環日本海のゲートウェイに位置する現代型美術館 新潟県立万代島美術館

アートな場所

こんにちは。前回のブログに続き、今回はその姉妹館のご紹介です。
こちらの方は、新潟市に位置した現代型の美術館になっているようです。では早速。

このブログで紹介する美術館

新潟県立万代島美術館

・開館:2003年
※長岡市の本館から10年後の開館です。「近代」が「万代島」になっており、館名としては姉妹館というのを強調したいのでしょう、敢えて似せているようです。(それにしても、なぜ長岡市の「近代」に対し「現代」などではなく、「万代島」としたのでしょう。逆に本館の方はなぜ地名である「長岡」や「千秋」にしなかったのか…これはまた後ほど。)

・美術館外観(以下、画像は美術館HP及び県観光協会HPより転載)

→めっちゃ「海(正確には信濃川の最下流)」が見えてますね…私の感覚では美術品って潮風にとても弱いので、こんなに海近に建てている美術館ってあんまり記憶にないのですが…作品保管など、そのあたりのノウハウ気になります。

・場所
新潟県立万代島美術館 – Google マップ
→複合施設「朱鷺メッセ」内に位置しているようです。
※朱鷺メッセ(ときメッセ)は、新潟県新潟市中央区万代島に所在する、コンベンションセンターとホテル・業務施設などを内包する超高層建造物から成る複合一体型コンベンション施設。信濃川河口に近い新潟港西港区(新潟西港)の一角を国際交流・経済産業振興の拠点として整備する「万代島地区再開発事業」によって建設。
1992年に新潟県が整備方針を決定、続いて民間側による複数の開発構想が提案され、翌1993年に県、新潟市、民間側33の企業・団体による「万代島再開発事業化研究会」が設立。研究会はその後「万代島再開発推進協議会」に改組され、1996年に「万代島再開発事業マスタープラン」を策定し、県のコンベンション施設と民間主体の高層ビルとを一体的に整備する方針が決定し2003年に竣工。

環日本海のゲートウェイに位置する現代型美術館

・長岡市にある新潟県立近代美術館の分館として2003年7月オープン。信濃川の河口をのぞむ新潟市万代島地区の複合施設「朱鷺メッセ」内にある、都市型の美術館です。美術館の基本方針は、ますますますます多様化していく「現代の美術」における新しい価値を積極的に発掘するとともに、環日本海のゲートウェイ新潟市に位置する美術館として、近隣アジア諸国の美術にも注目しているそう。新潟県立近代美術館と共有する約6,000点の収蔵品を活用した所蔵品展や、国内外の優れた美術を取り上げる企画展を通じて、多くの皆様に芸術文化に親しむ機会を提供し、やすらぎと活力を与えることのできる美術館となることを目標とされているようです。

コレクション方針

・所蔵品は新潟県立近代美術館(長岡市)との共有となっているそうです。珍しい形態ですね。これまで収蔵してきた6,000点の作品に加え、万代島美術館では、「現代の美術」の収集にも力を注いでいるそうです。

主なコレクション

<森村泰昌>

<福田美蘭>

<斉藤典彦>

<野見山暁治

→本ブログ参照:100年を生きる画家、野見山暁治 人はどこまでいけるか

<中村一美>

<菅原健彦>

<宮崎進>

<日高理恵子>

<千住博>

<中野嘉之>

<岡村桂三郎>

<横山操>

→詳しい作品解説などより詳細が知りたい方は、館HPコチラをご参照ください。(https://banbi.pref.niigata.lg.jp/collections/collections/

長岡の近代美術館と結構力点置いている作風違いますよね。面白いです。

(付録)なぜ「万代島」?

・館名にもわざわざ用いられた「万代島」…気になりますよね。まずは万代島の歴史について。

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・1968年(昭和43年)の住居表示施行に伴い付与された町名。信濃川の右岸、柳都大橋下流側に位置する。大型ホールやコンベンション施設などを内包する朱鷺メッセや、佐渡汽船のフェリーターミナルがあり、対岸の地域には旧新潟魚市場の跡地に整備された専門店複合型商業施設「にぎわい市場 ピアBandai」がある。いずれの施設もみなとオアシスに登録されている。

・万代地区で最も信濃川の下流側に位置する万代島は元々、萬代橋の右岸下流側に存在した信濃川の中州であった。昭和初期の埋立てによって右岸側と陸続きとなり、新潟港(現在の同港西港区)の区域の一部として、戦前から戦後にかけて貨物駅や魚市場などの港湾施設が置かれた。

・1969年(昭和44年)に新港区として東港区が開港以降、西港区の貨物港としての役割が縮小した事から、万代島では1980年代以降、本格的な都市開発が進められた。

・2007年(平成19年)、同地区内の新潟魚市場が郊外へ移転することを受け、これを契機に万代島地区の更なる交流拡大と拠点性向上を目指そうと、跡地を利用したにぎわい空間の創造に着手(第1期事業)。この事業により2010年(平成22年)に市民市場「ピアBandai」を開設。

・同時に新潟漁業協同組合が対岸へ移転したため、その跡地の利活用について検討(第2期事業)。この事業では、かつて水産物の荷捌施設として使用された建物を改修した屋内広場と、屋外広場とで構成された「万代島多目的広場」を整備し、港の新たな交流拠点として2018年(平成30年)に全面供用開始。
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→この中州、埋め立て地ではなく、信濃川下流域に元々あった土地のようですね。お魚関係の組織が移動したため、その活用法が探られた結果、県・市の肝いりで複合施設開発が進められたそう。この中州での開発を聞いて、先日の石ノ森さんのマンガッタン計画を思い出しました…うーん、ヒトはこういう川の三角地帯に憧れるのかもしれませんね。

(付録)万代島地区の目指すべき姿

調べていると「万代島地区の目指すべき姿」というこのエリアを再開発するにあたって2009年(平成21年)に事務局側が提言したコメントが残っていました。それは以下のコメントです。

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・新潟市は、信濃川の舟運と日本海の海運が交差する河川港新潟とともに発展してきた『港町』であり、開港 5 港の一つとしてかつては異国を感じる数少ない町でもあった。しかし、日本の近代化の過程で、多くの港町がそうであったように港の郊外化が進み、同時に都市が拡大し新潟の町から港のにおいが薄らいでいってしまった。現在の新潟市には「港町らしさ」が感じられないという声も多く聞かれる。そこに暮らす市民でさえ新潟市が港町であることの自覚が希薄であることも否めない。

・これからの街づくりには、少子高齢化やグローバリゼーションといった荒波を乗り越える活力を生み出す機能が強く求められるだろう。日本海政令市としての新潟の広域的役割はそこにある。しかし一方で、ここに住む人々が地域の文化を大事にし、他に誇れる愛着のもてるまちづくりを進める重要性も強調されるべきであろう。住む人が魅力を感じられない街は活力を生み出す源泉を持たないからだ。

・我々は、まちづくりの重要テーマの一つとして、“みなとを感じる”ことができる都市を目指すべきだと提案したい。そしてそれを進めるとすれば、万代島地区をその先導的な役割を担うべき地区とすべきと考える。なぜならば、①当地区は郊外化が進んだ港の中で、唯一とも言える市街地に近接した港であること、②そこには、佐渡汽船を始め、港を実感させる造船や水産などの機能が息づき、全国から集散する漁船も多くそれを間近に感じられること、③平成 15年に複合一体型コンベンション施設「朱鷺メッセ」が立地して以来、万代島地区は上質でシンボル性の高い産業・文化・芸術の交流発信地として広く認知されてきていること、④「りゅうとぴあ」や「みなとぴあ」、「やすらぎ堤」などとともに信濃川沿い一帯が市街地の中で広がりを持った貴重な公共空間であることなど、当地区の優位性が際立っているからである。
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→これでだいたいのネーミングの想い、概要が見えてきましたね。「美術館」という湿度や潮風に弱い施設であるにも関わらず万代島に立地する理由…それはそこに住む人たちがここなら古き良き新潟の「みなとを感じる場所」であるからなのでしょう。それこそが現代の荒波を乗り越える活力を生み出すからだと。

一見すると矛盾があるような事象でも突き詰めれば必ず”理由”があるものですね。新潟県立近代美術館、新潟県立万代島美術館、これもまた勉強になりました。

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