こんにちは。今日ご紹介する美術館、熊本城の一角にあり、肥後熊本54万石を治めた大名:細川家に伝来する歴史的・美術史的価値の高い美術工芸品や古文書等を常設で展示しています。この熊本城、実は当初から細川家のものではなく、築城したのは安土桃山時代から江戸時代初期にかけての武将:加藤清正(1562年~1611年)で、26歳の頃にあたります。その後、加藤家の改易とともに、豊前小倉城の城主だった細川忠利が入城し現代に至ります。そんな歴史と伝統をもつ熊本の文化を大切に語り継ぐ美術館、どんな空間なのでしょう。早速ご紹介しましょう。
このブログで紹介する美術館
熊本県立美術館
・開館:1976年
・美術館外観(以下画像は美術館HP、県観光協会HPより転載)
・場所
熊本県立美術館 – Google マップ
装飾古墳室と熊本藩主:細川家伝来の美術品に特徴、熊本から世界を広く展望する
・国の特別史跡である熊本城の二の丸広場の一角に位置し、古代から現代美術までを網羅する総合美術館として1976年(昭和51年)に開館。考古、絵画、版画、彫刻、工芸、書蹟などを収蔵・展示、なかでも装飾古墳室は古代の造形美を日本美術の原点としてとらえた特徴ある施設となっています。
1992年(平成4年)に熊本市内:千葉城町に県立美術館分館を開館。2008年(平成20年)には「細川コレクション永青文庫展示室」が開館、熊本ゆかりの永青文庫の名品を常時観覧可能となりました。いただくことができるようになりました。
収集方針
(1)散逸あるいは滅失の危険のある、熊本県内の美術品・文化財等の収集及び保存
(2)熊本県出身あるいは熊本県ゆかりの作家等の作品など、県の美術史の流れを展望するための美術品の収集
(3)世界的な視野で美術の流れを広く展望することのできる作品
収集分野
日本および東洋の古美術
・古代から近世に至る熊本の美術・文化・歴史の流れを展望できるコレクション。
古代・中世の熊本にゆかりのある美術品
①彫刻(仏神像など)
②絵画(仏画等)
③工芸品(染織品や能道具、刀剣等)
④書蹟・墨蹟
近世の熊本にゆかりのある美術品
①絵画(御用絵師や文人等の作品)
②工芸品(八代焼・小代焼等の陶磁器、刀剣や刀装具などの金工品、漆芸品、皮革・染織品等)
③書蹟・墨蹟
④加藤家・細川家ゆかりの美術品や資料
熊本の美術・文化・歴史に影響を与えた作家・人物・地域にゆかりの美術品や資料
熊本の美術・文化・歴史の展開を鑑賞・検証するために有効な資料
日本の近・現代美術
・熊本県を代表する作家の作品を核に、日本の近・現代美術史を体系づけるコレクションおよび熊本の美術史を体系化しうるコレクション。
①熊本ゆかりの作家による近・現代洋画・日本画・版画・工芸・彫刻・デザイン・写真等の作品や資料
②熊本を代表する近・現代作家に大きな影響を与えた作家の作品
③近・現代美術史に大きな足跡をのこした作家による作品
④当館における既存のコレクションを拡充・補完する上で必要な作品や資料
⑤日本の近・現代版画
西洋美術
・フランスの近代絵画、西洋版画(古典~近代~現代)、近・現代彫刻の作品を核に、西洋美術コレクションを体系化。
フランスの近代絵画
①印象派と19世紀フランス絵画
②エコール・ド・パリと藤田嗣治(レオナール=ツグハル・フジタ)
西洋版画の系譜の体系化
①16世紀から18世紀までの古典版画(Old Master Print)
②19世紀から20世紀前半までの近代版画(Modern Print)
③20世紀後半以降の現代の版画動向を示す作品(Contemporary Print)
近・現代の西洋彫刻
①近代フランスの彫刻
②現代の彫刻
上記の項目に関連の深い優れた西洋美術の作品や資料
優れた質と内容を有し、纏まった形で収集されたコレクション
→いかがでしょう。本美術館、結構体系だてて収集されていることがわかると思います。
永青文庫とは
・細川家ゆかりの美術品や資料-熊本県立美術館の展覧会の核にもなっている「永青文庫」、こちらも軽くご説明しておきたいと思います。
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・東京都文京区目白台にある、日本・東洋の古美術を中心とした美術館・研究所。第16代当主細川護立氏(1883年 – 1970年)によって設立され、運営主体は公益財団法人永青文庫。現:理事長は18代当主の細川護煕氏(元内閣総理大臣)。旧熊本藩主細川家伝来の美術品・歴史資料、16代当主細川護立の蒐集品などを収蔵。熊本県立美術館では「永青文庫展示室」を設け、永青文庫所蔵品の一部を年に数回入れ替えながら展示。
護立氏は「美術の殿様」と言われ、多くの旧大名家が伝来の名宝を美術館や個人に寄贈したり売却する中で、細川家は数多くの美術品を自ら管理し、保存。文庫名の「永青」は細川家の菩提寺である永源庵(建仁寺塔頭、現在は正伝永源院)の「永」と、細川藤孝の居城・青龍寺城の「青」から採られた。
収蔵品は、歴代当主所用の甲冑、茶道具、書画、古文書などの細川家伝来品と、16代当主細川護立氏の蒐集品。収蔵品は中国美術(陶磁器、仏像、考古資料など)、白隠、仙厓などの禅画、禅林墨跡、近代日本絵画、刀剣など、近代日本画として横山大観、下村観山、菱田春草なども多数。
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装飾古墳展示室
・熊本県立美術館の特徴の1つ「装飾古墳展示室」についても記載しておきます。
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・装飾古墳とは、石棺や石室あるいは横穴墓の内・外面に、彫刻や彩色により文様や絵画などの装飾を施した古墳のこと。5世紀から7世紀ごろまで造られ、全国で723例(令和元年調べ)ほどが知られ、九州の北・中部に集中的に存在。特に、熊本県内には205例が分布しており、装飾古墳の発生と展開を考える上で注目されているそうです。熊本県立美術館の装飾古墳は、熊本県の代表的な装飾古墳を再現したものです。
装飾古墳の図柄は、(1)幾何学的な文様(円文、同心円文、三角文、直弧文など)、(2)器財器物文様(靫、盾、弓などの武器武具や舟や家屋など)、(3)人物鳥獣文様(人物、馬、鹿、鳥など)などに分けられ、これらの装飾には、武器武具、装甲の力、または、幾何学文の呪力などにより墓域を守るもの、被葬者の生前の生活や財産を描き、死後の世界への供物としているもの、死後の世界を描き死者の安らかな眠りを祈っているものなどがあると考えられているそう。
これらの装飾古墳は、日本古代の優れた原始美術として、また、文献の乏しい古代史の空白を埋め、古代人の思想を表現するものとして貴重で、古代から続く熊本の抽象絵画のルーツを示すものとなっています。
→熊本県立美術館では、このような装飾古墳の原始美術としての一面に着目し、原始から現代に至る熊本の美術史の原点として、全国にさきがけて装飾古墳室を設置したそうです。
浜田知明版画室
・なお、個別の展示室としては、他にも、熊本県御船町出身の版画家・彫刻家でフランス芸術文化勲章も受章した浜田知明氏(1917~2018)の活動を顕彰すべく、毎回テーマを設定し、版画作品や彫刻作品を紹介されています。
※情報サイト「アートアジェンダ」より転載(https://www.artagenda.jp/exhibition/detail/3268)
…いかがでしょうか。熊本県立美術館協議会の議事録を読んでいると、熊本県は美術を勉強する高等学校が多いようです。美術科、美術コースでわけると県内に7校あり、これは47都道府県で断トツで漫画、イラストレーションをコースとして立ち上げている高等学校も含めると10校もあるそうです。
日ごろから美術の勉強をしている高等学校、生徒さんがたくさんいる県において、藩主ゆかりの工芸品から原始美術、はたまた世界的な版画家の作品も観覧することができる県の公立館の役割は今後も重要だと感じました。そんな熊本県を代表する県立美術館、ぜひ皆さんも足を運んでみてください。
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