより転載)※下がロダン館です
・場所
静岡県立美術館 – Google マップ
ロダンの彫刻と前近代の山水・風景画に特徴
・県議会100年記念事業の一環として設立。『開かれた美術館』を目指し、企画展や収蔵品展はもとより、講演会、講座、シンポジウムなどを開催。1994年3月には新館としてロダン館がオープン。ロダンの《地獄の門》を中心とする32体の彫刻を、明るい大空間を散策しながら鑑賞することができます。
収集方針
①東西の山水・風景画
②富士山の絵画
③ロダンと近代彫刻
④現代の美術
⑤静岡県ゆかりの作家、作品
→真っ先に「東西の山水・風景画」を掲げているところがユニークですね。
館長コメント
・静岡県立美術館の館長のコメントに良いことが書かれてありましたのでご紹介しておきます。
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・「東西の山水・風景画」の収集範囲を17世紀初頭にまで広げたことで、前近代の美術を振り返ることのできる当館の「体質」は際立っています。近現代美術を中心にコレクションを築いてきた多くの公立美術館とは一味違う。わたしたちとは別の時代、別の世界を生きたひとびとが、それぞれの美の基準にしたがって作り出したものを通して、それらを作り出した人間の面白さ、楽しさ、恐ろしさ、底知れなさにふれる。過去を知り、ひるがえって、わたしたちが生きる現代を知る。これが美術館の醍醐味のひとつではないかと私は考えます。(静岡県立美術館 館長:木下直之)
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沿革
・昭和54年(1979)、県議会100年記念事業調査特別委員会で、美術館の建設について記念事業の一環に加えることを決定
・昭和55年(1980)、県教育委員会事務局に美術博物館建設準備室を設置
・昭和59年(1984)、建設工事着工
・昭和61年(1986)、初代館長に鈴木敬氏を任命、静岡県立美術館開館
・平成2年(1990)、観覧者100万人達成
・平成3年(1991)、組織改正に伴い美術館の所管が教育委員会文化課と知事部局の環境・文化部生活文化課の共管となる
・平成4年(1992)、ロダン館建設工事着工
・平成6年(1994)、2代目館長に吉岡健二郎氏を任命、ロダン館開館、観覧者200万人達成
・平成11年(1999)、観覧者300万人達成
・平成17年(2005)、3代目館長に下山肇氏を任命、静岡県立美術館「自己評価システム」の運用を開始
・平成18年(2006)、4代目館長に宮治昭氏を任命、観覧者400万人達成
・平成20年(2008)、カフェ「ロダン」新設
・平成21年(2009)、改修工事着工
・平成22年(2010)、5代目館長に芳賀徹氏を任命、リニューアルオープン
・平成23年(2011)、観覧者500万人達成
・平成26年(2014)、ロダン館20周年記念式典
・平成28年(2016)、開館30周年記念式典
・平成29年(2017)、6代目館長に木下直之氏を任命
・令和元年(2019)、観覧者600万人達成
→観覧者数だけで判断するわけではないですが、誤解をおそれずに言うとこの10年間での集客の伸びは鈍化してきているようですね。(本美術館、だいたい4年で100万人を達成しているのを考えると)
主なコレクション
ロダン館
・ガラス天井から注ぎ込む自然光のもと、まるで彫刻のある公園を散歩するように気ままに歩ける彫刻館。見晴らし台のようなエントランスフロアからは、ウイング全体を望むことが可能。階段状になったスキップフロアには《地獄の門》をはじめとして32点のロダンの彫刻が展示。ロダン館と隣りのブリッジ・ギャラリーには、ロダン以前・以降の彫刻もあわせて展示され、全部で51点の彫刻 作品が一堂に鑑賞可能です。
(参考)
〇ロダン館 ガイドブック
また、ホームページの以下サイトからロダン彫刻コレクションの詳細をご覧いただくことができます。
〇ロダン館作品紹介
・https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/rodin/
屋外彫刻
・美術館へのアプローチ歩道であるプロムナードには国内外の彫刻家による作品12点が設置されています。
(参照:https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/exhibition/outdoor/)
デジタルアーカイブ
・コロナ禍での対応でしょうか。本館はデジタルアーカイブにも力を入れられているようです。
池大雅 蘭亭曲水・龍山勝会図屏風
池大雅とは
・江戸時代中期に活躍した関西の南画家、書家。京都の銀座役人・池野嘉左衛門の子として生まれる。幼少期より才能を発揮し、元文2(1737)年、15歳で扇屋を開いたと伝えられる。『八種画譜』や『芥子園画伝』を利用して描いた扇絵の販売と篆刻を行い、中国の木版画譜を通して文人画を学ぶ。萬福寺の黄檗僧や初期南画家の柳沢洪園(1704-58)、祇園南海(1676-1751)との交流により、文人画への理解を深める。日本の伝統的な諸派の作品や西洋画の表現をも取り入れ、伸びやかな筆線と明快な彩色、奥深い空間表現を特徴とする画風を確立し、南画の大成者となった。
オーギュスト・ロダン 地獄の門
オーギュスト・ロダンとは
・19世紀を代表するフランスの彫刻家。1840年、警視庁の下級官吏の子として、パリに生まれる。帝国素描・算数専門学校で美術の基礎を学ぶが、国立美術学校の試験に3度失敗。セーヴル磁器工場などでの仕事を経て、40歳で≪地獄の門≫の制作を国から依頼されてから、ようやく彫刻家として認められる。以後、革新的な実験や大胆な造形力によって、20世紀彫刻への流れを準備する。
→余談ですが、ロダンって国立美術学校の試験に3度失敗していたのですね。
伊藤 若冲 樹花鳥獣図屏風
https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/archive/jakuchu/
→以下は本若冲作品に対する美術館の解説文です。
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・江戸時代中期の京都において、他の誰とも似ない独自の絵画世界を打ち立てた伊藤若冲。その若冲ならではの独創性が如何なく発揮された作品として注目を集めているのが、本立美術館が所蔵する《樹花鳥獣図屏風》です。枡目描きと呼ばれる奇想天外な描法で描かれる動物と鳥の楽園は、江戸時代の絵画のイメージを覆す、新鮮な驚きに満ちています。
風景の交響楽
・美術館ホームページには、静岡県立美術館が所蔵する作品群の全身像、顔立ちについて、交響楽に見立てて構成したサイトもありました。ユニークですよね。「風景の競演」「静岡の調べ」「個性おどる作品たち」「世界の動向と日本」の4楽章で構成しているそうです。
風景の競演
以下の4部で構成されています。
①富士山と東海道 富士山という風景 東海道のある風景
②故郷へのまなざし 日本という風景 オランダの隆盛 フランス イギリス
③あこがれの風景 山水という風景 異国という風景
④風景の結晶
静岡の調べ
以下の6部で構成されています。
①狩野派の世界
②徳川ゆかりの画家たち
③静岡出身の作家たち、静岡を愛した作家たち
④崋山の弟子たち
⑤創作版画
⑥グループ幻触
個性おどる作品たち
以下の3部で構成されています。
①日本
②西洋
③コレクションの中のコレクション
世界の動向と日本
※イメージ画像なし
①戦後アメリカの黄金期
②「現代美術」−戦後美術
③女性の作家たち
④越境者たち−海を渡った作家たち
→アメリカ美術まで手広く収集対象に入っているのはめずらしいと感じます。
なお、各項目、作家別の検索については以下のURLから探すことができます。
〇風景の交響楽シンフォニー 作家別インデックス
https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/archive/symphony/artists_index/
静岡県立美術館 ムービー
・静岡県立美術館では、館長・木下直之氏プロデュースによる収蔵作家に関する動画と、当館やその周辺の環境を紹介する動画を配信されています。こちらも他館ではなかなかお目にすることができないものですので是非一度ご覧ください!
以下、現代アーティスト:森村泰昌さんと館長の対談も載っていました。
美術館ニュース「アマリリス」
・静岡県立美術館では、美術館ニュースをまとめた冊子「アマリリス」を年に4回季刊しているようです。
〇美術館ニュース「アマリリス」バックナンバー:https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/outline/publication/amaryllis/
・美術館ニュース「アマリリス」no_146
・美術館ニュース「アマリリス」no_147
・美術館ニュース「アマリリス」no_148
→ちなみにこの「アマリリス」…何だか気になる言葉ですよね。先にご紹介した屋外彫刻に同名のタイトルの作品が出てきます。
美術館の解説にはこう書かれていました。
・三種類の長さの線による三角形と台形で構成された、2つの同一の黒い立体の組合わせからなる単純な形態であるが、周囲を巡るにつれて形態はさまざまに変化し、堅固な構築性を失なうことなく多様な相貌を見せる。光を反映する度合が黒塗りされた軟鋼の各面で異なるのも、こうした効果を高めている。本作は、1981年の制作になる3/3で、1985年までナッソー・カウンティ・ミュージアムに寄託されていた。それ以前のヴァージョンはワズワース・アセネウム(ハートフォード)の館前と、ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)の彫刻庭園に設置されており、その後新たなヴァージョン(溶接線が多い)がメトロポリタン美術館に展示されている。ちなみに作者は、作品の制作後にふとした着想から題名を付するのが常だったので、本作の《アマリリス》にも特別な意味はなかろう。(1996年『静岡県立美術館コレクション選』、p. 166)
…うーん、つまり特別な意味はないと。そんな言葉を美術館の季刊誌名に使うとは逆になんかお洒落のような気もします。
いかがでしょうか。静岡県立美術館、さすが美術県の1つだけあって、それを束ねる県の公立館には幅広い作品が収蔵されているのがわかりました。皆さんもぜひ、静岡の旅の最後にはこの静岡県立美術館を旅程の中に組み込んでみてはいかがでしょうか。それでは次回もよろしくお願いします。
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