今週のPickUp!展会(会期:11月末まで)

愛知県

○深堀隆介展 水面のゆらぎの中へ @札幌芸術の森美術館
 会期:11/23(木・祝)まで

<概要>
・金魚に魅せられ、創作を続ける美術作家・深堀隆介。本展は、深堀が一貫して取り組んできた金魚の造形にあらためて光をあて、描くこと、リアルであることに対する作家の思想に迫る展覧会です。

透明樹脂にアクリル絵具で何層にも重ねて描く「2.5Dペインティング」とも称される斬新な技法により立体感のある金魚を作り出してきました。その作品は、まるで目の前に水があり、命ある美しい金魚が泳いでいるかのような迫真性を観る者に与えます。

水面(みなも)の揺らぎの中にあるのは虚か実か、幻か現か。深堀は自身の作品をまるで生きているかのように「見せる」一方で、それが命を持たない絵具の積層であるという事実に正面から対峙します。深堀の作品には、幻影と物質の同居というリアリズムにおける根源的な命題が横たわっているのです。

初期の立体作品から、絵画、映像、大規模なインスタレーションなど新作を含む作品約300点を一挙ご紹介。虚実の狭間をたゆたうように私たちを誘う、<金魚繚乱>の世界をご覧ください。

○英国キュー王立植物園 おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり @広島県立美術館
 会期:11/26(日)まで

<概要>
・世界最大級の植物園である、英国キュー王立植物園。本展では、約220,000点もの美術資料を有する同園の協力のもと、野菜や果物、ハーブ、スパイスなどを精緻に描いた植物画と共に、18~19世紀の食卓を飾った家具や食器、レシピなどを展示。約190点の作品で、英国の食と美の「おいしい」歴史を辿ります。

○【特別展】日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門 ―追体験する傑作誕生の地、発見する画家の心
山種美術館 会期:11/26(日)まで

<概要>
・映画、小説、漫画やアニメなどの舞台になった場所を訪れる「聖地巡礼」。絵画でいえば、作品の題材となった地や、画家と縁の深い場所に赴くことが「聖地巡礼」にあたるでしょう。山種美術館では、名だたる日本画家たちが実際に訪れ、描いた場所を「聖地」とし、美術館に居ながらにして「聖地巡礼」を味わうことのできる展覧会を開催します。

速水御舟の代表作《名樹散椿》【重要文化財】は、京都・椿寺地蔵院の名木「五色八重散椿」を描いた作品ですが、実際の姿と比べてみると、御舟が花や花びらの数を減らして大きくし、デザイン的に仕上げたことがわかります。現地の様子を知ることで、画家のまなざしを追体験するだけでなく、作品に込めた創意工夫を発見できる――これこそが「日本画聖地巡礼」の醍醐味といえるでしょう。

本展では、鳴門海峡の渦潮を前に写生を繰り返した奥村土牛の《鳴門》、定宿から見える京都の町家の光景を描いた東山魁夷の《年暮る》、樹齢1000年以上といわれる福島県・三春町の「三春滝桜」を画題とした橋本明治《朝陽桜》をはじめ、北海道から沖縄まで、日本各地を主題とした日本画の優品を一堂に展示します。画家が語った制作の経緯や現地でのスケッチ、さらには現地の写真もあわせて紹介します。画家たちが見つけたとっておきの場所、名画の聖地を巡る「聖地巡礼」をお楽しみください。

<関連>
長野県立美術館(東山魁夷館)
香川県立東山魁夷せとうち美術館
奥村土牛記念美術館

○陶芸の進行形 展 @菊池寛実記念 智美術館
 会期:11/26(日)まで

<概要>
・1970年代から1980年代半ば生まれの世代を中心に25名の陶芸家をノミネートし、現在進行形の陶芸作品をご紹介する展覧会。

 25名はいずれも当館が2004年度から隔年で開催している公募展「菊池ビエンナーレ」で受賞、入選してきた作家たちです。現在、40代から30代後半になる彼らは、陶芸の素材や技法、制作工程や歴史、伝統といった陶芸にまつわる要素に独自の視点を持ち、あるいは更に、現代美術の発想や多様なカルチャーからの影響を反映させ、現在の美意識で陶芸作品を制作しています。

 一つの世代として括るには年齢に幅がありますが、団塊ジュニアを含み、大半をロストジェネレーションが占めるこの世代は日本の陶芸界においては層が厚く、制作の初期段階から「菊池ビエンナーレ」をはじめ様々な公募展を通して意欲的に作品を発表し、存在感を示してきました。その後のキャリア形成は様々で、公募展での発表を継続する作家がいる一方、国内外での個展活動に注力する作家、または出産や育児を経て活動を本格的に再開した作家など、現状は異なります。本年、「菊池ビエンナーレ」の第10回展開催を迎える記念に、その軌跡として25名の作家たちの今をご紹介し、進行形の陶芸作品をご覧いただきます。

○インド細密画 @府中市美術館
 会期:11/26(日)まで

<概要>
・日本画家、インド美術研究家の畠中光享氏のコレクションから細密画の優品およそ120点をご紹介する展覧会。畠中コレクションは、細密画の中でも特にインドらしさが色濃く表れたラージプト絵画が充実した世界有数の個人コレクションです。

 日本人は古くからインドに憧れを抱いてきました。仏教誕生の地、想像の彼方にある神秘に満ちた場所だったに違いありません。今日でも多くの日本人にとって、未知の世界であり、それゆえに強く心ひかれる場所ではないでしょうか。昨今のインド料理やヨガ、インド映画のブームにも、これまで触れることのなかった世界との出会いが生んだ高揚感が表れています。一方、インド文化の人気が高まる中でも、絵画にはなじみのない方も多いはずです。例えば西洋絵画のように、豊富に作品を見る機会に恵まれないので、当然でしょう。

 インド絵画の精華とも呼ばれる細密画は、16世紀後半から19世紀半ばにかけて、ムガル帝国やラージプト諸国の宮廷で楽しまれた一辺20センチほどの小さな絵です。あえて小さな画面に描くのは「見る人と絵が一対一で対話をする」という考え方があったからです。絵と対話を重ねることは、魂を清める行為でもあったと言います。

 ファンタスティックな神話世界、豪華な衣装に身を包んだ王の肖像やしなやかなポーズの女性たち……美しい線と色に彩られた宝石のような絵の中には、人々の自然を崇める心や感性、情熱的な信仰心が込められています。そこには、古代以来、複雑で深遠な文化を築いてきたインドのすべてが刻まれていると言えます。

 西洋絵画とも日本絵画とも違う、インド細密画の美の世界をお楽しみいただき、インド文化への興味を深めるきっかけともなれば幸いです。

○荘司 福 旅と写生/ドローイング @神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
 会期:11/26(日)まで

<概要>
・旅と思索の画家と称される荘司福(しょうじ・ふく/1910-2002)は、石や土、自然の風景を題材に、存在の重みと時間性を玄妙に描き尽くし、単なる風景や心象を超えた深みのある作品を数多く生み出しました。日本各地や中国、インド、カンボジア、アフガニスタン、エジプトなどへの旅の中で残されたスケッチとドローイングを、完成した日本画とともに紹介します。

 多様な世界観の探求を通して画家が獲得した制作の本質と、モチーフに対する独自の視点をさぐります。荘司福の作品約60点と写真や画材などの資料に加えて、義理の娘で日本画材の特性を生かした抽象表現を開拓した画家・荘司貴和子(しょうじ・きわこ/1939-1979)の作品も併せて展示します。

○企画展 開館25周年記念「令和の蔵出し」 @岡本太郎記念館
 会期:11/26(日)まで

<概要>(本館企画展HPより引用)
・岡本太郎の公私にわたるパートナー・岡本敏子の手によりこの岡本太郎記念館が誕生したのは1998年5月。太郎没後からわずか2年余りのことでした。

 それから25年。当館は住宅規模の小さなミュージアムですが、太郎の息吹をいまに伝える高濃度の体感空間として、多くの皆さまにご支持いただいています。これまでに84本の企画展を実施し、延べ90万人の来館者をお迎えしました。

 太郎は生前、完成作のほぼ全量に相当する1800点を川崎市に寄贈しました。川崎市岡本太郎美術館はこれを基盤に設立されたものです。いっぽう当館が所蔵するのは主として未完成作品やマルチプルなど。そういった作品やエスキース、関連資料等を企画展のコンセプトと文脈に沿って構成し、ご覧いただいてきました。

 この25年のあいだに収蔵作品の大半はお披露目しましたが、開館後にご寄贈いただいたものなど、まだ一度も公開していない作品もわずかながら所蔵しています。そのなかには50年代初頭の油彩や未発表彫刻の原型など、太郎史に刻まれるべき貴重な作品も含まれています。

開館25周年を記念する本展では、そうした作品群を一挙に蔵出ししようと思います。初期の代表作に比肩する油彩、かつて見たことのない形の造形、モニュメント拡大用の原型、幅5.5mにおよぶ絨毯など、秘蔵作品の数々をどうぞお楽しみください。

<関連>
川崎市岡本太郎美術館

○美しき時代(ベル・エポック)と異彩のジュエリー @箱根ラリック美術館
 会期:11/26(日)まで

<概要>
・美しき時代(ベル・エポック)に異彩を放った、ラリックの独創的なジュエリーの数々を堪能できる展覧会。

 19世紀末から20世紀初頭、科学技術の進歩と経済発展を背景に文化が花開き、パリが最も輝いていた時代ーベル・エポック(美しき時代)。美術や文学、音楽や演劇など、さまざまな分野の芸術が大きな発展を遂げるとともに、照明でまばゆいばかりの大通りには、おしゃれを楽しむたくさんの人が行き交い、カフェやキャバレーでは明け方まで喧騒が繰り広げられた。

 第一次世界大戦勃発によって幕を閉じるまでの約30年間、人びとが豊かさと束の間の平和を享受したこの時代に、ルネ・ラリックはジュエリー作家として輝かしい実績を残した。ベル・エポックの象徴でもある、フランスを代表する大女優サラ・ベルナールにジュエリーを認められ、1900年、40歳で迎えたパリ万博では見事グランプリを獲得。それまでジュエリーの素材としては稀であった半貴石や獣角などを取り入れ、伝統にとらわれない宝飾品を創造することに熱意を燃やした。

誰も見たことのないものを作ろうと常に新しいものに目を向けていたラリックにとって、諸文化が入り混じり、奇 抜で斬新な芸術を柔軟に受け入れる“ベル・エポック”は、彼の創作意欲を刺激しアイデアを生み出す宝庫だったのだ。

<ラリック関連>
東京都庭園美術館
北澤美術館

○安井仲治展 @愛知県美術館
 会期:11/27(月)まで

<概要>
・戦災を免れたヴィンテージプリントとネガの調査をもとに安井の活動をより実証的な形で描き出し、約200点の出展作品を通じて展覧するもの。

 日本の写真史において傑出した存在であった安井仲治(1903-1942)。10代でカメラと出会った安井は、20代半ばには関西の写真シーンで一目置かれる存在となりました。そして38歳の若さで病没するまで、旺盛な創作意欲をもって極めて多くの写真の技法、スタイルに取り組みました。また、1920₋40年代という彼の活動時期は、都市文化が華やかに発展する一方で、国全体が長期にわたる戦争へとなだれ込む時代でもありました。そのさなかにあって安井は、変わり行く都会の風景や、そこに生きる人々、さらには不穏な世相をも身近な事物に託して、繊細に写し出していきました。

○トランスボーダー 和歌山とアメリカをめぐる移民と美術 @和歌山県立近代美術館
 会期:11/30(木)まで

<概要>
・和歌山県有田川町出身の移民でアメリカで活躍した上山鳥城男(うえやま ときお・1889‒1954)を、和歌山ゆかりの作家として新たに紹介し、あわせて彼の周囲の多様な芸術の営みを、初公開の作品や資料とともに展示する企画展。

 和歌山県は、海外への移民が全国第6位に上る「移民県」として知られています。明治時代より新天地での仕事を求めて太平洋を渡った人々の子孫は、今も各地で暮らしています。そうした世界の和歌山県人が故郷に集う第2回和歌山県人会世界大会が本年10月に開催されるのにあわせて、和歌山県立近代美術館ではこれまで培ってきた戦前の渡米美術家研究をさらに広げ、和歌山県の移民の歴史と重ねて紹介します。 

 本展覧会の中心となるのは、アメリカ西海岸で美術を志した人々の活動です。特にカリフォルニアでは、移民という立場で海を渡った人たちが多く暮らし、かつ活発な芸術活動が生まれました。

 西海岸は日米開戦に伴って日系人が強制収容された歴史をも背負っています。しかし鉄条網に囲まれた収容生活のなかでも、人々はさまざまに創造的な活動を行い、 拠り所としていました。この展覧会では、全米日系人博物館や諸機関と連携しながら、移民と美術についての歴史を双方向から見直し、発信することを目指します。

○動物と花鳥の分野で新境地を拓いた画家 橋本関雪と榊原紫峰 @足立美術館
 会期:11/30(木)まで

<概要>
・明治から昭和にかけて京都を舞台に活躍した日本画家、橋本関雪(1883~1945)と榊原紫峰(1887~1971)、動物画と花鳥画のそれぞれの分野で新境地を拓いた二人の作品をご紹介する展覧会。

 関雪は、幼少より漢学を学び、高い教養のもと中国の古典や文学に着想を得た作品で評価されました。後年は、動物を主題とした作品が多くなります。優雅で高い精神性を示す動物画は、関雪芸術のひとつの到達点といえるでしょう。紫峰は、花や鳥に魅せられ、生涯花鳥画を描き続けた画家です。自然の美を隅々までとらえようと、日々の暮らしにも厳しく、真摯に制作に向き合いました。清澄な作品からは、自然を見つめる紫峰の愛情深いまなざしがうかがえます。近代の京都画壇に確かな足跡を遺す、巨匠たちの芸術をお楽しみください。

<関連>
ひろしま美術館(橋本関雪コレクション)
大阪市立美術館(榊原紫峰コレクション)

…和歌山県、移民多いのですね。初めて知りました。

(マウス)

コメント

タイトルとURLをコピーしました