今週のPickUp!展覧会(会期:12月初旬まで)

大阪府

○新指定・重要文化財紹介 雪舟と雲谷派 @山口県立美術館
 会期:12/3(日)まで

<概要>
・山口県内の「新・国指定文化財6点」を中心に、「雪舟と雲谷派」ゆかりの作品計15点を公開し、雲谷派の活動の原点について紹介する展覧会。

 室町時代、日本絵画史を代表する画僧・雪舟等楊(1420-1506?)は山口を拠点に活動しました。そのおよそ100年後、雲谷等顔(1547-1618)が、雪舟の大作《四季山水図(山水長巻)》(国宝、毛利博物館蔵)を毛利輝元(1553-1625)から授かり、雪舟の画風を継いだことによって、萩藩お抱え絵師「雲谷派」が誕生します。

 雲谷派の画家たちは《山水長巻》を模写することで雪舟の画風を学習し、さらに雪舟の肖像画を描くことで、「雪舟流の正統な継承者」としての立場を対外的に示しました。この雲谷派による《山水長巻》模本と《雪舟像》が、「雪舟から雲谷派への流れ」を知る上で欠かせない作品と評価され、このたび重要文化財に指定されました。

○激動の時代 幕末明治の絵師たち @サントリー美術館
 会期:12/3(日)まで

(…どこのデザイン会社か不明ですが、はからずも堅苦しい雰囲気になりそうな近代日本画というジャンルの中、なかなか秀逸なチラシですね)

<概要>
・幕末明治期の江戸・東京を中心に個性的な作品を描いた絵師や変革を遂げた画派の作品に着目、それら絵師たちを紹介し、その作品の魅力に迫る展覧会。

 江戸から明治へと移り変わる激動の19世紀、日本絵画の伝統を受け継ぎながら新たな表現へ挑戦した絵師たちが活躍しました。幕末明治期の絵画は、江戸と明治(近世と近代)という時代のはざまに埋もれ、かつては等閑視されることもあった分野です。しかし、近年の美術史では、江戸から明治へのつながりを重視するようになり、現在、幕末明治期は多士済々の絵師たちが腕を奮った時代として注目度が高まっています。

 天保の改革や黒船来航、流行り病、安政の大地震、倒幕運動といった混沌とした世相を物語るように、劇的で力強い描写、迫真的な表現、そして怪奇的な画風などが生まれました。また、本格的に流入する西洋美術を受容した洋風画法や伝統に新たな創意を加えた作品も描かれています。このような幕末絵画の特徴は、明治時代初期頃まで見受けられました。

 社会情勢が大きく変化する現代も「激動の時代」と呼べるかもしれません。本展は、今なお新鮮な驚きや力強さが感じられる幕末明治期の作品群を特集する貴重な機会となります。激動の時代に生きた絵師たちの創造性をぜひご覧ください。

○京都市美術館開館90周年記念展 竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー @京都市京セラ美術館
 会期:12/3(日)まで

<概要>
・本館所蔵の重要文化財《絵になる最初》をはじめ、若手時代から円熟期まで、栖鳳の代表作を集めて展示し、一堂にその画業を振り返る展覧会。

 竹内栖鳳は、近代京都の日本画界に最も大きな影響を与えた画家です。画壇革新を目指した明治期には、旧習を脱却した新たな日本画表現を模索し、西洋にも渡りました。技術が円熟に達した大正・昭和期には、画壇の重鎮として、第一線で活躍しながら多くの弟子を育成したことでも知られています。「写生」を重要視しながら、抜群の筆力で生き生きとした作品を生み出し、圧倒的な求心力で画壇をリードして、近代京都日本画の礎を作りました。現在では巨匠として多くに知られる存在ですが、そこへ至るためには、古い常識を破壊し、新たな地平を創生するエネルギーが不可欠だったのです。

 栖鳳の挑戦をより明らかにするため、本画に加え、制作にまつわる写生や下絵、古画の模写など、様々な資料もあわせてご覧いただきます。作品約130点で栖鳳の奮闘を余すところなく振り返る、大規模回顧展です。

○特別展 生誕270年 長沢芦雪 @大阪中之島美術館
 会期:12/3(日)まで

<概要>
・伊藤若冲(いとう・じゃくちゅう)、曽我蕭白(そが・しょうはく)と共に「奇想の画家」のひとりとして近年国内外から注目を集める長沢芦雪(1754 – 1799)の画業を紹介する、大阪で初となる回顧展です。

 芦雪は江戸時代中期に京都で活躍した画家で、写生画の祖、円山応挙の高弟です。卓越した描写力に加えて、奇抜な着想と大胆な構図、また人を驚かせ楽しませようというサービス精神や面白みで、独自の世界を展開し人気を博しました。

 絵を描くことが好きで、常に新しい表現や技法を追求し、精力的に活動した芦雪。多くの傑作は200年以上経った今も、観る人を魅了してやみません。本展では、代表作の《龍・虎図襖》(重要文化財)、初公開作品も含め、初期から晩年までの選りすぐりの優品を一堂に展覧し、奇想の天才絵師、長沢芦雪の魅力に迫ります。

<関連>
無量寺・串本応挙芦雪館

○生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ @東京国立近代美術館
 会期:12/3(日)まで

<概要>
国際展受賞作から書、本の装画、商業デザイン、壁画までー
 「世界のムナカタ」の全容を紹介 代表的な板画作品はもちろん、最初期の油画や生涯にわたって取り組み続けた倭画に加え、高い人気を博した本の装幀や、長く大衆に愛された包装紙の図案など、優れたデザイナーとしての一面も取り上げ、棟方芸術の全貌に迫ります。

 青森ー東京ー富山、棟方の暮らした土地をたどる、初の大回顧展
 生誕120年という節目をとらえ、棟方志功が芸術家として大成していく過程のなかで大きな影響を与えた土地である三つの地域―故郷・青森、芸術活動の中心地・東京、疎開先・富山―を、最大規模の回顧展として巡回します。

 棟方畢生の超大作、久々の公開
 縦3メートルの巨大な屏風《幾利壽當頌耶蘇十二使徒屏風》(五島美術館蔵)を約60年ぶりに展示、また、ほとんど寺外で公開されることのなかった倭画の名作《華厳松》(躅飛山光徳寺蔵)は通常非公開の裏面とあわせて展示します。

○シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、杉山寧から現代の作家まで @ポーラ美術館
 会期:12/3(日)まで

<概要>
・近代の「日本画」を牽引した明治、大正、昭和前期の画家たちや、杉山寧をはじめとする戦後の日本画家たちの表現方法、そして現在の「日本画」とこれからの日本の絵画を追究する多様な作家たちの実践の数々にあらためて注目し、その真髄に迫る展覧会。

 明治政府のお雇い外国人として来日していたアーネスト・フェノロサ(1853-1908)は、当時、日本国内で目にした絵画を総じて “Japanese Painting”と呼び、この英語を日本人通訳が「日本画」と翻訳したことから、明治以後に「日本画」という概念が社会的に定着していったと言われています。

 「日本画」は日本の伝統的な絵画と西洋画の接触により、新しい表現形式として確立されましたが、日本という近代国家の形成期における文化的混沌の中で画家たちは、近代とは、西洋とは、国家とは何かという不断の問いと向き合うことを余儀なくされました。第二次世界大戦後は、画壇において日本画滅亡論が唱えられましたが、近代日本画を超克し「新しい日本絵画の創造」を目指した現代日本画の担い手たちの活躍によって、「日本画」は新たな段階へと進みました。

 グローバリズムが加速し、西洋と東洋という二分化がもはや意味をなさず、主題や形式、画材などが多様化する21世紀のアートシーンにおいて、現在の「日本画」にはいかなる可能性が秘められているのでしょうか。

○中島麦展 LUMINOUS/MULTI/SILVER ~色彩の時間~ @奈義町現代美術館
 会期:12/10(日)まで

<概要>
・「絵を描く」ことを通して、そこから広がっていく様々な出来事を取り込みながら活動している美術家・中島麦による、奈義町現代美術館では約11年ぶりになる個展。

 本展は、「動き・奥行き・光」を探求した「luminous dropping」、コロナ禍を経て時間や重力による偶然性を加えた「multi LD」、前者を発展させ、図と地の関係に着目した最新作「SILVER」シリーズまで、色彩豊かな抽象絵画による展覧会になります。絵画の基本要素を分解し、再構築し、さらにそこから重要な要素を取り出すことで、「みる」ことの根源的な可能性を提示したいという中島の近作・新作を空間全体に展開した展覧会を、ぜひお楽しみください。

◆ 中島麦 nakajima mugi
美術家。長野県生まれ 大阪育ち 大阪拠点。京都市立芸術大学美術学部油画専攻・卒業。抽象絵画を制作する事を中心に、そこから拡張する出来事を取り込みながら活動中。その活動を通して、私自身が何ものからも自由で、何ものをもつなぐメディウムでありたいと考えている。個展、企画展の他、ワークショップや企業コラボレーションなど多数。

○開館60周年記念 京都画壇の青春 ―栖鳳、松園につづく新世代たち @京都国立近代美術館
 会期:12/10(日)まで

(…このチラシもまたなかなかすごいですね)

<概要>
・開館60周年を記念し、明治末~昭和初期を近代京都画壇の青春時代ととらえ、土田麦僊(1887~1936)を中心に据え、小野竹喬、榊原紫峰、岡本神草などの代表作約101点を4章に分けて展示する展覧会。

 当時、まさに青春時代と重なった画家だけでなく、上村松園、菊池契月、木島桜谷といった先輩作家達や師匠の竹内栖鳳も含んで一丸となり、東京、西欧、そして京都の伝統に挑んだ彼らの、青春時代特有の過剰さと繊細さとをあわせもつ、完成期とはまた異なる魅力を放つ作品群を堪能できます。

○芹沢銈介ののれん @静岡市立芹沢銈介美術館
 会期:12/10(日)まで

<概要>
・芹沢銈介は染色に専念するようになった30代から持ち前の卓越したデザイン力を発揮し、文字、風景、人物、工芸品など多彩な模様を、次々にのれんに表現していきました。その数は少なくとも300種以上にのぼり、巨匠として国際的な評価を得た80代に至るまで途切れることなく制作が続けられました。この展覧会では、初期から晩年までののれん約50点を幅広く観覧することができます。(なお、展示室後半の3室には、芹沢銈介の収集品の中から、台湾先住民の工芸品をご紹介しています)

<関連>
渋谷区立松濤美術館
日本民藝館
アサヒビール大山崎山荘美術館

○装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術 @東京都庭園美術館
 会期:12/10(日)まで

<概要>
・博覧会を中心とした両大戦間期のフランスの近代庭園を巡る動向に着目し、古典主義・エキゾティシズム・キュビスム的要素を取り入れて展開していった様について、絵画や彫刻、工芸、版画、写真、文献資料等、約120点の作品からご紹介する展覧会。(本展を通して、当館建築の装飾や空間自体についてのより一層の理解を深めることを目指しています。)

 1933年(昭和8年)、東京・白金の御料地の一部を敷地として朝香宮邸(現・東京都庭園美術館)は竣工しました。約一万坪の敷地の庭園部分には、広々とした芝生が広がり、日本庭園、盆栽・花卉(かき)園が備わり、鶴や孔雀などの動物たちが闊歩していました。同邸宅内の壁面には、遠景に山々を望む森林や水を湛えた庭園の風景が描かれており、室内に居ながらにして自然の中にいるかのような装飾プランが展開されています。

 主要客室の装飾を手がけたフランス人装飾美術家アンリ・ラパン(1873–1939)によって描かれたこの一連の装飾画は、朝香宮邸のコンセプトを読み解く鍵であると共に、当時のフランスにおける庭園芸術との関連性を指摘することのできる作品でもあります。

 同邸の装飾プランに多大な影響を及ぼしたとされる1925年のアール・デコ博覧会において、「庭園芸術」は初めて独立した出品分類として設けられるなど、重要視されていました。造園家のみならず、建築家や装飾芸術家も “庭”を如何に“装飾”するかということに心を砕き、各パヴィリオンの周囲や街路には多様な庭園が造りこまれました。

○特別展 ディーン・ボーエン展 オーストラリアの大地と空とそこに生きる私たち @徳島県立近代美術館
 会期:12/10(日)まで

<概要>
・ディーン・ボーエン(1957-)は、版画、絵画、彫刻など、様々なジャンルで活躍するオーストラリアの作家です。自然、都市、動物、人間などをモチーフに、ユーモアと想像力にあふれた親しみやすい作風で知られています。また美術の枠を超えるアール・ブリュットへの関心が高い点も特徴です。本展は、日本初の本格的なボーエン展です。オーストラリアの自然風土や文化に根ざした、多様な作品をお楽しみ下さい。

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