利益三分主義の象徴、生活の中の美を見つけ、むすび、そしてそれらをひらいていく場所 東京:サントリー美術館

東京都

 こんにちは、マウスです。
 本ブログ、全国の美術館をご紹介してきましたがいよいよラスト十数館となりました(詳しくは数えていませんが…)。既に大中小、著名な館、著名でなくともキラリと光るような館、また1人の作家を追い求めて展示している館、ユニークなコレクターや館長が前面に立っている館など多種多様な美術館がありました。

 その中でもこれからご紹介する美術館は、仮に美術館に大御所というポジションが存在するのならまさにその表現がしっくりくるような美術館ばかりです。どの美術館もそのブランド力、歴史、コレクションの質・量などをとってみても「国内有数の、国内唯一の」という表現が最適な館ばかりかもしれません。(お笑い界でいうタモリさん、ビートたけしさん、明石家さんまさんみたいな存在でしょうか…)

 そんな美術館、僭越ながら私の方でご紹介していきます。1館目は都内の一大アートスポット六本木エリアの回で後ほどご紹介とスキップした美術館です。早速見ていきましょう。

このブログで紹介する美術館

サントリー美術館

・開館:1961年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、都、観光協会HPより転載)

・場所:サントリー美術館 – Google マップ

利益三分主義の象徴、生活の中の美を見つけ、むすび、そしてそれらをひらく場所

・1899年のサントリー創業者:鳥井信治郎氏の経営理念「利益三分主義」のもと、後を継いだ二代目社長:佐治敬三氏が、日本の高度成長期の中、いちはやく心の豊かさの重要性を認識、文化活動を推進するために1961年に建設した美術館(当時立地は丸の内)。

 2007年に、六本木・東京ミッドタウンに移転しました。 サントリー美術館は『生活の中の美』を基本理念として、ミュージアムメッセージ『美を結ぶ。美をひらく。』を掲げて活動を展開。現在は年間約6回の企画展を11名の学芸員と共に開催し、年間約30万人の来場者が訪れます。

 収蔵品は、絵画、陶磁、漆工、染織など日本の古美術から東西のガラスまで、国宝1件、重要文化財15件、重要美術品21件を含む約3,000件に及んでいます。 美術館HPには「『生活の中の美』を表現し、感動に出会っていただける企画展の開催をし、多くの人々にとっての『都市の居間』となる美術館を目指していきたい。」と記載されています。

基本理念・メッセージ

・以下は、美術館の基本理念・メッセージ(HPからの転載)です。

生活の中の美

・美しい、と感じるこころは、だれもがもっています。私たちは、毎日の生活の中で美を味わい、愉しんできました。絵や彫刻だけが美ではない。日常使う道具や調度に美を感じる。庭の石や植栽にも、人の立ち居振る舞いにも美を感じる。この国独特の美に対する感受性に守られ、育てられてきた名作、名品があります。そんな「生活の中の美」を、ひとりでも多くの方に愉しんでいただきたい。それが、1961年の開館以来、変わることのない私たちの思いです。

美を結ぶ。美をひらく。

・「美を結ぶ。美をひらく。」これは、六本木に移転して以来のサントリー美術館のミュージアムメッセージです。たとえば、古きものと新しきものを結ぶ。中世や近世、近代といった時代の枠組みに縛られずに美と美を結ぶ。たとえば、東と西を結ぶ。国や民族といった文化の境界にとらわれずに美と美を結ぶ。自由に大胆に結ぶことから、新しい発見がひらかれる。知的感動がひらかれる。結ぶことで人と美に新しい関係をひらいていきたい。「結ぶ」と「ひらく」。ふたつの言葉にこめた思いを、私たちの活動の柱といたします。

主なコレクション

・「生活の中の美」を基本理念に、展覧会活動と並行してコレクションの充実を図ってきました。現在では、絵画、陶磁、漆工、染織などの日本の古美術から東西のガラスまで、約3000件の作品を収蔵しています。

漆工

漆工 名品ギャラリー サントリー美術館
東京・六本木、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館。国宝、重要文化財を含む約3,000件を所蔵。日本美術を中心とした企画展を開催。名品ギャラリー[漆工]の一覧です。

陶磁

陶磁 名品ギャラリー サントリー美術館
東京・六本木、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館。国宝、重要文化財を含む約3,000件を所蔵。日本美術を中心とした企画展を開催。名品ギャラリー[陶磁]の一覧です。

絵画

絵画 名品ギャラリー サントリー美術館
東京・六本木、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館。国宝、重要文化財を含む約3,000件を所蔵。日本美術を中心とした企画展を開催。名品ギャラリー[絵画]の一覧です。

ガラス

https://www.suntory.co.jp/sma/collection/gallery/list?code=5
→末尾の番号が3から5へ突然とび番号になったのが気になります…。元々なにかのページがあったのか駐車場的な忌み番号を意識したのか…だとしたらサントリーほどの大企業がそういった細やかなところまで意識しているのは、何となく「神は細部に宿る」ではないですが、創業者の一つひとつの細やかな積み重ね、理念がこういったところにまで生きていることを何となく感じたマウスです。

染織

染織 名品ギャラリー サントリー美術館
東京・六本木、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館。国宝、重要文化財を含む約3,000件を所蔵。日本美術を中心とした企画展を開催。名品ギャラリー[染織]の一覧です。

金工

金工 名品ギャラリー サントリー美術館
東京・六本木、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館。国宝、重要文化財を含む約3,000件を所蔵。日本美術を中心とした企画展を開催。名品ギャラリー[金工]の一覧です。

(参考)サントリー美術館名品ギャラリー:https://www.suntory.co.jp/sma/collection/gallery/

建築について~隈研吾さんからのメッセージ

・さて、サントリー美術館、隈研吾氏がデザインしたこともあり美術館の建造物としても有名です。

こちら、日本の伝統と現代を融合させた「和のモダン」を基調に、安らぎと優しさに溢れた空間を実現したとの事。外観は白磁のルーバー(縦格子)に覆われ、館内は木と和紙を意匠に用い自然のぬくもりや柔らかい光を表現しています。また、館内の随所で床材にウイスキーの樽材を再生利用しているとの事でこのあたりもサントリー色が出ていて面白いところです。

 そんなサントリー美術館の設計者である隈研吾氏のコメントが「なるほどなー」と思わせられる内容でしたので掲載しておきます。
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都市の中の「居間」として、この美術館建築を構想した。
 背景には、都市の室内化という現象がある。通信と移動のテクノロジーが、かつて物と物との間に存在していたすべての距離を消滅させ、都市全体を一つの大きな家の「室内」へと変貌させつつある。その大きな家の中には廊下はたくさんあるし、食堂もたくさんあるが、ゆったりとくつろげる「居間」はない。時間がゆっくりと流れ、親しい人と人、人と物との間で、くつろいだ会話が成立するような「居間」は見つからない。サントリー美術館が東京というノイジーな都市の中で、そんな静かな「居間」となって欲しいという想いで、図面をひいた。

 20世紀の人々が美術館に求めていたのは、大げさな「都市のモニュメント」であったが、21世紀の人々が求めるのは、安らげる「居間」である。そして実は、早くから「生活の中の美」をテーマとして活動してきたサントリー美術館ほど、「居間」に相応しい美術館はない。この美術館は、世界の新しい潮流の先端にあって、あるべき姿を示すだろう。

 「居間」の建築は、大げさなこけおどしであってはならないと考えた。生活で慣れ親しんできた、人に優しい素材―例えば肌に優しい白磁、湿度を保つ桐、樽に使われるホワイトオーク―を用いて、この「居間」は構成されている。日本の伝統的な窓の意匠である「無双格子」にヒントを得た光の調整装置を公園の緑の前面に設けた。この装置が外の光と風景を和らげて、「居間」の室内へと運んでくる。日本人は、こんな装置をうまく使って、四季の流れ、時の流れを楽しんできた。

美しいアートと、優しい素材と、柔らかな光に包まれて、ゆっくりと時間が流れ出す。それは、アートと人間との間の新しい関係性を人々にじっくりと味わってもらうための場所となるであろう。(建築家、サントリー美術館設計:隈研吾)
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(参考)サントリーとサントリー美術館の歴史

・それでは最後に、サントリー美術館とその母体であるサントリー株式会社の年表を振り返っておきましょう。

サントリー美術館の歴史

・1899年 (明治32) 2月1日 鳥井信治郎、鳥井商店を開業(サントリー創業)。
・1921年 (大正10) 株式会社寿屋を設立。 社会福祉団体、邦寿会を設立。
・1961年 (昭和36) 6~9月 小倉山蒔絵硯箱(重要文化財)、菊蒔絵文台、南蛮屛風(伝狩野山楽筆)を収蔵。 11月20日 サントリー美術館、高松宮宣仁親王殿下によるテープカットで開館。東京都千代田区丸の内一丁目10番地パレスビル9階。初代館長・佐治敬三(サントリー二代目社長)。 11月21日 「開館記念 生活の中の美術」を開催(~12月20日)。
・1962年 (昭和37) 6月21日 菊蒔絵文台が重要文化財に指定。 6月 浮線綾螺鈿蒔絵手箱(重要文化財、当時)を収蔵。
・1964年 (昭和39) 5月26日 浮線綾螺鈿蒔絵手箱が国宝に指定。
・1967年 (昭和42) 9月 善教房絵巻(重要文化財)を収蔵。 11月7日 北海道札幌市の今井百貨店で、初めての館外展「サントリー美術館名品展 生活の中の美」を開催(~21日)。
・1968年 (昭和43) 6月7日 メキシコ合衆国メキシコシティーのメキシコ国立芸術院で初の海外展「日本伝統美術」展を開催。好評により会期を2週間延長。入場者数は71,154人にのぼる。 12月 桐竹鳳凰蒔絵文台・硯箱(重要文化財)を収蔵。
・1971年 (昭和46) 3月20日 日本返還前の沖縄市の琉球政府立博物館(現在の沖縄県立博物館・美術館)で「日本古美術―くらしの中の美―」を開催(~4月18日)。
・1974年 (昭和49) 7月22日 ソビエト連邦モスクワ市のプーシキン美術館で「近世日本の生活美―15世紀から19世紀まで」を開催(~8月30日)。
・1975年 (昭和50) 5月22日 赤坂見附に移転開館。東京都港区元赤坂一丁目2番地3号 東京サントリービル11階。「開館(赤坂)記念 日本の美 その伝統と創造」を開催(~6月29日)。 10月14日 ソビエト連邦のザゴルスク・コローメンスコエ両博物館のコレクションによる「ロシアの工芸とイコン―16世紀から20世紀初頭」を開催(~11月23日)。初の海外コレクションによる大型企画展。
・1977年 (昭和52) 12月 彫刻家・朝倉文夫氏のガラスコレクション(薩摩切子・乾隆ガラスなど、日本・中国のガラス多数)を収蔵。
・1978年 (昭和53) 5月25日 アメリカ合衆国ニューヨーク市のジャパンハウス・ギャラリーで「風俗図屛風展」を開催(~7月9日)。
・1979年 (昭和54) 6月 泰西王侯騎馬図屛風(重要文化財)を収蔵。 8月7日 日本中世絵入本文学の国際会議に合わせ、「おとぎ草子・奈良絵本―特別展示・海外所蔵本―」を開催(~9月30日)。
・1983年 (昭和58) 9月15日 アメリカ合衆国ニューヨーク市のジャパンハウス・ギャラリーで「秋草・流水」展を開催(~11月13日)。 10月21日 サントリーホール建設に合わせてサントリー音楽文化展「素顔のベートーヴェン」を開催。以後1992年まで9回にわたりサントリー音楽文化展を開催。
・1984年 (昭和59) 6月6日 四季花鳥図屛風(伝土佐広周筆)が重要文化財に指定。
・1986年 (昭和61) 12月9日 「開館25周年記念 工芸―世紀末の旗手たち」開催(~1987年2月1日)。初めての現代美術の展覧会。
・1987年 (昭和62) 2月10日 「The New York Public Library Collection TALES OF JAPAN―物語絵―」を開催し、ニューヨーク・パブリック・ライブラリーの日本美術コレクションを公開(~3月22日)。
・1988年 (昭和63) 9月6日 「日本の物語絵 アイルランド・チェスター・ビーティー・コレクション」を開催(~10月16日)。 10月25日 「サントリー美術館大賞展’88」を開催。以後1998年まで「サントリー美術館大賞展」を8回開催。
・1989年 (平成元) 10月21日 「藤ノ木古墳とその時代」を開催(~11月19日)。総入場者数は75,503人にのぼる。
・1991年 (平成3) 10月3日 ベアトリックス女王陛下の御訪日を記念して、「開館30周年記念IV オランダ美術と日本 1680―1991」を開催(~11月8日)。
・1994年 (平成6) 5月 エミール・ガレのガラス作品など多数(菊地保成コレクション)を収蔵。 10月 佐竹本・三十六歌仙絵 源順(重要文化財)を収蔵。
・1996年 (平成8) 6月27日 南蛮屛風(伝狩野山楽筆)、白泥染付金彩薄文蓋物(尾形乾山作)、色絵花鳥文八角大壺が重要文化財に指定。
・1997年 (平成9) 6月30日 色絵五艘船文独楽形鉢が重要文化財に指定。
・2000年 (平成12) 12月4日 染付松樹文三脚皿が重要文化財に指定。
・2004年 (平成16) 12月30日 「ありがとう赤坂見附 サントリー美術館名品展《生活の中の美 1975~2004》」を終了(12月18日~)。移転のため一時休館。
・2007年 (平成19) 3月30日 東京ミッドタウンに移転開館。東京都港区赤坂九丁目7番地4号 東京ミッドタウン ガレリア3階。「開館記念展I 日本を祝う」を開催(~6月3日)。
・2009年 (平成21) 9月1日 公益財団法人サントリー芸術財団を設立。
・2011年 (平成23) 3月19日 「開館50周年記念『美を結ぶ。美をひらく。』I 夢に挑む コレクションの軌跡」開催(~5月22日)。
・2012年 (平成24) 12月 病草子断簡(不眠の女)(重要文化財)を収蔵。
・2015年 (平成27) 6月 酒伝童子絵巻(狩野元信筆)が重要文化財に指定。
・2016年 (平成28) 4月 清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤(重要文化財)を収蔵。
・2017年 (平成29) 六本木開館10周年。年間を通じて記念展および記念イベントを開催。
・2019年 (令和元) 11月11日 改修工事のため休館。
・2020年 (令和2) 7月22日 リニューアル・オープン。リニューアル・オープン記念展開催。

サントリー株式会社の歴史

・こちらは本文に掲載できる文字情報はありませんでしたが、サントリーのHP上以下URLにて社史が掲載されていましたので、そちらをご覧ください。

〇サントリー社史:https://www.suntory.co.jp/company/history/

※今は「水と生きる」をコーポレートメッセージにグローバルに展開されているようです。これは、「サントリーという企業の源泉ともいえる水を大切にしたい。そして、水のようにしなやかな企業でありたい。水のように躍動し、立ち止まらず、育ち、成長を続ける企業でありたい。」というサントリーの想いを水をモチーフに表現したものとなっているそうです。

→そういえば、福岡県の回でご紹介したTOTOミュージアムもそのコーポレートメッセージは「水と地球の、あしたのために」でしたね。「水」に関連する企業が文化事業に熱心なのは、もしかすると偶然ではなく何か関連性があるのではないかとふと感じたマウスです。

…いかがだったでしょうか。本ブログ、六本木に舞台を移しています。サントリー美術館で「生活の中の美」を体感した後は、ぜひもう1館行っていただきたい現代美術の大御所館がありますね。次回は同じ六本木の美術館でもサントリーとはまた180度趣向の異なるその現代美術館をご紹介したいと思います。
引き続き本ブログ「絵本と、アートと。」をよろしくお願いします。

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