<芸術の秋ですね。見どころの多い展覧会がめじろおしです>
○瞳の奥にあるもの -表情でみる人物画展- @ホキ美術館
会期:11/5(日)まで
<概要>
・さまざまな表情で描かれた作品を鑑賞し、絵画の人物に想いを馳せることをコンセプトにした企画展。
穏やかなほほえみを浮かべている作品ばかりではなく、人物画の表情にはさまざまなものがあります。何かを訴えているような表情、戸惑っているような不安げな表情、微笑んでいるのか緊張しているのか、一言では言い表せないあいまいな表情……。モデルと対峙する中で、画家がその表情を引き出して作り上げる絵画たち。その受け取り方に正解・不正解はなく、答えは鑑賞者へとゆだねられています。
○Material, or @21_21 DESIGN SIGHT
会期:11/5(日)まで
<概要>
・展覧会ディレクターにデザイナーの吉泉聡氏、芸術人類学者の石倉敏明氏、バイオミメティクスデザイナーの亀井潤氏を迎え、これまでに人間が営んできた自然との多様な関わり方をアートやデザイン、人類学の観点から紐解くと同時に、最先端のマテリアルサイエンスが我々の感覚をどのようにアップデートしてくれるのかを紹介する展覧会。
普段の生活の中で接する「もの」のほとんどは、人によってデザインがなされています。ディレクターの吉泉氏は、「これら『もの』がつくられる過程にはこの世に存在するありとあらゆる『マテリアル』が『素材』として意味づけされるプロセスが含まれている」と述べています。
つまり、特定の意味を持たなかった「マテリアル」が、人や生物との関わりの中で「もの」へとつながる意味が付与され「素材」となるのです。「マテリアル」と「素材」は本来同義ですが、本展では先述のように使い分けて考えています。
私たちがものについて考えるときに、誰かが意味付けをした素材について意識を巡らすことがあったとしても、マテリアルにまで立ち戻ることはほとんどありません。合目的的に「座りやすそうな木製の椅子」と捉えることはあっても、原初的な感覚として「生命感のある木」という感覚まで立ち戻って思いを巡らせることはまれです。本来、意味とはマテリアルとの対話から立ち現れるものであったはずです。私たちは有史以前からマテリアルと共に暮らし、密接な対話を通してものをつくり、暮らしを営んできました。しかし現代社会においては、一部のつくり手がデザインを担うことで、多くの人にとってマテリアルとのつながりは「つくる/つかう」という視点から断ち切られています。
また、マテリアルとの対話とは、マテリアルを管理することとは異なります。つくり手の思ったとおりの形や機能をデザインすること、つまり、つくり手の思ったとおりの素材とすることが、必ずしも人とマテリアルとのよい関わり方だとは言えないでしょう。むしろ、さまざまな環境問題が提起される現代だからこそ、一度素材の意味を剥ぎ取り、マテリアルとの原初的な感覚のやり取りから、その背後にある自然環境や社会環境の持続可能性まで含めて、身体的で深い対話がなされるべきだと考えられます。
私たちとマテリアルのつながりを、地球をめぐる果てしなく広大な物語から読み解き、再発見を試みる本展がマテリアルの織り成す新しい世界を感じるきっかけとなれば幸いです。
○ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室 @DIC川村記念美術館
会期:11/5(日)まで
<概要>
・ジョセフ・アルバース(1888–1976)は画家、デザイナー、そして美術教師として知られています。そのアルバースの作品を、彼の授業をとらえた写真・映像や、学生による作品とともに、制作者/教師という両側面から迫る、日本初の回顧展。
ドイツで生まれた彼は、造形学校バウハウスで学び、のちに教師となって基礎教育を担当しました。同校の閉鎖後は渡米し、ブラックマウンテン・カレッジや、イェール大学に勤務。戦後アメリカの重要な芸術家たちを育てました。
アルバースは授業の目的を、「目を開くこと」だと述べています。彼はただ知識を教えるのではなく、学生に課題を与え、手を動かして考えることを促しました。そうして答えを探究することで、色彩や素材のもつ新しい可能性を自ら発見させようとしたのです。そしてアルバース自身もまた、生涯にわたり探究を続けました。そこから生み出されたのが、バウハウス時代のガラス作品から、家具や食器などのデザイン、絵画シリーズ〈正方形讃歌〉に至る、驚くほど多様な作品群です。
○開館25周年記念展Ⅰ 愛し、恋し、江戸絵画 ―若冲・北斎・江戸琳派― @細見美術館
会期:11/5(日)まで
<概要>
・開館 25 周年を記念し、コレクターが己の美意識を信じ、懸命に追い求めてきた多彩なコレクションを 2 展にわたって紹介する企画。記念展の第 1 弾「愛し、恋し、江戸絵画 ― 若冲・北斎・江戸琳派 ―」では、二代古香庵 (細見 實、1922~2006 / 細見美術財団前理事長)と妻 有子(現理事長)が二人三脚で蒐集した江戸絵画を展観します。
先見の明をもって集めた、伊藤若冲のユニークな作品、葛飾北斎の肉筆美人画、さらには酒井抱一に始まる洗練された江戸琳派の作品群など、夫妻のお気に入りをご紹介。夫妻は蒐集した美術品を自邸に飾って楽しみ、もてなしにも用いてきました。季節やテーマ、客人の好みなどをイメージしながら時代やジャンルを超えて取り合わされた美術品の数々は、呼応しあって空間を彩りました。この機会に、日本美術のもつ優美さ、繊細な感性、時に大胆なほどの力強さに心を奪われたコレクターのまなざしに触れてください。
<参考:伊藤若冲関連>
・京都国立博物館
・相国寺承天閣美術館
・泉屋博古館
・岡田美術館
・静岡県立美術館
・島根県立美術館
・無量寺・串本応挙芦雪館
○特別展 奇想天外×大胆不敵 浮世絵師 歌川国芳展~ @秋田県立近代美術館
会期:11/5(日)まで
<概要>
・得意とした勇ましい武者絵と楽しい戯画を中心に、西洋画の影響を受け独特な雰囲気を持つ風景画を加えて紹介する展覧会。
歌川国芳は、北斎や広重と同じ江戸時代後期に活躍した浮世絵師です。水滸伝に登場する豪傑たちを描いた武者絵で一躍脚光を浴び、風景画や戯画など様々なジャンルで活躍しました。人々を「アッ」と驚かせるような奇想天外にして大胆不敵な国芳の作品は、当時の江戸っ子たちばかりでなく、現代の若い世代にも人気を博しています。
国芳らしさを凝縮した約170点の優品で構成する、全国で秋田県立近代美術館のみを会場とした展覧会です。格好良くて面白い、そしてどこか不思議な国芳ワールドをこの機会にぜひお楽しみください。
○とびたつとき ―池田満寿夫とデモクラートの作家 @長野県立美術館
会期:11/5(日)まで
<概要>
・1950年代から1966年頃までの池田満寿夫の作品とともに、池田が影響を受け、また交遊のあった作家の作品を紹介し、当時世界を席巻した日本の版画を振り返る展覧会。
池田満寿夫は、1934年に旧満州国・奉天で生まれ、終戦の年に父母と共に長野に引き揚げました。高校を卒業後、画家を志して上京し、東京藝術大学を3回受験するも失敗。そうした頃、1955年に靉嘔(あいおう)に出会い、彼を通じて、デモクラート美術家協会を創設した瑛九(えいきゅう)や美術評論家の久保貞次郎を知ることになります。
池田満寿夫が1997年に亡くなって四半世紀が経ちました。彼の版画作品がどれほどまでに世界で評価され、また彼が芸術家としての道をいかに情熱的に歩んだか、今日あらためて問いかけることには大きな意味があるのではないでしょうか。
○土方久功と柚木沙弥郎 熱き体験と創作の愉しみ @世田谷美術館
会期:11/5(日)まで
<概要>
・世田谷美術館の収蔵品を中心に、平面、立体、絵本など多彩に広がる土方久功(1900-1977)と柚木沙弥郎(1922-)という二人の創作を紹介する展覧会。
土方久功は1929年から10年以上にわたりパラオやサタワル島で暮らし、現地の人々や風景を主題とした彫刻、絵画を制作しました。また「民藝」の思想と芹沢銈介に影響を受け染色の道を志した柚木沙弥郎は、身近な日常にある面白いものや楽しいことを原動力に100歳を迎えた今も精力的な活動を続けています。
<関連>
・高知県立美術館 ※土方久功コレクション
・神奈川県立近代美術館(葉山・鎌倉別館) ※柚木沙弥郎コレクション
・静岡市立芹沢銈介美術館
○飯岡由美子 ガラス彫刻展 @北澤美術館
会期:11/5(日)まで
<概要>
・ガラスの表面に文様を彫るグラヴィール(ガラス彫刻)技法で多くの作品を生み出し、深い浮き彫りのレリーフ作品も時間をかけて丹念にガラスを彫り込んで制作する数少ない作家の1人である飯岡由美子氏。
動物、植物、人物、仏像など、様々な対象を彫刻で表現する飯岡氏の創作世界と、力強くも繊細なガラス彫刻の魅力を紹介する展覧会です。
○加山又造と継承者たち―新たな地平を求めて― @浜松市秋野不矩美術館
会期:11/5(日)まで
<概要>
・本館では2015年に加山又造展が好評開催。その精神を引き継ぐ6名の作家たち―中野嘉之、米谷清和、松谷千夏子、菅原健彦、市川裕司、吉澤舞子と加山が競演する展覧会です。
加山は、1927年に京都に生まれ東京美術学校(現東京藝術大学)に学び、1950年第2回創造美術春季展に初入選、その後創造美術が新制作協会、創画会へと変遷するとともに、発表を続け常に革新的な作品を生み出したほか、多摩美術大学・東京藝術大学で後進の育成にも力を注ぎ、1997年文化功労者顕彰、2003年文化勲章を受章しました。
第二次世界大戦での敗戦を契機として、改めて「日本画とは何か」が問い直されることになります。戦後発表を開始した加山はそれに直面せざるを得ない世代でした。多摩美術大学で直接に指導を受けた中野、米谷や、次世代の松谷、菅原は師の抱える問いを引き受けながら新しい表現を開拓しました。吉沢と市川はその師を介して加山の直面した日本画の課題を展開させ、それぞれ独自の世界を切り拓いています。出品された作品を通して、戦後日本画の抱えた課題と、それに作家たちがいかに対応したのか紹介しています。
<関連>
・東京藝術大学美術館
戦国の乱世が終り、泰平の世が到来した江戸時代には、現世享楽の気風を反映し、京都や江戸といった都市を舞台として、芝居や遊里、祭礼などの活況を描き出した風俗画が数多く描かれました。江戸時代の風俗画は、平和を謳歌し、ときには厭世観を漂わせながらも、現実を生きる人々に視線を注いだ絵画であり、今なお普遍的な魅力にあふれています。
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