恐らく群馬県で一番最初にできた美術館ですね。
先日に続き、今日は県立美術館として最初に高崎市にオープンした美術館です。では早速。
このブログで紹介する美術館
群馬県立近代美術館
・開館:1974年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県観光協会HPより転載)
※磯崎新さんの設計・建築です
→そういえば、ここも新潟と同じく、1館目は「近代」、2館目は「館林」と美術館の冠のコンセプトを時代区分とするか地名とするか分けてネーミングされていますね。恐らく、流行りもあるのでしょうが、「館林」という地名を残したかったという市民の想いがあるのかもしれませんね。
成長発展する自由な発想の美術館
本館の館長:岡部昌幸さん(兼:帝京大学大学院文学研究科日本史・文化財学専攻教授)のコメントがありました。ここ最近見た美術館連載の中ではもっとも美術と美術館、そして社会や地域、そこに住む人たちとの関係性について解りやすく明示した文章でしたので、(言葉の雰囲気を害さないよう)本文をそのまま掲載しておきます。ちなみにお顔はこんな人。
※美術館HPより転載
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・美術館が素晴らしいのは、成長発展すること、そして自由な精神だと思います。私は1980年代より複数の美術館の建設、運営に関わってからおよそ40年になりますが、その間の国内外の美術館の変化と成長はめざましく、美術館の存在が一変したように思えます。まず、美術館の収蔵作品や展覧会で扱う美術の定義とジャンルが拡大、越境しました。1980年代半ばにおいては、美術館では写真や建築、ファッション、ポスター、装飾美術、漫画・アニメーション、書籍・挿絵、書は、まだ芸術として十分に位置づけられておらず、企画展やコレクションは大変珍しいものだったのです。そのすべてのジャンルに関心をもち携わった私は、しばしそれまでの美術界と社会の常識の壁と、縦割りの専門性に突き当たり、驚いたものです。また「定評のある美」だけでなく、見失われた美の再発見をライフワークとし、さまざまな美術・美術家の研究・顕彰を行ってきた私は、この40年間に、そうした美術家の多くが、県立、市立美術館などによって地域の作家として研究、収集、展示され、再評価され位置づけられるのに助けられました。さらに、美術館で大きく成長発展した教育普及活動や、ライブラリー、アーカイブほかの美術情報ネットワークは、美術を国内外の社会全体に役立つものとして広げ、発信しています。そして多方面におよぶ現代の美術は、個人の才能だけでなく、広く時代の精神と人間の活動、歴史、文化を美の「かたち」として残す、地域と社会にとって掛け替えのないものとなっています。現代の美術館はそれらすべてに大きく関わっており、そのために十分な機能を備えた組織と建築があり、しかも象徴として存在していることを、その代表として重く認識しています。最初は誰でも初心者です。美術館が美や美術の出会いの泉となって、それが川の流れのように、しだいに大きな学びや喜びに成長発展することを願っています。(岡部 昌幸)
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主なコレクション
・群馬県ゆかりの作家たちの作品、日本の近代美術、海外の近代美術、現代の造形表現、そして、織物の地、群馬にふさわしい染織作品など、収蔵作品は2022年3月現在で2,700点以上となっているそう。また、日本と中国の古書画による「戸方庵(こほうあん)井上コレクション」229点を所蔵。ここでは特徴的な収蔵品として戸方庵井上コレクション※を載せておきます。
※群馬県高崎市出身、高崎白衣大観音の建築で知られる井上工業㈱元社長で実業家・井上房一郎(いのうえ ふさいちろう)氏(1898~1993)が集めたコレクション。1920年代にパリに留学されるなど芸術への造詣が深く、帰国後は群馬県の文化推進者となる人物。敗戦直後、高崎市民オーケストラ(現在の群馬交響楽団)の設立、アントニン・レーモンド設計による音楽センターの建設、高崎哲学堂設立運動など、数多くの文化支援を精力的に実施。そして1962年、群馬県立近代美術館の創立を期に、収集された200点もの古美術品を「戸方庵井上コレクション」として同館に寄贈。現在では230点を有する一大コレクション。
→そんな群馬県に多大な貢献をした井上房一郎さんとその会社:井上工業㈱。業績悪化により2008年に経営を閉じているそうです。一時代を築いたコレクターとその会社が残念ながらもこうやって幕を閉じるのもまた美術界において起こりうることです。
戸方庵井上コレクション
<金大受>
<伝蛇足>
<雪村周継>
<長谷川宗宅>
<俵屋宗達>
<円山応挙>
<谷文晁>
<浦上玉堂>
→非常に迫力ある日本美術の数々です。群馬県に足を運ばれた際は、市民・県民として集められた多種多様なコレクター収集品とその歴史について学べる県内の各美術館へぜひご来館ください。
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