○シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝 @森美術館 会期:9/1(日)まで
<概要>
・シアスター・ゲイツ(1973年シカゴ生まれ)は、米国シカゴのサウス・サイド地区を拠点とし、彫刻と陶芸作品を中心に、建築、音楽、パフォーマンス、ファッション、デザインなど、メディアやジャンルを横断する活動で国際的に高く評価されています。
彫刻と都市計画の教育を受けたゲイツは2004年、愛知県常滑市で陶芸を学ぶために初来日し、以来20年以上にわたり、陶芸をはじめとする日本文化の影響を受けてきました。日本やアジア太平洋地域での印象深い出会いや発見、そして米国ミシシッピとシカゴにルーツを持つアフリカ系アメリカ人として生きてきた経験が、彼の創作の礎となっています。アーティストとして文化的ハイブリディティ(混合性)を探求してきたゲイツは、アメリカの公民権運動(1954-1968年)の一翼を担ったスローガン「ブラック・イズ・ビューティフル」と日本の「民藝運動」の哲学とを融合した、独自の美学を表す「アフロ民藝」という言葉を生み出しました。
ゲイツの日本初、そしてアジア最大規模の個展となる本展は「神聖な空間」「ブラック・ライブラリー&ブラック・スペース」「ブラックネス」「年表」「アフロ民藝」の各セクションで構成され、これまでの代表作のみならず、本展のための新作を含む日本文化と関係の深い作品などを紹介します。
これまで多数派の声のみが取り上げられてきたことが問い直され、視点の多様化が求められる昨今、グローバルなアートシーンでは、第一線で活躍する黒人アーティストたちの表現に見られる多層的な経験が注目されています。黒人の歴史は、日本人の一般的な知識としては馴染みが薄いかもしれませんが、本展はゲイツの多角的な実践を通し、世界で注目を集め続けるブラック・アートの魅力に迫ります。同時に、手仕事への称賛、人種と政治への問い、文化の新たな融合などを謳う現代アートの意義を実感する機会となるでしょう。
○日本のまんなかでアートをさけんでみる @原美術館 ARC 会期:9/8(日)まで
<概要>
・原美術館ARCでは、毎年、ここから発信する意味や意義を考慮したテーマの展覧会を開催しています。2024年春夏季は、「日本のまんなかでアートをさけんでみる」と題し、主に原美術館コレクションと原六郎コレクションから厳選した作品を展示します。
原美術館ARCは「日本の中心」にあります。「日本の中心」と言っても、政治・経済の中心として誰もが思い浮かべる東京でも、文化の中心地とされる京都でもありません。ここは群馬県渋川市、「日本のまんなか」と称する街に原美術館ARCはあります。
中心とは何なのでしょうか?古くから三国街道の宿場町として栄え、伊香保の名湯を有し、赤城や榛名の山々をのぞむ渋川市は、「日本の主要四島で最北端の北海道宗谷岬と最南端の鹿児島県佐多岬を円で結んだ中心に位置する」ことから「日本のまんなか」とされ、夏にはユニークな「へそ祭り」が開催されるなど独自の文化を育む街です。しかし、「日本の中心」、「真ん中」と称する街は他にもあります。つまり、物事を捉える角度や尺度を変えれば、中心はその位置を様々に変化させることができるのです。
原美術館ARCは、原美術館(東京・品川)と別館ハラ ミュージアム アーク(群馬・渋川)の活動を2021年に集約した美術館です。企画展を主軸にしていた原美術館とは異なり、ここでは主に現代美術と東洋古美術の収蔵品展を開催しています。これらのことは、一般的には、原美術館が日本の中心都市・東京からその周縁に拠点を移したと捉えられるでしょうし、企画展を中心にすえる日本では、収蔵作品展は周縁的展覧会とされる傾向にあるでしょう。
ですが、災禍を経験した私たちには、安心して深呼吸のできる空気や大きな青空の下でのアート体験が視界や思考の中心に入ってきましたし、地球の持続可能性が危ぶまれる現在では、大掛かりな宣伝や演出を抑え、国内外のアーティストひとりひとりとの信頼関係を礎として今ここにある作品群と向き合う収蔵作品展の開催こそが、原美術館ARCの中心的役割のひとつなのではないかと考えています。
アートとは、中心(既成概念)をずらす思考のことであり、中心を変えることは先端に立つことでもあります。世の中の関心が新しさに向いていた昭和の日本で廃墟と化した戦前の洋館を「原美術館」として再生し維持し続けたことや、RC造が公共建築の当たり前だった時代に前身のハラ ミュージアム アークの建築を木造としたことが先駆的であったように、そして何より、まだ価値の定まっていなかった現代美術を両館から国内外に発信したことが先進的であったように、原美術館ARCも先端に立ち続けようと思います。そして、周縁とされがちなアートという営みを、出会った誰もが大好きになる中心的な場であり続けようと思います。
○高知サマープロジェクト2024 Color lab 色の実験室 ―海色・山色・これって何色?―
@高知県立美術館 会期:9/14(土)まで
<概要>
・日本では古くから色の粉(顔料)とそれを画面に付ける接着剤(ニカワ)を混ぜ合わせて絵具を作ってきました。これは1000年以上も前に中国大陸、朝鮮半島を経由して日本に伝わった歴史のある技法です。
日本で長く使われてきたこの絵具は、山や海でとれる様々な自然素材を原料としています。藍銅鉱(らんどうこう)という石からとれる「青」、水晶やカキの貝殻からとれる「白」、サンゴからとれる「淡いピンク」、カイガラムシという虫からとれる「えんじ」…これらの素材から色の粉を取り出し、ニカワ(膠)という動物の皮や骨を煮出したコラーゲンを使って画面に付けることで、昔の人々は彩り豊かな絵画を描きました。驚くことに、その基本的な手法は現代にいたるまで変わらず受け継がれています。まさに自然はずっと絵具の素材の宝庫だったのです。
今回で6回目を迎える「高知サマープロジェクト」では、高知で活動する日本画家の越智明美さんをコーディネーターとして招き、高知の豊かな自然を手がかりに新しい絵具づくりの可能性を探ります。たとえば大月町の海でとれるウニのトゲ、越知町の横倉山でとれる薄桃色の大理石「土佐桜」…高知の海や山で採集できるこれらの素材を使うと、どのような色ができるのでしょう?高知の自然、そしてもっと身近な場所に隠れているいろいろな「色」を通して、私たちを取り巻く世界に目を向けてみる夏休み企画です。
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