こんにちは、マウスです。
前回は樂家吉左衛門などの作品をご紹介しました。実は今日ご紹介する美術館、(かなりこじつけではありますが)同じ名をもつ吉左衛門氏が収集したコレクションです。ただし、こちらは樂家ではなく、鉱山業から伸銅、鋳鋼、化学、銀行、倉庫業、林業に至るまで幅広く展開した日本の3大財閥家当主のコレクションです。(ちなみに住友吉左衛門の名からちなんだ、コバルト・タングステン・クロム・炭素を含む鉄の合金磁石鋼で世界初の永久磁石「KS磁石鋼」というのがあるそうです)
※ジャパンアーカイブス(https://jaa2100.org/entry/detail/055441.html)から転載
一方、美術館の方の名前には「吉左衛門」は入っておらず、江戸時代の住友家の屋号「泉屋」と、中国の宋時代に皇帝の命により編集された青銅器図録「博古図録」から命名された美術館です。それでは早速みていきましょう。
このブログで紹介する美術館
泉屋博古館
・開館:1960年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、府・市観光協会HPより転載)
※なお、東京にも別館を設けています。(東京の回で紹介予定)
住友家が蒐集した美術品、中国古代青銅器を中心に収蔵展示
・住友家が蒐集した美術品の保管、調査研究、展示公開を主な目的として、設立された美術館。館名の「泉屋」は江戸時代の住友家の屋号、「博古」は中国・宋時代の青銅器図録「博古図録」にちなんでいます。昭和35年(1960年)、住友吉左衛門より中国古代の青銅器の寄贈を受けて以降、順次収蔵品を拡大、昭和56年(1981年)より京都にて広く一般に美術品の公開を開始し、平成14年(2002年)には東京に分館(現 泉屋博古館東京)を開設。1980年代に加わった中国の書画,茶道具などの美術工芸品を合せ、収蔵品は約1700点。所蔵品の中心をなすのは中国古代青銅器 577点で住友コレクションとして世界的に有名。平安時代のの「線刻釈迦三尊等鏡像」と閻次平筆と伝えられる「秋野牧牛図」 (南宋時代) は国宝に指定されている。
<左から線刻釈迦三尊等鏡像、秋野牧牛図>
泉屋博古館(京都) 年表
・1960年、住友家旧蔵の美術品を保存、公開するため財団法人 泉屋博古館を設立。(名称は住友家の江戸時代の屋号「泉屋」と中国・宋時代の青銅器図録「博古図録」にちなむ)
1961年、住友有芳園内の銅器庫にて一般公開。以降、昭和44年まで秋季に2週間程度の一般公開を実施。
1970年、京都本館1号館竣工。1号館で青銅器一般公開を実施。以降昭和54年まで秋季に2週間程度一般公開。
1980年、登録博物館認可。
1981年、この年より春秋の8ヶ月間青銅器を一般公開。またこの年より昭和62年5月まで、住友有芳園旧銅器庫にて中国書画を5月と10月の各2週間一般公開。
1983年、ヒョウ氏編鐘12器音高測定実施(大阪音楽大学協力)。
1984年、泉屋博古館紀要創刊(前年より研究活動を本格的に開始)。第1回講演会(講師/樋口隆康、以降毎年開催)。
1986年、2号館竣工。
1987年、10月24日から11月28日まで新館増築記念特別展。以降1号館にて青銅器展と2号館の新展示室で企画展を開催。
1988年、「茶道具」展で新収茶道具初披露。
1995年、「日本書画新収名品」展開催。以降、1994年(平成6年)受贈品を順次公開。
2000年、「開館40周年記念住友コレクション名品選」展開催。
2002年~05年、SPring-8を利用した古代青銅鏡、ほか青銅製品の放射光蛍光分析実施(7次にわたり実施)。
2004年、特別展 「金銅仏 ―東アジア仏教美術の精華―」開催。青銅器展にミュージアムボランティア導入。
2006年、学芸棟新築、収蔵庫改築、その他改修工事(~2007年5月)。
2007年、青銅器展リニューアル「中国青銅器の時代」
2010年、「泉屋博古館創立50周年記念 住友コレクションの近代洋画」開催。「泉屋博古館創立50周年記念 住友コレクションの中国美術」開催。「泉屋博古館創立50周年記念 住友コレクションの日本美術」開催。
2015年~16年、住友春翠生誕150周年記念展を京都本館・東京分館にて開催。
2016年、青銅器館展示リニューアル
2019年、住友財団修復助成30年記念「文化財よ、永遠に」展を、住友財団・当館・東京分館および東京国立博物館・九州国立博物館との共同企画により同時期開催。
2020年、「開館60周年記念名品展Ⅰモネからはじまる住友洋画物語」開催。「開館60周年記念特別展 瑞獣伝来 -空想動物でめぐる東アジア三千年の旅」開催。「開館60周年記念名品展Ⅱ泉屋博古 #住友コレクションの原点」展を開催。
2021年、シンボルマーク/ロゴタイプ発表。
主なコレクション
・青銅器の美しい装飾をたどれるよう少し画像を大きくして掲載しています。※全てHPからの転載
青銅器
国宝、重要文化財など
・歴史区分は日中韓混合で表記しています。
国宝
<伝閻次平(南宋時代)>
<線刻仏諸尊鏡像(平安時代)>
重要文化財
<虎卣(商時代後期)>
<藤原信実(鎌倉時代)>
<八大山人(清時代)>
<石濤(清時代)>
<徐九方(高麗時代)>
<阿弥陀如来坐像(平安時代)>
その他主要作品
<伊藤若冲(江戸時代)>
<堆黄龍図円盆(明時代)>
<魁星像(明時代)>
<舎利石函・鍍金舎利槨・舎利棺(唐時代 乾元年間)>
…すごいコレクションの数々ですね(汗)
青銅器含めこの質・量のコレクションは故宮か東京国立博物館(トーハク)にしかないと思っていました…。
(付録)住友吉左衛門とは
・現在の住友グループの礎を築いた吉左衛門(春翠)氏、家業の銅山経営をはじめ、様々な事業の拡大と近代化を推し進める一方、芸術文化にも高い関心を示し、1900(明治33)年に大阪府へ図書館の建設費用と図書購入費を寄付するなど、文化的な社会事業にも大きな足跡を残します。
一方で吉左衛門は茶の湯や能楽といった日本の古典芸能を嗜み、邸宅の床の間には四季の移ろいを寿ぐ日本画を飾るなど、財界きっての数寄者として風雅に遊びました。また中国文人への憧れから、文房具に囲まれた書斎で煎茶や篆刻てんこくを愉しんだそうです。
さらに実兄である西園寺公望の影響を受け、積極的に同時代の洋画家たちを支援した吉左衛門氏は、自身も風光明媚な須磨の海岸に洋館を建て、当時としては先進的な洋式の暮らしを楽しみます。このように吉左衛門氏の多岐にわたる文化へ関心は古今東西の優れた美術品を収集する力となりました。
とりわけ古銅器類の収集は煎茶趣味をきっかけとしていますが、家業の産銅にちなむこともあって、吉左衛門氏が最も力を入れて取り組んだ分野で、質と量ともに世界有数の青銅器コレクションとして知られています。吉左衛門氏はこれらのコレクションを秘蔵するのではなく、展覧会をはじめさまざまな機会に広く公開して青銅器に対する認知度を高め、さらには「泉屋清賞(せんおくせいしょう)」や「増訂泉屋清賞」といった豪華図録の刊行を通じて、研究の分野にも大きく寄与しました。
※住友吉左衛門(春翠)像(美術館HPより)
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