こんにちは、マウスです。
2022年8月31日に北海道:札幌芸術の森美術館からはじまった全国の美術館紹介…いよいよ残り国立館4館を残すのみとなりました。(もちろん、ご紹介漏れしている館もあると思いますが、主要な美術館としてよくメディアなどでご紹介される美術館は結構網羅できたのではないかと自負しています)
この1年弱で毎日1館ずつ、300館近い美術館、博物館などをご紹介してきました。
私のブログでは、「WordPress」と呼ばれるサイトの作成やブログの作成などができるCMS(プログラミング言語で作られているコンテンツ管理システム)の1つを使っていつも記事を作成・投稿しているのですが、それらに含まれる便利機能を使うと普段見慣れた美術館のHPや美術・アートそのものがまた違った見え方がするのが面白いところです。
(例えば、右側に人気記事のランキングを載せていますが、私は基本的に情報をあえて各美術館のHPをベースに記事投稿していますので、そのランキングを見ればどの美術館が一般的に興味が持たれているのかというのが分かるわけです)
それでは早速、こちらは以前ご紹介したサントリー美術館、森美術館、21_21 DESIGN SIGHTなどと同様、東京の一大アートスポット六本木に位置する国立美術館です。
このブログで紹介する美術館
国立新美術館
・開館:2007年
・美術館内・外観(以下画像は美術館HP、独立行政法人国立美術館、都、観光協会HPより転載)
→建築家:黒川紀章さんによって「森の中の美術館」をコンセプトに設計された建物。南側は、波のようにうねるガラスカーテンウォールが美しい曲線を描き、円錐形の正面入口とともに個性的な外観を創り出しています。吹き抜けの1階ロビーからは、このガラス越しに、青山公園など地域の緑にとけこむように植栽された草木の四季折々の眺めを楽しむことができます。
国立美術館に属する5番目の施設として開館、国内最大級の展示スペース(14,000m2)と多彩な展覧会を開催するアートセンター
・芸術を介した相互理解と共生の視点に立った新しい文化の創造に寄与することを使命に、2007年、独立行政法人国立美術館に属する5番目の施設として開館。以来、コレクションを持たない代わりに、人々がさまざまな芸術表現を体験し、学び、多様な価値観を認め合うことができるアートセンターとして活動しています。国内最大級の展示スペース(14,000m2)を生かした多彩な展覧会の開催や、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、さまざまな教育普及プログラムの実施に取り組んでいます。(→あえてコレクションを持たず、展覧会や教育普及プログラムに特化した国立館ということで有名です。なお、「国立新美術館」という名称は全国公募の中から選ばれたそうです。)
事業内容
展覧会―さまざまな芸術表現を紹介し、新たな視点を提起する美術館
・全国的な活動を行っている美術団体等に発表の場を提供する。
・さまざまな分野における新しい表現を紹介し、同時代の芸術の振興に努める。
・現代にふさわしいテーマや知見に基づいて、さまざまな時代や地域の美術を紹介する。
・調査研究の成果を、多様な展示活動を通じて、分かりやすく普及していくことに努める。
情報資料収集・提供―情報資料の収集・公開を通じて人と芸術をつなぐ美術館
・国内の展覧会に関する情報を収集し提供する。
・戦後の国内の展覧会カタログを網羅的に収集し公開する。
・日本の近代以降の美術に関するさまざまな資料を収集し公開する。
教育普及―参加し交流し創造する美術館
・展覧会にあわせた講演会やシンポジウム、ギャラリートークを実施する。
・作家トークやワークショップにより、アートを楽しみ、アートについて語りあうための場を提供する。
・インターンシップやボランティア・プログラムをとおして、美術館における実践的な活動の場を提供する。
・美術館の教育普及事業に関する資料の収集に努める。
→私、前もお伝えしたかもしれませんがこういうコンセプトを提示するときに「~よう努める。」という表現は個人的に避けた方がいいのではないかと思っている人間です。国立美術館関係者も見ているかもしれませんので、一応記載しておきます。
ちなみに現館長の逢坂恵理子さん、2019年から任期を務めていますが、以下の経歴の方です。気になる方もいるかもしれませんので掲載しておきます。
(逢坂恵理子さん 略歴)
・東京都生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。国際交流基金、ICA名古屋を経て、1994年より水戸芸術館現代美術センター主任学芸員、97年から2006年まで同センター芸術監督。07年から09年1月まで森美術館アーティスティック・ディレクター。09年4月から20年3月まで横浜美術館館長。19年10月に国立新美術館長に就任。21年7月からは独立行政法人国立美術館 理事長を兼任。
また、第3回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(1999)で日本部門コ・キュレーター、第49回ヴェネチア・ビエンナーレ(2000)で日本館コミッショナー、第4回(2011)から第7回(2020)の横浜トリエンナーレにおいて、総合ディレクター、横浜トリエンナーレ組織委員会委員長、コ・ディレクター、横浜トリエンナーレ組織委員会副委員長を務める。第69回(2020年度)横浜文化賞を受賞。
→水戸芸術館現代美術センター、森美術館、横浜美術館と主に現代アートを中心にご活躍されてきている方ですね。余談ですが、学芸員の方、(もちろん様々な縁があっての話ですが)このように色んな職場を転々とされる方もいらっしゃれば同じ場所で長く勤められる方もいらっしゃいます。(中には全然関係ない自治体の他部署とかから館長になったりも)
どちらがどうと言うことでもないですが、アーティスト同様、学芸員の方もいろいろな生態系の方々がいらっしゃるようです。(今後目指される学生の方などぜひご参考に)
そんな館長:逢坂恵理子さんの国立新美術館に対するメッセージを掲載しておきます。
館長メッセージ
・新型コロナウイルス感染症に向き合う日々も4年目となりました。一方、昨年2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻は世界の政治・経済のバランスを崩し、対立や混迷を深めました。予期できなかった世界状況のもと、輸送費や光熱費の高騰そして円安などの影響も大きく、美術館運営も新たな課題に直面しています。
明るい未来を予測することが難しい状況ではありますが、2023年の国立新美術館は、未来に向けて、むしろポジティブなテーマの企画展を開催いたします。3月からはじまる「ルーヴル美術館展 愛を描く」のテーマは「愛」。7月からの「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」のテーマは「光」。9月から始まる「イヴ・サンローラン展」は、男性の服装を女性の装いに取り入れ、60年代に初めて女性のパンツスーツを発表し、女性の装いに「変革」をもたらしたサンローランの回顧展です。
これらの展覧会に通底するメッセージは、美、寛容、希望、変化、挑戦、多様性、境界を超える視点です。
今年も、若手・中堅作家がパブリックな空間に展示するNACT View 02「築地のはら ねずみっけ」、NACT View 03「渡辺篤」を初春と秋に開催いたします。
また、公募展も本日から開幕いたしました。今年は予定通りすべての団体が展覧会を開催し、創作の成果を発表するとともに、出控えていた方々もご来館できることを期待しています。
当館では、アーティストやアートを通じて、人々の持つ創造性を刺激し、他者を知り、相互理解を促すような教育普及活動を今後も地道に実施いたします。厳しい時期であるからこそ、対立を回避できるような気づきをひとりでも多くの方に伝えてゆくことができることを願っています。(国立新美術館 館長:逢坂恵理子)
シンボルマークについて
・国立新美術館、そのシンボルマークも有名です。
こちらは、クリエイティブディレクターとして有名な佐藤可士和氏のデザインです。そのシンボルマークに込められた想いについて以下のように述べられています。
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・「新」という日本語のモチーフには、日本の美術館として、様々な新しい試み、先進的で独創的な活動を展開していく存在だということが凝縮されている。漢字をモチーフにすることにより、より多くの人々、特にこれまで美術に関心のなかった人々にも親しみやすく、馴染みやすい存在となることを目指している。
「新」という文字の、全てのエレメント、全ての角は、閉じておらず、開かれている。それは開かれた「新しい場」。そこに人々が、そして美術に関するあらゆる情報が集まり、そして発信される、開かれた窓のような場である国立新美術館の象徴。この窓には、美術と社会、美術と人々との新しい関係、新しい未来を築きたいという願いが込められている。
また、直線と曲線の融合でできたこの文字は、建築の特徴である曲線のガラスカーテンウォールと、それに続く、直線で構成される展示スペースが融合している形状を彷彿とさせる。文字の各エレメントは、国立新美術館の特徴のひとつでもある、巨大な展示空間の中の、変幻自在でフレキシビリティ溢れるパーティションシステムもイメージさせる表現となっている。
基本色は、「緋色と消し炭色」を採用。
新しさや生き生きとした力強さ、インパクトなどをイメージさせる赤の中でも、建築家・黒川紀章氏が国立新美術館の建築で採用なさった日本の伝統色である緋色と消し炭色を用いることによって、より建築とシンボルマークが一体となって国立新美術館の存在を社会にコミュニケーションできるように考えている。
また、緋色と消し炭色という基本色をもった上で、今後の運用に際してのシンボルマーク、ロゴタイプの展開色は敢えて自由、無限としている。これは、幅広い事業内容を特徴とし、コレクションにより性格を規定されない国立新美術館ならではの全く新しいカラーリングの戦略である。
日本で5つ目の国立美術館「国立新美術館」は、コレクションをもたない美術館。
様々な展覧会を中心に、自由度の高い活動を展開する。既存の枠組みに捕らわれず、美術館の新しいあり方を提示するような存在。そして美術に関する膨大な情報を誰もが持ち寄り、そこに人々が集い、得たものを持ち帰ることができる、開かれた美術館であり、新しい美術の「場」。そんな存在を象徴するような、ユニークネスのある巨大な物が、六本木に出現する。
それは日本の美術界にとって、そして社会にとって、大きなニュース、そしてとてもインパクトのある存在になるであろうし、ならなければならない。そんな国立新美術館のシンボルマークやロゴタイプは、建築と共にその「新しさ」「先進性」「独創性」「進化し続ける精神」を象徴した表現でなければならない。
そして、この美術館設立に関わる人々の心に共通して流れる想いを集約し、日本の美術界、現在から未来に向けてのメッセージを社会に対して発信できるような表現でなければならないという思いでシンボルマークをデザインした。(佐藤可士和 2006年7月)
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…さすが佐藤可士和さん、国立新美術館の役割を的確な言葉で示していますね。私個人的には国立新美術館はこのシンボルマークに込められた想いとともに開催されている展覧会をご覧いただくとより感慨深いものになるのではないかと思っています。
それにしても佐藤可士和さんのシンボルマークのコンセプト説明文、素晴らしいですね。
今後広告代理店などやデザイン事務所など、クリエイトな業界に関わりたい方は第一線で活躍するこういうクリエイティブディレクターの言葉をしっかりと見ていただけたら学べることが多いのではないかと思いますね。
企画展、教育普及活動について
・そんなコレクションを持たない国立新美術館、最後に、強みである企画展と教育普及活動の参考ページをご紹介して終わりたいと思います。
企画展
〇国立新美術館 企画展参照ページ:https://www.nact.jp/exhibition_special/index.html
※こちら、2007年の開館から開催したすべての企画展をご覧いただくことができます。
教育普及活動
・展覧会に即した講演会やアーティストトーク、シンポジウムの開催のほか、主に子どもたちに向けて展覧会をわかりやすく読み解くツールとしての鑑賞ガイドを作成。また、さまざまなアートシーンから講師を招いて、多様な視点からアートについて考え体験するワークショップや、10代を対象としたユースプロジェクト、美術館の建築の特徴や機能について紹介する建築ツアーなども開催しています。
講演会・シンポジウム、ワークショップ、建築ツアー
ユースプロジェクト
・2022年より、これからの時代を生きるユースと一緒に「表現」について考え学ぶ場をつくっていく「新美塾!」を開始。導き手となるアーティストとともに、13歳から18歳までのユースたちが身の周りのものごとを再発見しながら、世界の見方を広げたり、表現することの楽しさを学ぶ、半年間にわたるプログラムを開催されています。オンラインとオフラインのミーティングや、「へんな」通信教育、ゲストアーティストのスタジオビジット、美術館の裏側見学などを通して、日常や自分の中に埋まっているクリエイティブの種を見つけていきます。 「どんな職業が自分に向いているか、まだ分からないけど、何かを表現したり、生み出す人になりたい!」そんなふうに思ったことがもし一度でもあったら、ぜひ塾長の下道さんからのメッセージ動画を視聴してみてください。
〇ユースプロジェクトページ:https://www.nact.jp/education/youth/index.html
学校プログラム
インターン、ボンティア
…いかがでしょうか。国立新美術館、個人的には2022年から塾長でアーティストの下道基行さんを中心に活動を展開されているユースプロジェクトがユニークで気になっています。そんな企画展と若者を中心とした教育普及活動に特徴のある国立館、足を運んだこともある方も多いと思いますが、また本ブログをもとに違った視点でご覧いただく機会になれば幸いです。
引き続き、本ブログ「絵本と、アートと。」をよろしくお願いします。
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