狩野派を破門となった浮世絵師。町がまもり、つたえ、つなげるための収蔵庫 高知:絵金蔵

高知県

こんにちは。皆さんは弘瀬金蔵という江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した1人の浮世絵師をご存知でしょうか。この金蔵は結果として狩野探幽の贋作を描いた嫌疑を掛けられ狩野派を破門、その後、出身地の高知県を中心に絵金(えきん)の名前で知られています。今日ご紹介する美術館(アート施設)はこの絵金の作品を町がまもり、後世につたえ、人々をつなげていく収蔵庫のご紹介です。

このブログで紹介する美術館

絵金蔵

・開館:2005年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、市観光協会より転載)

→米蔵を展示施設に改修したものです。

・場所
絵金蔵 – Google マップ

狩野派を破門となった浮世絵師。町がまもり、つたえ、つなげるための収蔵庫

・闇に包まれた展示室で提灯を片手に作品を鑑賞するというユニークな施設。一年中、「神祭」や「絵金祭り」さながらの体験がで可能。館内では、レプリカの芝居絵屏風を2ヵ月に1回入れ替えながら展示。また、小さな覗き穴から作品を見るコーナーには、本物の作品2点を1ヵ月に1回入れ替えながら展示。(貴重な芝居絵屏風に負担を与えないために決められた方針との事)

絵金とは

・絵師・金蔵、略して絵金。江戸時代末期:文化9年(1812年)、金蔵は髪結(床屋さん)の子として土佐藩城下の新市町(現在のはりまや町2丁目)に生まれます。幼い頃より画才のあった金蔵は、江戸遊学などを経て、土佐藩家老桐間家の御用を勤める狩野派の絵師となり、林洞意と号して活躍。しかし狩野探幽の贋作を描いた嫌疑を掛けられ城下追放、狩野派を破門となります。その後、絵金は各地を放浪した後、赤岡に住んでいたおばを頼って滞在していたとされ、町絵師「絵金」として親しまれながら絵を描き、芝居絵屏風を数多く残します。そのような生活の中、二つ折りの大きな屏風に芝居絵を描く「芝居絵屏風」を大成しました。

絵金の贋作騒動

・弘化元年(1844年)頃、土佐藩御用絵師として人気を誇っていた絵金は、城下に住む古物商より狩野探幽の「蘆雁図(ろがんず)」の模写を引き受けます。古物商はこれに探幽の落款印章を施して売り出したため、これが贋作と判断されました。絵金はあくまでも依頼に応じて制作したものであり、贋作を作ったつもりはないと申し開きしますが、それは認められず、御用絵師の職を辞することに。

絵金蔵の使命

まもる

・年に一度、夏の祭礼の暗闇に現れる百数十年の昔に描かれた絵金の芝居絵屏風。年月を重ね、ずいぶんと傷みが見られるようになった今、その作品群を長期保管しています。

つたえる

・闇の中に蝋燭の灯りで浮かび上がる極彩色の芝居の世界。祭礼の夜を彩る絵金の強烈な赤“血赤”は、邪気を払う魔除けの色として庶民に受け入れられました。当時の土俗信仰や大衆文化との関わりがうかがえ、絵金観から見える文化をつたえていきます。

つなげる

・まちの人たちの話し合いから生まれた絵金蔵には、絵金を守るとともに、「まちを元気にしたい」という思いが詰まっているそうです。まちの人の憩いの場として、新しい文化発信の場として、「絵金蔵」から生まれる新しい「縁」を紡ぐこと。そして、次の世代へと繋げること。そんな縁結びの「場」をめざしています。

【展示室1】闇と絵金~闇夜に開く極彩色の芝居絵

・絵金が極彩色の絵の具と圧倒的な筆の勢いで描いたのは六尺四方、二曲一隻の芝居絵屏風。その修羅を描いた芝居絵の世界は、蝋燭の灯に照らされ揺らめき、動き出さんばかりの迫力があります。絵金の芝居絵屏風は、闇の中にあってこそ圧倒的な存在感と異彩を放つと言われており、「絵金蔵」では、須留田八幡宮神祭の夜に倣って、展示室を薄暗くし、芝居絵屏風を観覧することが可能です。

【展示室2】蔵の穴~年に一度の文化を守るための日常

・まちに残っている23枚の芝居絵屏風は、今まで町内各区で保管されていました。しかし、年に一度とはいえ商家の軒先に長年晒されてきた絵には傷みが見られるようになってきています。そこで、この赤岡の文化と芝居絵屏風を後世に残していくための収蔵庫としてつくられたのが「絵金蔵」で、本物は壁に穴を開けて覗き見風に観覧するユニークな方法が採られています。

(参考)絵金蔵公式パンフレット

…いかがでしょう。幻想的な絵金の世界。それにしても当時の藩を揺るがす贋作事件の嫌疑をかけられた絵金、野に下った後もこうやって赤岡町の人たちに200年後まで親しまれて文化が引き継がれているのを見るにその真相がどうだったのかはもう分かるような気がしますね。

古今東西、才能に対するねたみや陰謀というのは存在するものです。そして歴史は結果的に勝者が塗り替えていくものであることからも、こうやって後世まで敗者側の世界が生き続けていることは珍しいかもしれませんね。そんな世界観も魅力的な絵金蔵、ぜひ皆さんも毎年7月第3土曜日と日曜日に開催される夏祭り「絵金まつり」も含め一度足を運んでみて下さい。

※画像は「ツーリズム四国」ホームページより転載(https://shikoku-tourism.com/spot/10058

〇絵金の世界観をよく映した動画も2つほど掲載しておきます。


※更に詳しく知りたい方は私も参考にした以下のブログ「四国電力グループ特設ページ 幕末の絵師弘瀬金蔵の世界を覗く(https://www.yonden.co.jp/cnt_landl/1907/special.html)」が丁寧に解説されており解りやすかったです。ご参照ください。

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